「ITの知見と技術で、働き方をよりよく変えたい」コロナ禍で生まれた、“エンジニアリング×労務”の新しいポジション
「コーポレートITを手がけるエンジニアとして入社したつもりが、いつの間にかコーポレートITも労務も手がける新部署の責任者になっていました」
そう笑うのはREADYFORコーポレート部門の新セクション“ワークスタイルデザイン部”で部長を務める若林岳人さん。
ワークスタイルデザイン部とは、いったい何をする部署なのでしょうか。エンジニアだった若林さんが同部署での仕事にやりがいを感じる理由とは――?
若林さんのキャリアの軌跡をたどりながら、コロナ禍でさらに存在感を増すワークスタイルデザイン部の魅力や、READYFORならではのカルチャーについて、たっぷりお話を伺いました。
コーポレートITの立ち上げを担えるミッションに惹かれた
── 若林さんはいつREADYFORに入社したんですか?
2019年11月です。コーポレートITの責任者として入社しました。
── READYFORにジョインする以前から、エンジニアをされていたんですよね?
はい。新卒でNECに入社してシステムエンジニアとして官公庁や大手企業の社内システム導入を支援する仕事をしていました。
3年ほど勤めたあと、PwCコンサルティングにITコンサルタントとして転職。NECもPwCも、業務内容はクライアントワークでしたから、事業会社のIT部門でもっと“自分ごと”として働いてみたい気持ちが芽生えて、オンライン診療を手がけるメドレーに転職しました。
── READYFORに入社したきっかけは、何だったのでしょう。
採用媒体を通じてスカウトメールをもらったんです。いつもだったらスルーしていたのですが……。そのときは「READYFOR」という社名が目にとまって。
実は、NEC時代の同期が、以前READYFORで働いていたことがあって、“面白そうな会社だな”という印象を持っていたんです。せっかくなので、一度話を聞いてみようと思いました。
── この段階での志望度はそう高くなかったのですね。話を聞いてみて、いかがでした?
「これからコーポレートIT部門を立ち上げたい」という話を聞いて、すごく魅力的に感じました。IT部門の責任者として、いちから社内システムを整えていくことは、私にとって、いいチャレンジになるだろうと。
── 若林さんは大企業に勤めていた経験もありますが、IT部門の立ち上げがこれからのベンチャーに入社するのに不安はありませんでしたか。
そういう意味での不安や迷いはありませんでした。ITシステムって、一度導入すると、なかなか変えにくいんです。“まっさらな状態”のほうが、つくりやすい。100人規模(当時)のスタートアップで、いちからコーポレートITをつくりあげられるのは希少なので、私にとってはむしろそれが入社の後押しになりました。
── ほかにREADYFORに入社する決め手となった点はありましたか?
僕は転職先を考えるときに、その企業が社会に対してどのような価値貢献をしているのかを意識して見るようにしています。READYFORはクラウドファンディングによる資金調達を通じて、社会に価値を生み出している。
コーポレートITという職種柄、事業そのものを推進することはできません。でも、社内の体制を整え働きやすい環境をつくることが、めぐりめぐって会社を成長させ、企業の価値貢献を後押しするのだと、個人的には思っています。
ITのチカラで実現したい、“場所に依存しない働き方”
── 現在のお仕事内容について教えてください。
もともとコーポレートITの責任者を担う前提で入社をして、半年くらいは社内のIT活用促進やセキュリティ整備、ITによる業務効率化を中心に、想定通りの仕事をさせてもらっていました。半年くらいは(笑)。
── 半年くらいは、と強調されましたね……(笑)
そこからどんどん業務が広がって、現在は「ワークスタイルデザイン部」と名称を変え、私を含めた4名体制で、「コーポレートエンジニアリング」と「労務」をクロスさせたような仕事をしています。
── 「労務」ですか?
