「意思決定に価値はない」メルカリ小泉社長にCOO樋浦が聞く!組織論

圧倒的な急成長で成功を収め、新たな挑戦に向けて第一線を走り続けるメルカリ。創業当初からNo,2としてトップと同じ目線に立ち、同社を率いる小泉文明社長兼COOに、READYFOR代表取締役COO樋浦直樹がリアルな問いをぶつけます! 前編は、何を軸に意思決定をして、どう人材を采配し、いかに“強い組織”を作るかについてーー。

判断軸はすベて「3つのバリュー」

樋浦 READYFORも100人を超える組織になって、日々経営者として判断しないといけないことが増えました。意思決定のスピードを上げるためにも、ブレない判断軸が必要だと思っていて。小泉さんはどうやって高速な判断をしているのか、そのロジックを知りたいです。

小泉 基本的には、メルカリの3つのバリュー「Go Bold(大胆にやろう)」「All for One(全ては成功のために)」「Be Professional(プロフェッショナルであれ)」に紐づいています。

樋浦 3つの大きなバリューの下に、10個くらいのサブ的な判断軸があるのかなと思っていました。小泉さんがよく言われている「性善説」「フェア」などがキーワードとしてあるのかと。

小泉 「性善説」もバリューの「All for One」と「Be Professional」に紐づいているもので。一人一人の専門性が担保されていて、みんなが信じ合って前に進んでいくのが性善説のベースだと僕は思っています。

樋浦 あらゆることをバリューに結びつけて決断されている……。

小泉 徹底的にバリューに紐づけることで、経営者個人ではなく、会社という客観的な「人格」を形成するんです。そのために、まずは経営陣がバリューを体現する。

樋浦 でも、あらゆることの判断基準として、3つのバリューは“大きな概念”すぎませんか?

小泉 大きな概念だからいいんですよ。言葉はパワーがある一方でストレスも強いので、僕は考える余地のある概念で伝えたいと思っています。僕がどんどん狭い言葉に落とし込んでいくと、メンバーが答え合わせに走って、考えない単一的な組織になってしまう。

樋浦 考える組織であるために、判断軸は持ちすぎず、ルールも作りすぎない。

小泉 言葉を狭めて、ルールをたくさん作ると、スピードが出ない。余計なルールは高いパフォーマンスを出す人のモチベーションを下げる可能性もある。だから、経営者である僕とメンバーの共通の判断軸、ルールは3つのバリューに絞っていますね。

自分の頭の中、持っている情報はすべて出す

樋浦 大きな概念であるバリューのすり合わせは社内でどうされているんですか?

小泉 たとえば人事評価をする時、僕らはパフォーマンスとバリューの2軸で見ます。メンバーの仕事がちゃんとバリューに紐づいているか。メンバーとマネージャー、マネージャー間、2段階ですり合わせるので、バリューを考えざるを得ない。

新しい施策の提案を受けた時も、実行する際も、どのバリューに結びついているのかを問い、伝える。社内で「この施策はGo Boldだよね」という会話が日常的になされているので、バリューはみんなの思考のベースになっていると思います。

樋浦 言葉で直接伝えなくても、バリューに基づき「小泉さんはこう考えるだろう」という判断軸や思考法をマネージャーやメンバーと共有できているのは組織として強いですよね。そのために経営者として他に意識していることはありますか?

小泉 基本的に僕は自分の思考、持っている情報は躊躇なく外へ出します。

新しい施策を打ち出す時、設計段階で、アウトプットを意識する。たとえば、昨年末に「RSU(Restricted Stock Units)」というインセンティブプログラムを導入したんですが、その背景にある思いや覚悟は「mercan」にまとめてあります。mercanに書くことを前提に設計しました。

mercanは社内報を外向けにも公表しているメディアで、新しい人事施策や新事業、メンバーの取り組みについて、社内の理解を深めるために発信しています。

mercanの他にも、メディアのインタビューやイベント登壇を通して、自分の思考を外へ出す。HRについてまとめたプレゼン資料があって、外部で話すこともよくありますね。

経営は「拡散」と「収束」の繰り返し

樋浦 細かい判断を、経営者として自分が担うのか、権限移譲するのか迷うことがあります。直近で悩んだのが、インフルエンザが流行してリモート推奨すべきだという意見が挙がった時。週1回はリモートを認めているんですが、限定しているのは同じ場所で働いた方が結束力が高まると思っているから。でも今回、成果を出すことを条件にマネージャーに判断を任してもいいのかもしれない、とも思ったんです。

小泉 バリューに基づいて、会社の段階に応じて判断をする。メルカリなら、初期であればリモートはしない。なぜなら、「All for One」でみんなで一緒に働いた方が成果が出るから。今の段階であれば、リモートはOK。なぜなら「Be Professional」で個々人がパフォーマンスを出せる働き方を尊重するから、マネージャーに判断を任せます、と。

樋浦 ちなみに、リモートをしないと決めた初期段階で、会社が求める優秀な人材がリモートであれば参画すると言った場合、例外は認めますか?

小泉 認めませんね。他のメンバーに説明がつかないので、決めたことへの筋は通す。どうしてもその人に入社してほしかったら、本気で説得します。「僕らは勝ちたいから、成功して世の中を変えたいから、あなたに来てほしい」と。

樋浦 なるほど。では、マネージャーに権限移譲するタイミングはどう見極めていますか?

