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「お金だけでなく、人とのつながりが財産になる」クラウドファンディングに巡るエール

旗を立てた誰かに、エールを送る。

クラウドファンディングには、循環する支援の輪があります。

アクセスエール株式会社の松尾光晴さんは、その循環を身をもって実感したひとりです。

はじめは支援する側としてREADYFORを知り、後に自らの旗を立て、重度障害者の意思疎通を図る商品開発のプロジェクトを実行した松尾さん。

支援者と実行者。双方の立場を経験した松尾さんは今、クラウドファンディングの価値は「お金を集めるだけではない」と言います。

エールを送り、そして誰かからエールを受けとること。クラウドファンディングに巡る支援の輪について、語ってくれました。

支援する中で感じた、人から人へ、エールがつながるクラウドファンディングの力

松尾さんがはじめてREADYFORと出会ったのは、2013年。クラウドファンディングは今ほど日本で広まっておらず、松尾さん自身も、確実に寄付を集められるイメージは薄かった、と振り返ります。

「はじめて支援したクラウドファンディングのプロジェクトは、ドキュメンタリー映画の上映資金を募るものでした。植物状態の主人公の身体的回復を描く映画で、意思疎通のために使っていた装置が、当時私がパナソニックで開発・販売を担当していたレッツ・チャットだったんです」

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松尾光晴さん(写真右)/アクセスエール株式会社 代表取締役
元ファンコム株式会社(パナソニックの社内ベンチャー)代表。2003年より、パナソニックにてマイコンを活用したシンプルな意思伝達装置「レッツ・チャット」の開発、販売事業に携わる。その後レッツ・チャットの販売終了に伴い、代替装置の開発を決意し2020年に独立。重度障害者の入力スイッチの適合技術の専門家でもある。

小さな点からつながったご縁で、松尾さんはプロジェクトを支援。さらには製品の取材を受ける際に積極的にクラウドファンディングの話をするなど、周囲に紹介していきました。

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(実行者で映画監督の岩崎靖子さんから連絡を受け、松尾さんがはじめて支援したプロジェクト)

「結果は目標金額を上回り、見事達成。正直、びっくりしました。ちゃんと支援が集まるんだ、と。そこからですね、動物愛護や医療関係を中心に気になるプロジェクトをチェックするようになったのは」

障害者支援事業に携わっていた松尾さんの周りには、クラウドファンディングを立ち上げる知人も多かったといいます。重い障害を持つ子どもたちがデイサービスで利用する車の購入支援プロジェクトや、日本初ナースサミット開催を支援するプロジェクトも、人とのつながりがきっかけで支援をしました。

「ナースサミットは、クラウドファンディングの終了2週間前で、達成率が30%ほどでした。友人のプロジェクトだったため、どれくらい金額が集まるかはわからないけど、周りで関心がありそうな人たちにプロジェクトを紹介してみたんですね。その甲斐もあったのか、無事に達成でき、私も嬉しくなりました」

かけ声に一人、また一人と賛同する人の輪が広がり、プロジェクトがゴールに向かう。支援した先で喜ぶ人の姿や、共感が広がっていく景色は、いつしか松尾さんのクラウドファンディングのイメージを変えていきました。

クラウドファンディングが起業を後押し。応援の声が勇気をくれた

そんな松尾さんに転機が訪れたのは2020年のはじめ。勤務するパナソニックで担当していた障害者の意思疎通を図る商品「レッツ・チャット」が販売を終了することにになったのです。

「レッツ・チャットはまだまだ必要とする人たちがいました。ならば、自分で代替機を開発したい。でも、早期退職金を合わせても開発資金が足りなかった。それでも独立に踏み切ろうと思えたのは、クラウドファンディングがあったからです。これまで支援を重ねてきてつながった人たちの顔が浮かびました」

代替機開発のため独立を決意した松尾さんは、資金調達に向けてクラウドファンディングを立ち上げることに。

プロジェクトページを作成する上で頭を悩ませたのが、目標金額の設定です。製品開発には、最低でも1,000万円が必要です。100万円の支援が集まっても、それだけでは開発は進みません。とはいえ、クラウドファンディングで個人が募るには大きな金額でした。キュレーターと検討を重ねた結果、最初のゴールを500万円に設定することに。

「第一目標が達成できたら、ネクストゴールで1,000万円を目指していこうと。本当にみなさん、支援していただけるのか、正直ヒヤヒヤでしたね」

代替機の開発・販売の実現はもちろん、たくさんの人に製品を必要とする方々の存在を知ってもらいたいという想いから、チラシ作成をし準備に奮闘しました。

「プロジェクト公開前に、難病団体の研修会でチラシの配布して説明する機会をもらったんです。もともとつながりのあった事務局長が、みんな喜んで応援してくれるだろうから、と励ましてくれて。ありがたかったですね」

プロジェクトの準備から達成まで伴走するキュレーターの存在も、心強かったそう。

「知っている人であっても、寄付を自分からお願いするのはちょっと躊躇します。でも、担当キュレーターの長島さんが背中を押してくれて。プロジェクトページの作成でも、こんな表現がいいですよ、と具体的なアドバイスをくれて、助けられました」

入念な準備の甲斐あって、公開からわずか4日で500万円のファーストゴールを達成。最終的に、ネクストゴールを超える1,200万円以上の支援が集まりました。

実際にクラウドファンディングをやってみて、どんな心境の変化があったのでしょうか。

「これまで支援してきたプロジェクトの実行者さんたちが、どれだけの勇気と想いを持って必死に取り組んできたか、その重みを実感しました。中途半端な気持ちでできるものじゃないと。プロジェクト期間中はずっと気になっていて、夜、目が覚めてスマホで進捗をチェックしてしまうこともしばしばでした」

一方で、支援者からの応援も、身に染みたと言います。

「発信をすれば必ず共感してくれる人が現れる。プロジェクトに支援してくれた方は878人。一人ひとりにものすごく勇気をもらいました。

お金での支援はできなくても、周囲の人に話してくれたり、SNSでシェアしてくれたりする方もいて。それも応援なんですよね。一人の応援が、次の一人の共感につながっていく。『がんばって』という応援の声がひとつ増える度に、喜びを感じました」

クラウドファンディングがくれた人とのつながりは、財産

その後、松尾さんは、コロナ禍によるスケジュールの遅れはありつつも、開発や特許申請を進め、2020年11月末、意思伝達装置「ファイン・チャット」を正式出荷しました。

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(2020年11月25日より発売された「ファイン・チャット」

「クラウドファンディングの価値はお金集めだけじゃない。支援金額だけではなく、応援してくれた人が財産になるんです。達成後に商品カタログを送らせてもらった支援者の方から、問い合わせをもらってご紹介してもらうこともありました。プロジェクトが終わっても、そこで生まれた人脈が次につながっていくんですよね」

実行者と支援者が想いを伝え合えること、そしてお金の流れがわかることも、クラウドファンディングの魅力だと松尾さんは言います。

「数万円、数十万円の寄付が個人からあるって、すごいことです。実行者の想いを伝えることができるクラウドファンディングの仕組みのおかげですよね。お金を払って、受け取って終わりではなく、その後も続いていく関係性の中で、支援者と実行者の間に信頼が生まれる。これからも、もっとクラウドファンディングは広まっていくと思います」

自身のプロジェクト終了後も、知人から紹介されたクラウドファンディングの支援やシェアをして、自らもエールを送り続けている松尾さん。

支援する人から実行する人へ。プロジェクトからまた次のプロジェクトへ。クラウドファンディングを巡るエールは、今日も明日へとつながっていきます。

text by サトウカエデ edit by 徳 瑠里香

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