変化しつづける動物園・水族館のリアル。クラウドファンディング活用オンラインシンポジウム【後編】
1月19日(金)、動物園・水族館のこれからを考えるをテーマに、動物園・水族館にお勤めの方を対象としたオンラインシンポジウムが開催されました。
昨今、物価高や光熱水費の高騰などもあり、なかなか入園料だけでは十分な運営費が賄えない中で、地域社会への貢献や地域社会における動物園・水族館のあり方が問われてきています。
動物園・水族館が、「これから」につなげる一歩を踏み出すために必要なこととは?
変化しつづける動物園・水族館のリアルをご紹介します。
前編のセッション1では、動物園のクラウドファンディング活用のきっかけや準備、そして地域社会への貢献についてお伺いしました。
後編のセッション2では、エンリッチメント・プロ代表の落合氏に、種の保存や飼育環境の改善など「環境エンリッチメント」という視点から、生き物たちの幸せのために何を行っていけるのかについてお話いただきました。
※本記事は当日のシンポジウムの内容を一部抜粋および要約して掲載しております。あらかじめご了承ください。
当日のイベントの内容はこちらからご視聴いただけます。
URL:https://youtu.be/lG9tLDnZ1ik?t=4317
環境エンリッチメントとは
動物たちの心の健康を守るために重要な環境エンリッチメントですが、重要なポイントについてエンリッチメント・プロ代表の落合氏にお話しいただきました。
落合 知美さん(以下、落合):環境エンリッチメントには、動物本来の生活に配慮することが重要となります。
例えばトラの場合、暑い日は体を冷やすために水に入るので、体全体が浸かるだけの水場を用意する必要があります。 オオカミやゾウなど群れで暮らす動物は、単独飼育を避け、複数で飼育します。他にも獲物を捕まえる動物なら狩りの行動をできるようにし、木の上で暮らす動物ならば登れるタワーを設置します。それぞれの習性に合わせた環境を用意することこそが、「環境エンリッチメント」なのです。
手始めにできるエンリッチメント
落合:動物園の環境エンリッチメント活動を表彰するため、2002年に「エンリッチメント大賞」という表彰制度を立ち上げました。良いところを表彰するので何も問題はないだろうと思ったのですが、当初は飼育員が個人で取り組む場合も多く、受賞により園館から指導を受けるなど、出る杭を打たれてしまうケースが度々ありました。
その中で、園全体での取り組みから動物園賞を受賞したのが北海道の旭山動物園でした。
旭山動物園はエンリッチメント大賞をPR活動に活用してくださったんです。その後、旭山動物園は一大ブームとなりましたね。その後だんだんと、環境エンリッチメントが個人の取り組みからチームの取り組みへと変化していきました。
ですが、エンリッチメント自体はハードルの高いものではありません。
枝を用意してあげるとか、高いところにデッキブラシを設置してあげるとか、まずは小さいことから始めてみることが重要です。
動物園の役割は変化している
落合:動物園は「野生動物を見る場所」から、「環境教育や保全活動といった自然への窓口」へと役割が変化しています。
野生と同様の環境を再現するために、飼育環境はどんどん大規模で複雑になってきています。つまり、動物を飼育するためには、環境エンリッチメントは外せないということです。
かつては動物の見世物小屋であった動物園ですが、これからは動物たちの正しいメッセージを伝える場へと変化する必要があります。
動物福祉的なしあわせのために
落合:動物を来園者に見せて、病気になったら獣医に見せるだけの動物園運営の時代は終わりました。
これからは多くのステークホルダーと共に運営していくべきです。研究者や自然保護団体と協力して動物の生態を調べたり、教育者や市民団体・ボランティアと共に活動の幅を広げたり、他にもコンサルタントやマスコミ、クラウドファンディングや出資者など。
生き物が幸せに暮らせるようにするには、本当にたくさんの人々が関わらなくてはいけない時代になってきたのだと思います。
時代のニーズ・変化にあわせて動物園・水族館は進化し続けていきます。
動物園・水族館でクラウドファンディングにご興味がある方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。
https://cf.readyfor.jp/