はい、「コーポレートエンジニアリング」と「労務」って、実は業務の親和性がとても高いんですよ。
たとえば新しいメンバーが入社したとき、労務担当は、雇用契約の締結や社会保険・労働保険の手続きを進めますが、パソコンの発注やアカウント作成など、ITと連携して行う作業も出てきます。
当然ながら、私自身、READYFORに入社するまで労務を手がけたことはありませんでしたが、過去の労務担当者との連携や社内システム導入の経験から、なんとなくの知識は持ち合わせていました。
会社として、これから規模を拡大していくうえで「労務」を強化していく必要があった。そこには「コーポレートエンジニアリング」の力が求められていて。そのふたつ掛けあわせた新しいポジションが生まれ、その責任者に私が就いたわけです。
── 若林さんがREADYFORで手がけられた仕事の実績を事前に拝見しましたが、「リモートワーク制度・手当の本格導入」「勤怠管理から給与支払いまでの業務プロセス再設計」など労務にかかわる取り組みが多かったのは、このためなんですね。
そうなんです。しかも入社後にコロナ禍になり、リモートワークをはじめ働き方が大きく変わりました。対面を前提としたオペレーションをすべて見直さざるを得なくなったんです。
ただ、私としては好都合で。もともと入社当初から「これから先、もうオフィスは必要ないですよね?」とCOOの樋浦に話していたほどでした。
── それは……コロナ禍になる前から、ですか?
はい。コロナに関係なく、いずれオフィスに出社しなくても働ける時代になると思っていて。
少し技術的な話になってしまいますが、ここ十数年でセキュリティの概念が様変わりしています。以前は、「社内ネットワークは安全である」という前提で、境界を防御するセキュリティ対策がとられていましたが、いまは“ゼロトラスト”といって、「すべて信頼しない」ことがセキュリティ対策の基本になっています。
企業内のネットワークかどうかは、もはや重要ではないんです。それよりもユーザー認証やアクセス認証を強化することが重要だといわれています。
つまり、それは「場所に依存しない働き方」が実現できるということ。そのためのセキュリティ設計や情報共有設計をREADYFORにも実装したいと考えていましたし、このコロナ禍でスピード感を持って取り組みました。
「セキュリティ」と「業務効率化」はトレードオフの関係…!?
── コーポレートエンジニアリングは、実は「労務」や「働き方」と、密接に関係しているんですね。
他社の管理部門をみても、ITと労務だけを一括りにしている会社はまだ少ないんです。前例がないので私も部署名を考えるときに迷ったんですが、“ITの力で働き方をデザインしていく”という意味をこめて「ワークスタイルデザイン部」と名づけました。
実際に仕事をしてみて、ITの視点から働き方を設計していくのは、とても重要だと実感しています。例えば、人事部門がいくら「リモートワークOKです」といっても、社内のネットワークに依存するセキュリティ設計になっていて、IT部門が「自宅PCは使用禁止」「PCの持ち出し禁止」と通達を出したら、実質リモートワークはできないですよね。
「IT×労務」のセクションがあるからこそ実現できることや、より働きやすく効率的にできることがたくさんあると考えています。
── 若林さんは、以前から「働き方」に興味があったのですか?
そうですね。以前、官公庁の大規模システムの調達にかかわる仕事をしていたとき、ITと働き方の関係について課題意識を持ったことがありました。
プロジェクトが始まる前に、その組織で個人情報流出の不祥事が起きて。その対策が行き過ぎて業務に支障をきたすほど厳格なルールが敷かれてしまったんです。セキュリティを意識するあまり、生産性が落ちたり、創造性の高い仕事ができなかったりするのはナンセンスだと強く感じました。
セキュリティと業務効率化はトレードオフの関係といわれますが、私自身は、その意見に懐疑的です。
もちろん業務効率を犠牲にしてでもセキュリティを強化しなければいけない場面もあります。しかし世の中のセキュリティソリューションの発展もあって、業務効率を維持しながらセキュリティを強化できる余地が残っていることが大半です。業務効率を犠牲にしてセキュリティを強化するという判断は、それらをやった上で検討すべきでしょう。それに加えて、業績向上や業務効率のために、負わなければならないセキュリティリスクもあると考えています。
そして同時に、この原体験があったから、ITを駆使して働き方をよりよくアップデートしていける、いまの仕事にやりがいを感じています。
── なるほど。社員側の視点でみると、業務効率や働き方を優先したIT活用やセキュリティ対策をしてもらえるのは、純粋にうれしいですよね。
内部統制も、決裁ワークフローも、システムを入れることで業務負担が減るのであれば、どんどんやったほうがいいですよね。「承認」一つとってもそうです。最も負担がない方法を考えれば、たとえばSlack上のコミュニケーションで完了できたら、とても美しいわけです。理想の状態にどうやったら近づけられるか。そんなことを、日々考えています。
