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「寄付者ではなく仲間」NPO法人アラジの活動を継続寄付で支えるマンスリーサポーターの存在意義

READYFORでは2022年2月より、社会的活動団体などが、マンスリーサポーターとして毎月定額の支援をする方と長期的な関係性を育む「READYFOR継続寄付」を開始。単発のクラウドファンディングと合わせて、資金調達を総合的にサポートしています。

「マンスリーサポーターは、ただの寄付者ではなく、共に課題を解決する仲間」

そう話すのは、継続寄付を利用するNPO法人アラジの代表理事・下里夢美さん。アラジは、「誰もが夢に向かって努力できる社会の実現へ」をビジョンに、アフリカ・シエラレオネの最貧困家庭の子どもたちへ「教育支援」を実施する団体です。その活動を支える重要な柱の一つが、311名のマンスリーサポーター(2022年9月現在)の存在。現在も継続的に募集しています。

8月17日に開催したウェビナーでは、下里さんをゲストに迎え、資金調達の手段として継続寄付に力を入れる理由とその意義、マンスリーサポーターとの関係構築で大切していることについて伺いました。

年間5人に1人が小学校を卒業できない。教育支援は緊急支援

中央:特定非営利活動法人Alazi Dream Project 代表理事 下里夢美さん。西アフリカ・シエラレオネ共和国の小学校にて

下里夢美(以下、下里): 私たちは、アフリカのシエラレオネ共和国で、最も困難な状況に陥っている子どもたちと貧困家庭に教育支援を行うNPO法人です。

教育支援は、国際協力における「緊急支援」に位置すると私たちは考えています。
児童労働ゆえに教育が受けられない子、留年や退学で教育機会から離れてしまう子。大人になってから学び直すチャンスはなかなかあるわけではありません。シエラレオネでは、3人に1人が何らかの児童労働に従事させられています。毎年5人に1人が小学校を卒業できず、3人に1人が中学校を卒業できません。平均余命・識字率・所得など複合的に貧困度数を測るHDI指数は189ヵ国中182位(2021年)で、近年では急激に治安が悪化している印象も受けます。

シエラレオネでは2016年にエボラ出血熱が流行し、大きな経済打撃を受けた。経済成長率は1991年から2002年の内戦中と変わらずマイナスで、コロナ禍の影響もあり、2030年以降も後発開発途上国に留まるだろうと予測されている。

私たちは、SDGsで掲げられた目標4.1「2030年までにすべての子どもが小学校・中学校を卒業できるようにする」に寄与できるよう活動しています。

シエラレオネの中等教育修了率は、2018年の「初等・中等教育」の無償化をきっかけに20%上昇しました。2030年までに100%という目標を達成するべく、ユニセフや世銀などの大きな団体の手の届かないところに、草の根で支援を届けるのが私たちの役割です。

活動内容は、大きくわけて4つあります。1つ目が毎月約8万円を給付する「小学校定額給付支援」。2つ目が、月100時間以上の児童労働に従事する子どもたちを対象とした「奨学金給付支援」。

3つ目が、7ヵ月以上の赤ちゃんがいて、小中学校を退学した20歳未満の女性に奨学金を給付する「10代シングルマザーの復学支援」です。シエラレオネでは10代の2割弱が望まない妊娠と出産で義務教育課程を退学しています。文化的宗教的背景から、未婚女性への性教育をタブー視する傾向が強く、避妊具へのアクセスも整っているとは言い難い状況です。そうした状況に紐づいた4つ目が、若年妊娠の根本的解決を目指す「男子中高生向け性教育プログラム」です。

活動開始から8年間で、私たちは最貧困家庭の子どもたち1,500人以上に復学の機会を提供してきました。2022年度は、この4つのプログラムで合計20,700名への子どもたちに新たにアプローチすることを目指しています。

マンスリーサポーターが増えれば、支援できる子どもが増える

下里: 私たちが2017年に独自でマンスリーサポーターの募集をはじめたときは、毎月寄付してくださる方がいらっしゃるだろうか、不安でした。でも年々順調に伸び、今は300名近いマンスリーサポーターが活動を支えてくれています。現在、私たちの財源の半分が、継続寄付によるものです。

