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社会と共生し、地域の課題解決を推進する。新潟大学が見据える寄付の未来

2011年に日本でクラウドファンディングがスタートして11年。近年では、大学がクラウドファンディングを活用する事例が増えています。

新潟大学は、2021年にREADYFORと基本協定を締結し、わずか半年で5件のプロジェクトを実行。5400万円を超える資金を集めました。

今回は、新潟大学にてクラウドファンディングを推進する、サポーター連携推進室/学内キュレーターの佐藤さんと鈴木さんに、新潟大学が見据える寄付の未来をテーマに話をうかがいました。

学内キュレーターとは
READYFORのキュレーターと共に、学内のプロジェクトの発掘、案件の伴走を行う大学内担当者のこと

同窓生だけでなく、企業や地域から寄付を募る仕組みをつくる

──現在、新潟大学ではサポーター連携推進室がファンドレイジングの中核を担っていると聞いています。そもそも新潟大学における寄付集めの系譜、サポーター連携推進室の立ち上げの経緯についてうかがえますでしょうか。

佐藤さん(以下、敬称略): もともと、サポーター連携推進室ができる前から寄付は集めていましたが、ほとんどの職員が他部署と兼業で寄付集めを行っていました。基本的には同窓生や同窓会を中心に寄付を募っていたのですが、今振り返ると場当たり的な施策がほとんどで、なかなか行き詰まる状況でもありました。

そのような中、大学法人化が決まり、寄付集めへの機運が高まった背景も相まって、新潟大学基金を設立し、サポーター連携推進室というファンドレイジング専門部署を立ち上げました。

同窓生の寄付はもちろんのこと、もう少し幅を広げ、企業や地域のみなさまから寄付を募っていけるような組織をつくったんです。

(左から佐藤さん、鈴木さん)

社会と共生しながら、大学として地域課題に向き合う

──同窓生に加えて、近年では地域の方々や企業にも寄付のお願いをされているんですよね。実際のファンドレイジングの手段についても教えてください。

佐藤: はい、同窓生へのアプローチは、同窓会組織のみなさまにお願いして、ご希望の場合は、広報誌を送るようにしました。広報誌を送る際に併せて寄付の案内も同封したり、紙媒体を郵送する、という手段が主です。

企業に対しては、「新潟大学サポーター倶楽部」を設立いたしました。新潟大学を応援いただける企業と個人様の集まりです。このサポーター倶楽部は、新潟大学の発案ではないんです。昔から新潟大学をご支援いただいているとある企業さまより、「寄付ではなく、年会費という形でご支援をいただく新潟大学サポート組織をつくったらどうか」というご提案をいただいたことが設立の背景にあります。

もちろんサポーター倶楽部をつくったからといってすぐにご支援をいただけるわけではありません。少子高齢化、人口流出が進む新潟において、大学生の情報は企業にとっても重要な情報です。そういった点でお役に立てるよう、企業に向けて新潟大学に関する情報発信を行いながら、少しずつ信頼関係が構築されていきました。

当時は「寄付」よりも「会費」という言葉の方が企業の方々には耳馴染みがあったようで。そういったことも功を奏して、今ではたくさんの企業からご支援をいただいています。

企業とのつながりを通じて、「人口流出」などの地域課題に対して、新潟大学として向き合うことの必要性を改めて実感しました。

実は新潟大学は2024年に創立75周年を迎えます。周年事業として、「課外活動施設(体育系・文化系)の改修整備」や、「新潟大学将来ビジョン2030の実現に向けた取組み」に向けた寄付を募っていきます。

社会との共生を実現しながら、地域課題の解決に資する使い道にも寄付は利用させていただく予定ですので、同窓生、企業地域のみなさまと一丸となって、このキャンペーンを成功させたいと、強く思っています。

新潟大学におけるクラウドファンディングの位置付け

──これまでたくさんのファンドレイジング施策を行ってきた中で、クラウドファンディングはどのような手段になっていますか?

鈴木さん(以下、敬称略): 新潟大学には色々な先生がいて、多様な活動、研究が進んでいます。中には、先ほど佐藤が申したような、地域課題の解決に資するような研究活動もたくさんあります。

しかし、意外と新潟県内で、新潟大学の先生方の研究活動を知っている方って多くないんです。そういった中で、READYFORを通じてクラウドファンディングを行い、認知を広げながら、温かいご寄付をいただけることは、非常に有意義だと感じています。

佐藤: あとは、競争的資金の補完財源としては適切な手段だと感じています。NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)や科研費、AMED(日本医療研究開発機構)などの競争的資金は、もちろん大切な資金調達手段です。しかし、すべての研究や活動が競争的資金の土台に乗るかと言われると、そうではないケースも多いんですね。そのため、科研費のような競争的資金に申請するものとは違う学術的なところを支援してもらえる手段として、クラウドファンディングは最良だと思います。

先ほど、企業とのお付き合いを通じて、大学として地域課題の解決に注力しなければならないと感じたとお話ししましたが、地域課題の解決のための研究などは、なかなか競争的資金の土台に乗らないケースも見受けられます。

他方で、クラウドファンディングで支援を募ったら、同じ課題を抱えている地域の方々からのご支援や、同じ状況にある他の地方のみなさまからご支援がいただけるかもしれない。そういった意味では、非常に価値のある手段だと思います。

──「地域課題の解決」のため、「先生方の”やりたいこと”」に寄り添い続けるために、クラウドファンディングを活用いただけていること、とても嬉しく思います。いちキュレーターとしても、国立大学がクラウドファンディングを活用する意義を改めて感じました。お話しを聞かせていただき、ありがとうございました!

聞き手:
ファンドレイジング事業本部 FRコンサル部
大学/研究機関カテゴリ リードキュレーター 金久保智哉

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