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地域で行動する人の存在に、光を当てる。クラウドファンディングパートナーになった理由

地域と、クラウドファンディング。

READYFORでは、地域や特定カテゴリーに根ざし、挑戦者・やりたいことがある人を応援する「READYFOR クラウドファンディングパートナー制度」を2020年にスタート。

新たな事業・取り組みをはじめるとき、「地域の人に広報やSNS相談してみたい」「クラウドファンディングに興味があるけど自分に合っているか聞いてみたい」といった悩みの相談役となり、必要に応じてREADYFORと地域の架け橋になっているのが全国各地にいる「READYFOR クラウドファンディングパートナー」です。

合同会社MediArtの植田淳平(うえだじゅんぺい)さんは、滋賀県長浜市を拠点に、やりたいことがある人の1歩目を応援しています。

植田さんは2018年から本格的にクラウドファンディングのサポート事業を始め、今では年間30件前後のプロジェクトに伴走しています。植田さんが活動するエリアでは少しずつクラウドファンディングの名前が浸透し、立ち上がるプロジェクト数も年々増加しているようです。

これまでにもクラウドファンディングのプロジェクトに伴走してきた植田さんが、新たにREADYFORのクラウドファンディングパートナーに登録した背景には、どんな思いがあるのでしょうか。

「地域で挑戦しようとしている人にとって、クラウドファンディングを身近な存在にしたい」

長浜市に移住して6年目、地域に根ざしたプロジェクトの立ち上げ支援を続ける植田さんが、クラウドファンディングの先に目指す未来について聞きました。

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一件のクラウドファンディングが、街にもたらした影響

── 植田さんがクラウドファンディングに関わるようになったきっかけを教えてください。

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僕が滋賀県長浜市に引っ越してきた直後に、ご近所さんからクラウドファンディングについて相談を受けたことがきっかけでした。

地域の女性グループが、古民家を改修してブックカフェを立ち上げるお金をクラウドファンディングで集めようとして、インターネットに詳しい人を探していたそうです。地域おこし協力隊として移住してきた僕を見つけて、声をかけてくれました。

── なぜお手伝いしようと思ったのでしょうか。

プロジェクトのリーダーの方が、インターネットの活用にハードルを感じていて。それならページの作成をサポートしたりSNSで発信したり、僕がお手伝いできることがありそうだな、と思いました。なによりも、「この熱量ならうまくいきそうだ」という予感がしたことが大きいですね。

── プロジェクトを終えてみて、何か思ったことはありましたか?

地域の雰囲気が少し変化したように感じました。当時は補助金によって始まる活動があっても、補助金の終了とともに続けられなくなるケースが多くあったようです。あとは女性が前面に出る活動がそこまで多くなかったですし、クラウドファンディングの知名度も低かったと思います。

そのなかで、地域のパワフルな女性たちがクラウドファンディングを立ち上げて、約90万円を集めてカフェを完成させた。そのカフェが、立ち上がった後も持続的に運営されている。しかも地域のみなさんにとっては、顔も名前も分かる知り合いが挑戦しているんです。

こういう様子を間近で見たことで、「この街で新しいことができるんじゃないか」という機運が生まれるきっかけになったように思います。

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挑戦のハードルを下げて、地域で1歩目を踏み出せるように

── その後、植田さんはクラウドファンディングにどのように関わっていったのでしょうか?

滋賀で1回クラウドファンディングをやってみよう、と思い、僕が拠点としている街の本づくりプロジェクトを実行者として立ち上げました。移住者として、「ひと」にフォーカスした書籍を地域のクリエイターと完成させられたことは、印象深いですね。

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植田さんが手がけた『きのもと文庫』。クラウドファンディングで制作費の一部を集めた

── クラウドファンディングの活用サポートを、事業の一部にしたきっかけはありますか?

地域に特化したクラウドファンディングのプラットフォームのエリアオーナーになったことです。地域で何をビジネスにしていくかを考えていたタイミングで、エリアオーナーの募集が出ているのを見つけて。事業として本腰を入れてみようと思い、2018年から活動しています。

協力隊の活動を通じて地域での人間関係が増えていったので、「クラウドファンディングの活用を支援します」と告知したら、すぐに知り合いの方々からご相談いただけるようになりました。

── 事業のひとつとして、なぜクラウドファンディングを選んだのでしょうか。

地域で何かやりたい人にとって、クラウドファンディングを身近なツールにしたいからです。熱量がある人はたくさんいるけれど、オンラインツールとの距離がすごく遠い。それなら、挑戦のハードルを下げるお手伝いをしたいと思いました。

そしてブックカフェのようなプロジェクトがどんどん立ち上がることで、思いを持った人の存在を可視化したいと考えています。クラウドファンディングに挑戦すると、地域の新聞にも取り上げられやすいんです。「◯◯町の〜〜さんがやっている」と知ると、誰かの挑戦が自分ごとになりますよね。

そこから「この街なら新しいことに挑戦できそう」「自分でも何かできるかもしれない」と思える雰囲気が、地域に広がっていくんじゃないかな。そうなればいいな、と思っています。

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植田さんが活動する木之本町に移住者が増えている背景には、植田さんの言う「挑戦しやすい雰囲気」があるのかもしれない

クラウドファンディングを通じて積み重ねた人間関係

── 実行者さんからクラウドファンディングについて相談があったとき、どう動き始めますか?