私たちが、資金調達においてマンスリーサポーターからの寄付をメインとする理由の一つに、寄付を通じて課題解決をする仲間になってほしい、という想いがあります。アルバイトと掛け持ちで活動をスタートした2016年、リアルイベントを年間100回以上開催し、1000人ほどにお会いしました。そうした地道な関係づくりの中で、活動に共感してくださる仲間ができ、単発寄付を繰り返ししてくださる方がいて、徐々に活動が広がっていきました。

事業としても、現地に給付金を届けるプロジェクトなので、財源と解決策の道筋がはっきりしています。継続寄付によりマンスリーサポーターが増えることで、事業と組織の基盤が安定し、支援を広げていくことができるのです。

マンスリーサポーターが増えるとともに、復学の機会を提供した子どもたちの数も増えてきた

マンスリーサポーターは、共に課題解決に向かう「仲間」です。継続寄付をただの有効な資金調達手法として捉えるのではなく、支援者の方々と、ともに課題を解決していくのだと共通認識を持って取り組むことが大事だと考えています。

マンスリーサポーターとの積極的なコミュニケーションが鍵になる


下里: 
現在、マンスリーサポーターの方には、登録後すぐにサポーター番号とお手紙を送付しています。初期はメールマガジンをお送りし、1年後にリターンと年次報告書を送付していたのですが、サポーター歴1年未満の方の離脱率が高いことがわかり、コミュニケーションの機会を増やしました。

2ヵ月に1度のサポーター限定の勉強会のほか、1対1のオンラインヒアリングなども実施しています。また、仲間としてコミットしていただけるよう、応援メッセージをお寄せいただいたり、1分アンケートへの回答をお願いしたりしています。SNSのシェアをお願いすることも。1対1のヒアリングでは、アラジに必要な改善点やもっと活動を広めるための施策を一緒に考えてもらうこともあります。どれも大切なコミュニケーションの機会となっています。

マンスリーサポーターとの交流会の様子

(以下、ウェビナー参加者との質疑応答)

――1対1のマンスリーサポーターとのヒアリングのなかで、ご自身が認識していなかったことや、意外だったことがあれば教えてください。

下里: 支援者さんのヒアリングは、想像できなかったご意見をもらえるのですごく面白いです。たとえば「メルマガは長いときは読まない、LINEで送ってもらえればコピペして友だちにシェアできる」と伺ったので、LINEの公式から毎週金曜日に配信するようになりました。

あと「なるほど」と思ったのは、「自分が活動に共感していても友だちには勧めづらい」というご意見ですね。「化粧品や自分が使う商品とアラジがコラボしてくれたら、友だちに勧めやすい」とも。NPO法人やアフリカという言葉自体に、何かしら抵抗感を覚えてしまうという視点は、運営者として欠けていました。

活動をどうやって広めるか、伝えるかを考えるうえで支援者さんの意見はとても参考になります。一人ひとりとじっくり話すことで、やるべきことが見えてくると感じています。

――初期は離脱率が高かったとのことですが、現在の離脱状況はいかがですか?

下里: 現在は全体の約17%が離脱しています。2年経つと、離脱する方の割合はがくんと減ります。なので最初の1年で、私たちとサポーターさんとの間にズレを少なくするため、積極的にコミュニケーションを取ることが大事だと思っています。

資金調達は目的ではなく、目指したい社会を実現するための手段

――団体のウェブサイトでなく、外部プラットフォームを利用する場合、手数料が気になります。あえて、READYFORのような外部サービスを活用してマンスリーサポーターを募集することのメリットについてお伺いしたいです。

下里: 私たちは、団体のウェブサイトでもマンスリーサポーターを募集しており、別のシステムも利用しています。その範囲で比較すると、READYFORさんの手数料は、むしろ安いと感じています。個人情報の取得やコミュニケーション機能などのサポートが充実しているので、手数料に見合った仕組みを活用できていると思います。