小泉 会社のステージに応じて、判断を間違った場合に、取り返しのつくものとつかないものがありますよね。取り返しのつくもの、謝まれば収まるものはマネージャーに権限を渡して、必要があれば自分に戻します。

経営は「拡散」と「収束」の繰り返しです。トップダウンで、経営者が一つの軸を決めて会社全体でそこへ向かっていく。一定の段階までまとまったら、マネージャーに判断を任せて拡散する。マネージャーに揺らぎが出てきたら、また経営者が収束する。

樋浦 それはどれくらいのスパンで繰り返すんですか?

小泉 半年〜1年単位かな。メンバーを信じて、権限を渡していくためにも、判断軸である3つのバリューをしっかり浸透させる必要があるんですよ。

人事制度はWEBサービスのようにつくれ!

小泉 そもそも僕は、意思決定には価値がないと思っています。意思決定は途中で変えられるから、早めに決断して、とにかく進んで、間違えたら直せばいい。3つの選択肢の中から、1つを選んで間違ったら、普通は失敗したと思うかもしれない。でも僕は、成功率が上がった、成功に近づいたと思います。

樋浦 判断はスピード勝負。自分は考え過ぎなのかもしれません。

小泉 スタートアップにおいて、“早い”は正義。経営者は意思決定を早くして、現場を動かす。意思決定よりも、エグゼキューションが大事。

樋浦 エグゼキューションとは、やりきる、実行するということですか?

小泉 そう。実現に向けて走ること。決断できずに動けない時間はもったいない。

樋浦 事業はやってみないとわからない側面がありますが、組織においてはある程度ルールも必要だと思っているんですがどうでしょうか。

小泉 僕は「人事制度はWEBサービスのようにつくれ」と言っています。人事は全社員に影響を及ぼすので、躊躇してなかなか決断できないという人が多い。日本の人事は満点主義だけど、失敗できないというプライドはいらない。人事こそスピード勝負で前に進める価値があると思いますね。

樋浦 WEBサービスのように!つまり、どんどんやってみて改善していく。その際は、成果を測る指標もセットでやりますよね?

小泉 もちろん。過去に、朝果物を用意したら、社員が早く出社するかなと思って人事制度として試したことがあったんですが、事後的に出社時間をデータで見たら変化が無かった(笑)。出社後に果物を食べてみんなは喜んでいたけど、1分も改善されなかったので、2週間でやめました。判断して実行しても成果がでなければやめられるので、人事施策もとにかく試して、ガンガン進めたほうがいい。そして、指標を持って、ちゃんと振り返りをする。

個人の働くモチベーションを「会社」に紐づける

樋浦 人材配置や組織体制について、どれくらい先まで見据えていますか?

小泉 長くて半年くらいかな。自分たちの事業をどれだけ確度高く見れるかだと思うけど、このご時世、1年先は見えない。「変わることが前提にある組織は強い」と思っているので、見えなくても恐れないことが重要です。

事業や環境が変わる中で、いかに働くメンバーのモチベーションを保ち続けるかが大事。PRをやっていた人がいきなりプロデューサーになることもあるわけなので。

だからこそ、個人のモチベーションが事業ではなく、会社に紐づく組織を作りたいと思っています。担当する事業や職種は変わったとしても、会社のミッションとバリューに共感し貢献することがモチベーションになれば、簡単には辞めていかない。

樋浦 READYFORもビジョンとミッションに共感し、会社を成長させたいと思ってくれているメンバーが多いと思います。一方で、自分が思い描いていたキャリアや職種にズレが出てくることに不安を抱くメンバーも出てくると思うんです。

小泉 もちろん個人のキャリアは大事だけれど、僕らは会社として勝たないといけない。人事権は経営者が持っている唯一の権力であり、ベストな采配をして、いち早くゴールに向かうための重要な鍵。

僕は社員に謝ったことがありますよ。「急にキャリアを変えて申し訳ないけど、会社が成功するために今はこのポジションを担ってほしい」と。

樋浦 すべては成功のために。

小泉 その時点で本人に違和感があったとしても、3ヶ月後、半年後、会社が次のステージに上る段階で、もっと大きな舞台を用意できる。メンバーにやりがいのある面白い仕事を与え続けるために重要なのは、会社が成長し成功すること。その上で、個人のキャリアプランとすり合わせていきます。

樋浦 小泉さんが、キャリアプランが頭に浮かぶメンバーはどれくらいいるんですか?

小泉 所管しているコーポレイトの約200人は頭に浮かびますね。僕らの人事評価のフローとして、まずプレイヤーをマネージャーが評価し、その後マネージャー間で「キャリブレーション」という会議を開き、評価の妥当性を確認します。その際、マネージャーの評価や本人の意欲等が書かれた「キャリアノート」を見るんですよ。

半年に1回ペースで、キャリアノートを見て、1週間で一人5~10分程の時間をとってキャリブレーションを開いて給与変更を行っているので、200人の給与と仕事内容、キャリアプランはだいたい頭に入っていますね。

樋浦 すごすぎる…!約50人のメンバーの給与を確定するキャリブレーションを行うだけでも、かなりの時間を要しました。小泉さんが具体的にどういう時間の使い方をしているのか知りたいです。

後編につづく。

text by 徳 瑠里香

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