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「アントラーズの未来をみんなで」3度目のクラウドファンディング挑戦にかける想い

現在、「アントラーズの未来をみんなで 2022」を掲げ、クラウドファンディングを実施している鹿島アントラーズ。

アントラーズのクラウドファンディングへの挑戦は今年で3回目。

継続的なクラウドファンディングの背景には、どんな想いがあるのか? 今回の目玉リターン「アントラーズファミリー大運動会」が企画された理由とは――。 

現在実施中のプロジェクトを振り返りながら、元日本代表で、現在は鹿島アントラーズのC.R.O(クラブ・リレーションズ・オフィサー)を務める中田浩二さんと鹿島アントラーズFC 経営戦略チームの武知健人さん、そしてREADYFORキュレーターの具足圭と宇野大至が語り合いました。

高いレベルで練習に打ち込める環境をつくりたい

具足(READYFORキュレーター): 今年も「アントラーズの未来をみんなで」のクラウドファンディングが始まりました。今回のプロジェクトの目的は「トップチームの環境改善」ですよね。

ⒸKASHIMA ANTLERS

中田浩二さん(以下敬称略): はい。1993年のJリーグ開幕 当時、アントラーズのクラブハウスや練習施設は最新の設備を備えて最高の環境を誇っていましたが、30年の時を経て、どうしても経年劣化が目立ちます。

たとえばトップチームの練習用グラウンドは水はけが悪く、大雨が降ると、ピッチに大きな水たまりがいくつもできてしまう。トレーニング機器も古くなり、選手の安全や練習のクオリティを上げていくためには入れ替えが必要になっています。

(現在使用しているトレーニング機器)ⒸKASHIMA ANTLERS

練習環境を充実させることは、クラブが自己資金で行うべきものであると重々承知しています。しかしコロナ禍で経営が厳しい中、なかなか施設整備にまで手がまわっていないのが現状です。

武知健人さん(以下敬称略): 設備投資計画を立てながら、定期的なメンテナンスや改修をしていますが、その途中で緊急性の高い修繕作業が飛び込んでくることもあり、すべてを完了させるまでに時間がかかっています。とくに億単位の費用がかかる大規模な改修は、必要性を感じながらも、後回しになっている箇所がいくつもあります。

具足: 中田さんの選手時代の経験からも、今回のクラウドファンディングで実現したい練習環境の改善が、チームに与える影響は大きいと思われますか。

中田: そうですね。環境が良くなれば必ず勝てるという単純な話ではないですし、まずは目の前の勝利を積み重ねていくことが何より大切であることに変わりはありません。

ただ、「選手にまつわる環境が、クラブをひと回り大きくし、チーム強化につながる」というジーコの言葉にもあるように、やはり選手には良い環境でプレーしてほしい。高いレベルで練習に打ち込める環境をつくることが、より強いアントラーズをつくることにつながると考えています。

今年4月にはクラブハウスを増築してロッカーやバスルームなどが新しくなりましたが、たとえば旧 ロッカーを取り壊して人工芝をひけば、雨の日でもストレッチや軽いトレーニングができるスペースをつくれる。練習の選択肢を増やし、時間をより有効に使える環境に変えていきたいんです。

継続してクラウドファンディングに取り組む意味

宇野(READYFORキュレーター): アントラーズさんがクラウドファンディングを行うのは今年で3回目。2回目以降は「アントラーズの未来をみんなで」というテーマを掲げ、大きな目標金額の達成に向けて取り組まれています。継続的なクラウドファンディングはJリーグのみならず、スポーツ業界に先駆けた新しいチャレンジです。そもそも、資金調達の方法としてクラウドファンディングを選ばれているのは、なぜなんでしょう。

中田: 「アントラーズの未来をみんなで」という言葉に、そのまま僕たちの想いがつまっています。みなさんと一緒にアントラーズの10年後20年後をつくっていきたい。応援してくださる方々に、より直接的に関わってもらえる方法がクラウドファンディングでした。ただ「支援してください」と言うのではなく、みなさんに喜ばれるリターンを考えて、還元していける点も大きかったです。

武知: 資金使途を明確に示せるのもクラウドファンディングの良さだと思います。誰のために、どのように使われるお金なのか。使い道の透明性を高められるのはクラブにとって良いことですし、だからこそアントラーズの未来を一緒につくっていくという感覚をみなさんに持っていただきやすいのではないかと考えています。

宇野: 昨年は茨城県鹿嶋市と、今年は潮来(いたこ)市とタッグを組んで、“ふるさと納税型”でのクラウドファンディングを行われています。自治体との連携もアントラーズさんならではの先進的な取り組みですよね。