READYFORさんの魅力は、Twitterやメールマガジン、リターゲティング広告など広報活動に注力してくださること。1回ページを訪れた方が、その後も広告を目にしてまた訪れてくれることもあります。一度支援してくださった方に再度案内が送れる機能も、マンスリーサポーターの登録を促すのに効果的だと思います。

また、私たちは公式ウェブサイトでも2017年よりマンスリーサポーターを募集していますが、ランディングページをつくるのも一苦労でした。活動を始めたばかり、あるいは規模の小さい団体さんは特に、作業負荷を軽減できるだけでもメリットは大きいと思います。

――継続寄付のキャンペーン(期限と目標金額を決めてマンスリーサポーターを募るやり方)で目標の数字はどのようにして決めていますか? 

下里: 私たちは、まずマンスリーサポーターを100人、2023年3月600名にすることを目標に掲げています。現状から新たにマンスリーサポーターが100人増えれば、20,700人の子どもたちへ支援が可能になります(一人当たりの支援平均額1,472円から算出)。

こうした目標設定は、はじめに社会課題があって、それがいったいいくらあったら解決できるのかを出発点にメンバーで話し合います。どのくらいの予算があれば、何年後に何を解決できるのか。そのうちの何%を他のやり方で賄えるのか。社会課題の解決の理想から数字を算出します。ファンドレイジングをやること自体が目的になってしまうと、資金調達の活動がすごくしんどくなってしまうので、出発点をぶらさないようにしています。

――私もファンドレイジングを担当していますが、アラジさんのようにマンスリーサポーター募集のキャンペーンを打つ勇気がなく二の足を踏んでいます。継続寄付のキャンペーンで学んだことがあれば教えていただけると嬉しいです。

下里: 継続寄付を募るキャンペーンは、ファンドレイジングの基礎から応用まですべてを学べると感じています。告知初日に支援者が増え、落ち込んだあと最終日直前にまた上がるといった傾向や、支援者さんへのお礼の書き方、プレスリリースのタイミングなど、一通り体験することが可能です。小規模でも、チームで取り組むことで成功体験が増え、仲間同士の帰属意識も高まるように感じています。

マンスリーサポーターになることも、未来を変える行動のひとつ

下里: 戦争など悲惨な事件が起きた際、SNS等で『Playfor』といったハッシュタグを見かけます。大事なことだと思いますが、私個人としては、祈るだけで行動しなければ世界の現状は変わらないと思っています。教育支援は、子どもの未来を広げ、いずれは世界の未来を変えることにつながる、まさに、いまやらなければいけない緊急支援です。

子どもが学ぶことや夢を諦めなくていい社会をつくりたい。私たちの想いに共感してくださる方は、未来に向けた行動の一つとして、マンスリーサポーターになってもらえたら嬉しいです。

私たちの活動がずっと必要とされるのではなく、2050年には、日本のような政府主導の支援や社会保障などに置き換えられ、当たり前のものとして学校がある。シエラレオネがそういう社会になるよう、活動していきます。

下里 夢美
特定非営利活動法人Alazi Dream Project(NPO法人アラジ)代表理事
山梨県出身。世界最貧国、西アフリカのシエラレオネ共和国にて「誰もが夢にむかって努力できる社会へ」をビジョンに活動するNPO法人アラジ代表理事。桜美林大学LA/国際協力専攻を卒業後、2014年から活動を開始し、17年にNPOを起業、法人化。19年には現地オフィス設立。最も困難な状況に陥る子どもたちへの奨学金給付支援・農村部小学校定額給付支援、10代のシングルマザー復学支援・男子中高生への性教育プログラムなどに従事する。また、インタビューやテレビなど多数のメディア出演や、小学校から大学での講演会などにおいて、シエラレオネの貧困に関する諸問題の啓発活動を行う。筑波大学非常勤講師。2歳男児と3歳男児の母。

READYFORの継続寄付サービスをはじめたい・興味があるという方は、以下をご覧ください。

text by サトウカエデ edit by 徳瑠里香