26年ぶりに出場!クラウドファンディングが支えた「筑波大学箱根駅伝復活」物語
「26年ぶり、61回目」
悲願の切符を手に入れた瞬間、青空の下、チームは歓喜に湧いた。
2019年10月26日、第96回箱根駅伝予選会で43校中6位に食い込み、本戦出場復活を果たした筑波大学陸上競技部。活動資金や環境整備に厳しさを抱える国立大学が、学生競技最高峰である箱根駅伝に出場するハードルは、高い。
復活劇の背景には、4年間にわたるクラウドファンディングとの並走があった。2015年からチームを率い、プロジェクトの実行者として旗振りをした弘山監督は言う。
「資金を集めるのではなく、愛を集めていました」
筑波大学駅伝チームにとって、支援者はただのスポンサーではない。筑波大学の箱根駅伝復活劇を、伴走者となったクラウドファンディングのプロジェクトと共に振り返る。
「磨り減ったシューズで故障する姿を見たくない」箱根駅伝復活プロジェクト、始動
2011年からはじまった『筑波大学箱根駅伝復活プロジェクト』。途中からチーム強化のため、アサインされたのが筑波大学OBである弘山勉監督だ。
『5年以内に本戦出場、10年以内に優勝』
大学が掲げる目標達成は、予想よりはるかに厳しい道のりだった。
「潤沢な強化資金をバックに躍進する強豪私立大学に対し、国立大学では、あまりにも環境や体制に差があります。質の高い練習ができるレベルの環境整備も、疲れた学生の回復をケアするサポート体制も、なにもかもが足りていない」
(弘山監督就任当時の練習風景)
監督就任から半年間の強化期間を経て、挑んだ最初の箱根駅伝予選会は、本戦出場ラインである10位のタイムから24分54秒も遅れをとる惨敗。
「私自身が大学を卒業して、26年振りに箱根駅伝の予選会に挑んだら、大会がとんでもなくレベルアップしていたんですね」
箱根駅伝出場への学生の意識改革はもちろん、体制強化が急務の課題だと痛感したという。
「もう、擦り減ったシューズを履いて練習し、故障する選手の姿を見たくないんです」
弘山監督が選んだのは、クラウドファンディングでの資金調達だ。当時筑波大学では准教授である落合陽一氏が、大学向けのクラウドファンディング「READYFOR College」と手を組みプロジェクトを達成していた。
支援が集まれば、強化合宿の補助費用や学生の栄養管理をサポート費用を補うことができる。5年以内の本戦出場を目指す、本気のクラウドファンディングがスタートした。2016年6月28日のことだった。
クラウドファンディングで、「人を集め、想いを集め、愛を集める」
第1弾のプロジェクトの目標金額は200万円。弘山監督は当初から、目標金額と支援の用途を明確にし、プロジェクトを単発ではなく継続的に実施する方向性を示していた。
支援者と共に箱根を目指したかったから、金額目標を「1区」「2区」と駅伝に例えた。弘山監督にとって、支援者はただお金を出す存在ではなく、選手の大切な「伴走者」だ。
(第1弾プロジェクトでは「彼らと共に箱根を目指す"伴走者"となってほしい」と呼びかけた)
「クラウドファンディングは、資金を集めるだけでなく、人を集め、想いを集め、愛を集めているんですね」
支援で集めた資金だからこそ、結果を出す責任が生まれる。その想いは、「悲願を達成するまで、決して諦めない」という決意に変わっていく。
(1920年の第1回大会を制した筑波大学の前身である東京高等師範学校 / 写真提供:茗溪会)
筑波大学が陸上競技部の強化にこだわるのは理由がある。筑波大の前身校である東京高等師範学校は第1回箱根駅伝の優勝校。「マラソンの父」と呼ばれ、五輪のマラソンに3度出場した金栗四三氏は筑波大学のOBだ。
「筑波大は、文武両道を実践する学生を増やしたい。体育専門学群以外に、医学群や理工学群の選手が当たり前のようにエースで走ります。勉強と競技活動を通じて、社会で活躍する人材を創出するのが使命なんです」
2017年の第2弾プロジェクトでは目標金額350万円に対して405万円で達成。続く2018年の第3弾は354万円の支援を集めた。資金は、手狭だった学生用キッチンのリニューアルや、10人乗りワゴン車のリース、選手の栄養サポートやコンディションサポートにあてられた。
支援に呼応するように、チームの士気が高まり、タイムも上がっていく。箱根駅伝予選会の成績は、2016年が24位(10位と22分40秒差)、2017年は19位(13分09秒差)と、敗退が続くものの、弘山監督は一向に悲観はしていなかった。
悲願の予選会突破。43校中6位、26年ぶりに掴んだ61回目の箱根駅伝の切符
2018年の第3弾プロジェクトのあと、箱根駅伝予選会の成績は17位。予選通過10位とのタイム差は、8分56秒。2015年が24分54秒という絶望的な差であったことを考えると、弘山監督の頭のなかで本戦出場は手の届かない夢物語ではなくなっていた。
そして、2019年10月26日。総額335万円の支援を集めた第4プロジェクトを達成した筑波大学陸上競技部は、堂々の6位で第96回箱根駅伝予選会を突破し、本戦の出場権を手に入れる。
1994年以来、26年ぶりに掴んだ夢の切符だった。
「予選会には、多くのクラウドファンディングの支援者の方々も駆けつけてくれました。予選突破の喜びの瞬間を一緒に分かち合えたことが、なによりも嬉しかったです」
スポンサーシップを越えて、パートナーシップの関係を築きたい
継続するプロジェクトにおいて、支援者との結びつきの強さは大事なポイントだ。一般的に、クラウドファンディングでは「7回お礼を言う」ことが大切だという。弘山監督は、差し出されたサポートを受け取って終わりにはしない。結果を出し、かつ報告するサイクルを責任を持って行う。
「駅伝チームの主役は、学生です。しかし、クラウドファンディングはまぎれもなく運営に影響を与え、私たちと関わっています。一見すると資金的な支援で終わってしまうクラウドファンディングですが、我々にとっては5年間を共にした伴走者。スポンサーシップという立場を越えて、学生を育てるパートナーシップの関係を築いていきたいですね」
(本選出場を決めた予選会にて。互いに影響し合い深め合うチーム作りを目指している)
箱根駅伝出場を控えた12月。第5弾となったプロジェクトでは、これまでの達成額をはるかに上回る1,531万円の支援が寄せられた。箱根駅伝出場へのサポート費用が200万円。2020年夏までの練習サポート費が450万円。それを上回る額は、学生たちの食住環境の整備に使われる予定だ。
走ってきたのは選手たち。牽引したのは監督。そして、共に想いを支えた輪の中に、確実にクラウドファンディングの支援者がいた。
「私たちは、箱根駅伝に26年ぶりに『復活』しました。これで終わりではありません。目指す復活劇は、もっともっと先に位置しています」
まず目指すは、箱根駅伝本戦で10位以内。翌年の箱根のシード権を狙う。
あたたかい支援に押され、熱き想いを胸に抱き箱根路を走る筑波大学陸上競技部は、どんな闘いをみせてくれるのか。支援者たちのエールが、沿道から聞こえてくる。
READYFORではさまざまなプロジェクトが実行されています!ぜひチェックしてみてください。
クラウドファンディングにご興味がある方はお気軽にお問い合わせください。