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変化しつづける動物園・水族館のリアル。クラウドファンディング活用オンラインシンポジウム【前編】

1月19日(金)、動物園・水族館のこれからを考えるをテーマに、動物園・水族館にお勤めの方を対象としたオンラインシンポジウムが開催されました。

昨今、物価高や光熱水費の高騰などもあり、なかなか入園料だけでは十分な運営費が賄えない中で、地域社会への貢献や地域社会における動物園・水族館のあり方が問われてきています。
動物園・水族館が、「これから」につなげる一歩を踏み出すために必要なこととは?
変化しつづける動物園・水族館のリアルをご紹介します。

前編のセッション1では、盛岡市動物公園の荒井氏と和歌山ドリデイ2023実行委員会の中尾委員長を迎え、クラウドファンディング活用のきっかけや準備、そして地域社会への貢献についてお伺いしました。

※本記事は当日のシンポジウムの内容を一部抜粋および要約して掲載しております。あらかじめご了承ください。

当日のイベントの内容はこちらからご視聴いただけます。
URL:https://www.youtube.com/watch?v=lG9tLDnZ1ik

荒井 雄大氏(盛岡市動物公園ZOOMO / 株式会社もりおかパークマネジメント企画営業広報)
2008年に(公)盛岡市動物公園公社に入社。飼育技師として動物飼育と教育普及等の業務に従事する。2019年4月に公社解散と指定管理者変更に伴い、(株)もりおかパークマネジメントに入社。現在は企画営業広報担当としてイベントや教育プログラムの企画運営、広報業務などに従事し、産学官連携や地域のコミュニティ形成、人材育成等にも取り組むと共に、SHAPE-Japan事務局として動物福祉や環境エンリッチメントの普及にも取り組む。

中尾 建子(和歌山ドリデイ2023 実行委員会委員長/株式会社アワーズ取締役/アドベンチャーワールド副園長(SDGs担当))
1988年アワーズへ入社。獣医師として、動物園動物の診療や飼育管理、極地ペンギンの人工孵化・育雛に携わる。1994年にジャイアントパンダ「永明(えいめい)」と「蓉浜(ようひん)」が来日した当初より、パンダの繁殖研究に長年関わり、これまで17頭のパンダの赤ちゃんの誕生を見守る。2019年よりSDGs担当としてアワーズSDGs宣言やサスティナビリティ方針の策定及び活動を推進している。2017年より初開催した、障がいのあるお子さまとそのご家族を営業終了後のパークへ招待する「ドリームナイト・アット・ザ・ズー」の実施に携わる。2021年からはパークを1日貸切って開催する「ドリームデイ・アット・ザ・ズー」に名称を改め、実行委員長として誰もがともに助け合って生きていける社会の実現を目指して活動をしている。

クラウドファンディングを活用した地域社会への貢献

2023年にクラウドファンディングを実施いただいた盛岡市動物公園ZOOMOさんと和歌山ドリデイ2023実行委員会さん。
どちらもこれまで複数回にわたってクラウドファンディングに挑戦していただいております。

荒井 雄大さん(以下、荒井)クラウドファンディングを始める前から、地域の方々にご協力いただきました。
限られた予算の中で新しい取り組みを始めるには、資金調達は大きな課題でした。
クラウドファンディングならば、プロジェクトを知ってもらうことで、資金調達だけでなく、社会課題を自分事化するきっかけにもなります。地域課題や教育との親和性が高いと考え、クラウドファンディングを始めました。
社会課題解決を目的とした『シリアスゲーム』の開発を行った際、ゲームの内容を実態と即したものにするため、ツキノワグマの普及啓発や防除に取り組む県や市などの自治体の方々をはじめ、ツキノワグマによる農作物被害にあわれた農家さん、ツキノワグマの研究をされている大学の先生等、多くの地域の方に参画していただきました。
他にもプロモーションでは地ビールメーカー様に協力いただいたり、カードゲームでワークショップを開催している団体様にもお声がけさせていただいたことで、クラウドファンディングのスタート前から多くの方から応援していただけました。
また、クラウドファンディング自体が名刺代わりになったことで、地域だけでなくメディアへの浸透にも繋がり、完成後は教育機関や自治体から多数のご連絡をいただいています。園内だけに留めず、地域を巻き込んで取り組んだことで幅広いステークホルダーへアプローチできたのだと思います。

中尾 建子さん(以下、中尾):クラウドファンディングのリターンに地域の企業や団体と連携したリターンを用意しました。
地域の高校生が商品開発した梅を使ったあられをリターン品にしようと思い、学校に発注を依頼したのですが、発注数分の手書きのメッセージカードを添付してくれたんです。
クラウドファンディングを通じて、地域の方々も一緒に取り組んでくれているのだと感じました。

支援者とのコミュニケーションでの心がけ

荒井:新しい支援者を発掘するためにクラウドファンディングを活用するケースが多いと思いますが、これまで応援してきてくれた支援者さんとの関係性を深めるためにもクラウドファンディングは有効であると考えています。
経過報告や園の様子など、顔の見える丁寧なコミュニケーションを心がけています。

中尾:イベントの趣旨を含めて多くの方々に知ってもらうために、様々な媒体やツールをフル活用しました。
イベント公式のSNSアカウントを立ち上げたり、以前アドベンチャーワールドのクラウドファンディングにご支援いただいた方に連絡したりしました。告知をする際は資金的な援助だけを求めるのでなく、寄付者の皆さんもこのイベントに参加していると思っていただけるように心がけました。

クラウドファンディングを行って感じた、資金集め以外のメリット

荒井クラウドファンディングを多くのメディアに取り上げていただいたことで、地域の課題を全国の方々に知ってもらえました。『自身で考えて、行動変容に繋げる』という動物園・水族館の大きな役割のひとつを果たすためには、クラウドファンディングは有効な方法だと改めて実感しました。

中尾:今まで気に留めてなかった社会課題を、自分事化して考えるきっかけづくりになったのではないかと思います。
また共感してくださった方々から、多くの温かいメッセージをいただきました。それがさらに支援を伸ばすことに繋がり、日本にも寄付文化が醸造されてきたと感じられ感動しました。

荒井:まだまだクラウドファンディングに慎重な自治体運営の動物園・水族館は多いかと思いますが、プロジェクトの実施までにスピード感が必要な課題に関しては、民間主導で実施をするクラウドファンディングを活用するのもひとつの手段だと思います。

クラウドファンディング前後の取り込み戦略について

荒井:例えば、クラウドファンディングの時だけ連絡するということには、思うところがありますよね。その時だけコミュニケーションをとるのではなく、継続的なコミュニケーションをすることが非常に大切です。
クラウドファンディングを始める前の、立ち上げの段階からそこに至るまでの経緯を継続的に発信し、その延長線上にクラウドファンディングがある。それがわかるストーリー作りが重要です。

後編では「環境エンリッチメント」という視点から生き物たちの幸せのために何を行っていけるのか、についてご紹介します。

動物園・水族館でクラウドファンディングにご興味がある方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。
https://cf.readyfor.jp/