新しい技術もポジティブに受け入れる、READYFORのカルチャー
── 中途入社だからこそわかる“READYFORならではのカルチャー”には、どんなものがありますか。
入社して強く思ったのは、READYFORは「ボトムアップ式」の組織だなということ。トップダウンでは、まったくないです。メンバーのチャレンジを認めて、応援してくれるからスモールスタートしやすい。
例えば、従業員規模が100人を超えて、組織図を管理するツールをいれたいなと個人的に考えていたときのこと。
いろいろなツールをトライアルで試して、COOの樋浦に「これがいいと思うんですよねー」とサラッと話をしたら、「うん、いいね! 来月から使ってみるよ」と。
── 即決ですね!(笑)
そうなんです。この決裁のためにミーティングをセッティングしたとか、アジェンダをつくったとか、まったくなくて……。
これはあくまで一例ですが、仕事のさまざまな場面でこうした“フットワークの軽さ”を感じます。この「まずやってみる」という文化を気に入っていますね。
「エンジニア領域とビジネス領域の垣根をなくそう」というカルチャーも特徴的です。READYFORでは 「組織の中にエンジニアリングが自然に溶け込んでいる状態」 を「乳化」と呼び、全社でこの乳化の状態を目指しています。
私も他部門のメンバーと話し合いをすることが多いのですが、みんなかなり前のめりで。コーポレートITの勉強会を開いたときも、参加者が多く、驚きました。
新しい制度や技術を導入する際も、ポジティブな反応をしてくれるんですよね。それぞれの専門性をリスペクトしながら、組織として最大限のパフォーマンスを発揮していくためにITを活用しようというスタンスのメンバーばかりなので、とても進めやすいです。
まさにいま、働き方をデザインできる、おもしろいタイミング
── あらためて、READYFORのワークスタイルデザイン部で働くおもしろさは、どんなところにありますか。
いま、コロナ禍で働き方のパラダイムシフトが起こっていますよね。つまり、勤怠管理にしても福利厚生にしても、これまでのやり方がベストではないということ。ゼロベースで企画・設計していける楽しさがあると感じています。
当社はリモートワークを推進していますから、ITで実現しなければならない領域がどんどん広がっています。まさに働き方をデザインできる、おもしろいタイミングです。
── どんな方と一緒に働きたいですか。
前例が踏襲できない状況ですから「労務」の知識や経験はあまり求めていません。それよりも「ITの知見」がある方のほうがスムーズに仕事に取り組めるかもしれませんね。
働き方に課題意識を持っていたり、制度やオペレーションをゼロから企画することが好きな方であれば、より楽しめるのではないかと思います。
── READYFORに入社したことで若林さん自身には、どんな変化がありましたか。
うーん、そうですね。僕はかなりエンジニア思考の人間で、最初に「労務も一緒にやってくれないか」と言われたとき、正直「嫌だな」と思ったんです(笑)。労務は圧倒的にIT化が遅れている分野という印象があって、感覚的に合わなそうだと感じてしまった。
ただ、実際にやってみて、すごく学びが大きいと思っています。
以前から「働き方」というテーマに興味を持っていたとお話しましたが、同時に、日本の労働市場の生産性をどう高めていくかにも強い関心を持っていて。ただ、ここに深く切り込んでいくためには労務領域の知識を深めていく必要があります。
エンジニアの立場で「システムを入れれば出来るでしょう?」というのは簡単ですが、出来ていないことにはちゃんと理由がある。労働基準法をはじめとする法律を勉強していく中で、「こういう事情が複雑に絡み合っているから簡単に変えられないんだ」ということもわかるようになってきました。これは私の中での大きな変化ですし、これからのキャリアにも生きてくると思っています。
── 最後に、これから挑戦したいことを教えてください。
まずは、READYFORをもっと働きやすい職場に、より理想的な環境に近づけられるように日々の仕事に邁進していきたいです。
そして働き方改革やリモートワークに合った労働環境を整えていく中で得た知見や仕組みを、将来的に外部に発信できたらおもしろいな、なんて考えています。
READYFORでクラウドファンディングを行っている企業や、NPO・NGOで、人事制度やセキュリティが整っていない組織があれば、ワークスタイルデザイン部として支援できるかもしれません。まだ夢物語の段階ですが、ゆくゆくは社外に向けたビジネスづくりにも挑戦できたらと考えています。
若林岳人
1989年生まれ。NECでのシステムエンジニア、PwCコンサルティングでのITコンサルタント経験、メドレーでのコーポレートIT担当を経て、2019年11月にREADYFORに参画。現在はワークスタイルデザイン部の責任者として、コーポレートITや労務関連のプロジェクトを推進中。
*ワークスタイルデザイン部ではメンバーを募集しています!詳細はこちらをご覧ください。
text by 猪俣奈央子 edit by 徳瑠里香