「クラウドファンディングをしたい」と相談されるよりも、もっと抽象的な困りごと、多くは広報か資金調達について相談されるケースが多いので、クラウドファンディングが最適な解決手段なのかを一緒に考えるところから始めます。

── ということは、クラウドファンディング以外の方法を提案する場合もあるんですね。

僕もプロジェクトを立ち上げた経験があるので分かるんですけど、クラウドファンディングって実行者のコミット次第で結果が変わるので、すごくパワーを使うんですよ。すべての困りごと、すべての人に対して万能なわけではありません。

なので、プロジェクトを立ち上げる前の工程を大切にしてきました。数年後に目指すことをヒアリングしたり、企画書を作成してもらったりして、その方の困りごとに対してクラウドファンディングが適切なのかをじっくり考えています。

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植田さんが活動するエリアを舞台にした小説『星と祭』を復刊するプロジェクトで資金調達した際は、あえてクラウドファンディングを使わずに寄付を集めた。公式サイトより引用

── プロジェクトを実施する場合、植田さんは具体的にどんなことをされているのでしょう?

スケジュールを引く、リターンを設計する。あとは、まだまだオンラインツールを使うことにハードルを感じる方もいるので、応援したいという方から現金を預かって代理決済をしたり、応援コメントをプリントアウトして実行者さんにお渡ししたり。実行者さんに合わせた対応をしているので、プロジェクトによってさまざまですね。

── クラウドファンディングの活用サポートだけで事業として成り立たせるのは難しいのではないかと思うのですが、これからパートナーを検討されている方に向けて、どうしてそこまでコミットできるのか教えていただけますか?

クラウドファンディングが終わった後も、関係は続いていくので、別の案件をいただくことが多いんですよ。プロジェクトを立ち上げる際に目指したいことを聞かせてもらうので、そこからWebやパンフレットの制作、オンラインショップの開設など、事業者さんにとって必要なタイミングでご一緒させていただいています。

僕は広告のようにイニシャルコストが高いビジネスをするよりも、地域の事業者さんと長く健康的にお付き合いできたほうが嬉しいです。ですから自然に、最初は僕が利益にコミットして事業者さんの持ち出しを少なくした上で、年単位で長く伴走するスタイルになっていきました。僕にとってクラウドファンディングは仕事の窓口であり、最初の関わりです。

── パートナーさんと実行者さんが同じ地域で暮らしている良さなのかもしれませんね。

そうですね。僕にとって仕事は生活の延長線上なので、クラウドファンディングのときだけでなくその後も商品を購入したり、実行者さんと雑談のなかで提案できる材料を見つけたりして、関係が続いていきます。この地域にいるから、人間関係がストックされていく手応えはありますね。

だからクラウドファンディングのサポートを通じて得たものとして、長く続けられる人間関係がいちばん大きいです。今でも、新しいクラウドファンディングの案件は、ほとんどこれまで築いてきた関係からお声がけいただいています。

READYFORで挑戦する人と応援したい人を、長くつないでいく

── 植田さんのお話を聞いていると、クラウドファンディングは目的ではなく手段なのだ、とあらためて気づかされます。

僕は実行者さんにとって最適な方法を提案したいと考えていて、クラウドファンディングは、あくまで資金調達のひとつの手段なんですよね。クラウドファンディングの一点を支援するのではなく、組織全体を見て資金調達の手段を最適化していく必要があるんだなと知って、最近ファンドレイジング(資金調達)の勉強を始めました。

READYFORのパートナーに登録しようと思ったのも、この考えを持ったことがきっかけなんです。キュレーターにはファドレイジングの資格を取得している方が多いので、僕の知識が足りないところをぜひ学ばせてもらえたら嬉しいですね。

── 組織全体にも関わることで、クラウドファンディングが資金調達の手段としてますます地域になじんでいきそうですね。

そうだといいですね。地域の事業者さんがオンラインツールを使うと、周りの人がシェアで応援しやすくなるので、その1歩はすごく価値のあることだと思っています。その選択肢をつくれたら嬉しいです。

特にコロナ禍でプロジェクトの実行者も支援者も増えて、地域においてクラウドファンディングが一気に身近になりました。今後は、実行者さんと応援してくれる人たちがつながり続けられる方法を、提案していきたいです。そういう積み重ねが、挑戦しやすい地域の雰囲気づくりにつながっていけばいいなと思います。

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植田さんの活動拠点・長浜市木之本町にて
植田淳平
合同会社MediArt代表社員。岡山県真庭市出身。東京でのIT会社勤務を経て、2015年に滋賀県長浜市の第1期地域おこし協力隊として移住。協力隊任期中からクラウドファンディングの活用をサポートするようになり、2018年に起業。地域商社として地域の魅力に光を当て、販路拡大を支援している。 准認定ファンドレイザー。 note / Twitter

READYFORの「クラウドファンディングパートナー制度」とは?

プロジェクトの立ち上げから達成まで実行者に伴走している「キュレーター」と「パートナー」がタッグを組み、挑戦する人をより長く、深く応援することを目的とした制度。パートナーには、専門領域のフォローや物理的に近い距離でのサポートを担ってもらう。2020年にスタート。

READYFORのパートナーに興味がある場合は、下記のフォームよりお申し込みください。
パートナー制度申し込みフォーム

text & photo by 菊池百合子 edit by 徳 瑠里香

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