中田: 支援者の負担を少しでも軽くできるという意味で、税控除が可能な“ふるさと納税”を活用できるのは、とてもありがたいです。潮来市はアントラーズのホームタウンの一つ。ホームタウンデイズの開催や小学校訪問など、30年間一緒に、地域活性化に取り組んできました。これまで積み重ねてきた歴史があるからこそ、潮来市に、今回ご協力いただけたんだと思います。

ⒸKASHIMA ANTLERS

武知: 今回のクラウドファンディングにおいても、潮来市でイベントを開催するなど交流人口が増える仕掛けを検討しながら進めています。地域と支援者、そしてアントラーズのつながりが深まり、お互いにとってより良いプロジェクトになるように力を尽くしたいです。

31年の歴史で初!今年のリターンは「アントラーズファミリー大運動会」

ⒸKASHIMA ANTLERS

具足: 今回のクラウドファンディングの大きなリターン企画は、11月20日にカシマスタジアムで開催される「アントラーズファミリー大運動会」。アントラーズの歴史の中でも初の試みですね。

中田: お礼イベントとして何を企画するか、どのような内容なら喜んでもらえるか、みんなで考えて。やはりコロナ禍でこの2年はファンと交流する機会をなかなか持てませんでしたから。試合を見てもらうだけじゃなく、一緒に何かをしたいと。大人も子どもも、男性も女性も関係なく、みんなで楽しめるものを考えたときに思いついたのが「大運動会」でした。最近は運動会ができていない学校も多いと聞きますし、それならカシマスタジアムで、選手と一緒に楽しんでもらいたいと。

武知: 今回のリターンがこれまでと異なるのは、トップチームの選手が関わること。カタールでのワールドカップ開催の影響で、今季は11月5日に全日程を終えますから、11月以降に少し時間ができるんです。大規模な交流イベントの背景には、そういった今年だけの特別な事情もあります。

中田: ファンと一緒にできる体験は貴重ですし、選手自身も、前のめりで楽しみにしていますよ。

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アントラーズの輝く未来のために

宇野: 今日お話を伺ってあらためて感じたのは、アントラーズさんが先陣を切って、新しいクラウドファンディングの形を示されていること。実際に、アントラーズさんの取り組みを見聞きした他競技の団体から「こんなふうにファンとつながる方法があるんですね」とお声がけいただくこともあります。

僕は、アントラーズさんがスポーツ業界におけるクラウドファンディングの文化をつくっていると感じていて。アントラーズさん自身は、毎年継続して取り組むことで、何か見えてきたことはありますか。

中田: そうですね。初回は、コロナ禍での経営難を乗り越えるために「助けてください」という気持ちが正直強かったと思います。ただ、みなさんのあたたかい応援メッセージや、返礼イベントを楽しんでくださっている姿を見て、支援してくださる方との絆がより深まり、「アントラーズの未来をみんなで」というメッセージを打ち出せるようになりました。支援者の方々の声を聞いたり、運動会のようなイベントで直接、ファンと接点を持てる機会をつくれるのは、大きな意味があると捉えています。

また、クラウドファンディングを継続していく上で、READYFORのキュレーターの存在に助けられています。スポーツチームであるがゆえの制限や特殊性をふまえた上で新しいアイデアを提案してくれますし、昨年のデータを見て「今年はこうしましょう」と、どんどん良くしていくための伴走をしてもらっていると思います。

宇野: ありがとうございます。これからもアントラーズらしさを大事しながら新しい挑戦を続けていけるようサポートさせていただきたいです。最後に、支援者の皆様へのメッセージをお願いします。

中田: これまで本当にたくさんの方々に支援いただき、今回のクラウドファンディングでも多くの応援の声をいただいて、心から感謝しています。ありがとうございます。

アントラーズがアントラーズであり続けるために、選手もクラブも、やるべきことをしっかりとやっていきます。その上で、アントラーズの未来をより輝かせるための取り組みを、みなさんと一緒にやっていきたい。その結果、ファミリーの輪を広げていくことができたら嬉しいです。アントラーズの継続的な強さにつながる環境改善に、ぜひご支援をお願いします。また、「アントラーズファミリー大運動会」、ぜひご参加ください。一緒に楽しみましょう!

ⒸKASHIMA ANTLERS

中田浩二さん
元サッカー日本代表。帝京高校を卒業後、鹿島アントラーズへ加入。主にボランチ、センターバックとして活躍。在籍中に計11個の国内タイトル獲得に貢献し、日本代表としても2002年と2006年のワールドカップに出場。2014年シーズン限りで現役を引退し、翌年より鹿島アントラーズのC.R.O(クラブ・リレーションズ・オフィサー)に就任。スポンサー、パートナー、サポーター、行政機関などのステークホルダー(利害関係者)とクラブをつなぐ役割を担う。

武知健人さん
鹿島アントラーズFC 経営戦略チーム所属

text by 猪俣奈央子 edit by 徳瑠里香 photo by ⒸKASHIMA ANTLERS

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