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京都・老舗珈琲店と現代アートのまだ見ぬ挑戦。こんなときだからこそ、継続を決めたプロジェクトが描く未来

2020年、世界は誰も想像しなかった状況に動き続けています。

新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、人が集まるイベントは自粛、飲食店も次々に営業停止、美術館も図書館も休業に。「不要不急」と言われる、しかし確実に私たちに喜びをもたらしてくれていた暮らしの彩りが、どんどん失われています。

今こそ必要とされるクラウドファンディングでも、この自粛ムードのなかでプロジェクトを続けるべきなのか自問自答し、中止を判断する実行者さんもいます。現実として、コロナに関連するプロジェクト以外は注目度が下がりがちなのも実情です。

一方で、それでも「こういう未来を描きたい」とプロジェクトの継続を決意した実行者さんもいます。現在進行中のアートプロジェクト「京都・老舗珈琲屋の厨房が、現代アートに。tower(KITCHEN) 計画」も、継続を決意したプロジェクトの一つです。

私たちREADYFORは、それぞれの実行者さんが真摯に検討された結果を尊重したいと考えています。そして生活やインフラに関わること以外が自粛される今だからこそ、誰も見たことのない挑戦が、誰かの心に希望をもたらすきっかけの一つになると信じています。

そのような挑戦を未来につないでいくために、プラットフォームとしてお手伝いしたい。READYFORはそう考えて、実行者さんの挑戦をより多くの方にお伝えすべく、プロジェクトを担当するキュレーターが記事を制作したりイベントを開催したりしています。

今回は「京都・老舗珈琲屋の厨房が、現代アートに。tower(KITCHEN) 計画」を例に、このような挑戦に対してクラウドファンディングがお手伝いできる可能性をお伝えできたら嬉しいです。

プロジェクトを立ち上げた人と、その挑戦に興味がある人をつなぐ

2020年2月、まだ誰も見たことのない挑戦をしようとするチームと、その挑戦に興味のある約30名がREADYFORのオフィスに集合。当時はまだイベントの自粛が促されていなかったため、この日は感染対策をしながらトークイベントを開催しました。

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登壇したのは、クラウドファンディング「京都・老舗珈琲屋の厨房が、現代アートに。tower(KITCHEN) 計画」に関わるメンバーたち。そして、このイベントを企画したキュレーター・廣安ゆきみです。彼女は2018年にアート部門を立ち上げ、芸術や文化に関わるプロジェクトを多く担当しています。

今回のクラウドファンディングを通じて実現したいのは、「珈琲店のキッチンを彫刻作品に作り替える」。このプロジェクトに込めた思いを噛み砕き、挑戦の意義をもっと多くの方に知っていただくための場として、イベントの開催を決定しました。

イベント当日は、プロジェクトの紹介からスタート。会場に集まったみなさんにクラウドファンディングに至ったきっかけを伝えるべく、このプロジェクトの舞台となる喫茶店「前田珈琲」の代表取締役社長・前田剛さんが口火を切りました。

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【一番左が前田剛さん】

前田「京都で半世紀近く続いてきた喫茶店、前田珈琲の2代目を継いだ前田剛です。父が1971年に京都の中心地、烏丸でお店を始めて以来、地域密着のお店として使っていただいています」

前田珈琲の特徴の一つが、入っている建物。旧日本銀行京都支店や京都国際マンガミュージアム、さらには世界遺産である二条城まで、歴史ある貴重な建物を活用しているのです。

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【撮影:鈴木秀法】

そのなかでも、京都で活動するアーティストによく知られている店舗があります。それが今回のプロジェクトの舞台となる「明倫店」です。芸術に関するさまざまな活動の拠点として開設された「京都芸術センター」の1階にあります。

前田「お店にはアーティストさんも多くいらっしゃるんですよ。日常的に通っている方の多い喫茶店の空間に、アートという非日常が一緒に存在している。異なるものが混ざり合い、どちらも存在しているおもしろさを感じます」

クラウドファンディングを選んだ理由は、関わる人と一緒につくるお店にしたいから

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そんな明倫店が、2020年で開店20周年を迎えました。節目のタイミングで何かをやりたいと考えていた前田さんがタッグを組むと決めたのが、美術家の金氏徹平さん、そして建築家の家成俊勝さんです。

これまでにも金氏さんがアイデアを出し、家成さんが形にしながら作品づくりをしてきた二人。前田さんは二人に「何をしてもいいよ」と伝え、明倫店で金氏さんのシリーズ作品を制作する話が動き出します。

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【(左)ドローイング作品: 2008年、インク、コラージュ、紙、73x51cm /(右)アニメーションのインスタレーションビュー(撮影:武藤滋生)】

金氏「僕の作品で、『tower』と名付けたシリーズがあります。箱にたくさんの穴が空いていて、さまざまなものがtowerの内側と外側をつないでいる。自分がもっと大きなもの、例えば世界と接点を持つために作り始めたように思います」

ドローイングから始まったtowerは、金氏さんのアイデアでどんどん発展していきます。2017年には、towerの舞台化が決定。これまで平面だったtowerを建築として表現すべく、金氏さんは家成さんと一緒に制作しました。

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【撮影:守屋友樹】

金氏「演劇にして初めて、towerの穴に人が入ったり上に乗ったりと、作品と人との関わりが見えてきました。この経験を経て今回の明倫店のお話をいただき、アートと前田珈琲、そしてお客さんたちがつながるきっかけとなる作品にしたい、それならtowerが合うのではないかと思ったんです」

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【明倫店のキッチン。ここが全て彫刻作品に変わる(撮影:鈴木秀法)】

家成さんの提案で、towerを横倒しにして彫刻で表現し、明倫店のキッチンにすることが決定。towerの特徴である「穴」からエスプレッソマシンの湯気が吹き上がり、店員がお客さんにパスタを渡し、さらにtowerの上を舞台にして……アイデアがどんどん膨らんでいきました。

このプロジェクトを見守る前田さんは、お店づくりへの思いをこう語ります。

前田「towerの制作もその後の活用も、根底にあるのは『みんなでつくるお店にしたい』という思いです。プロジェクトメンバーも地元のお客さんも、もちろん前田珈琲のスタッフも、新しい場づくりの過程を一緒に楽しんでいきたいと考えています」

そこで、たくさんの人と一緒にこのプロジェクトを実現すべく選んだ手段が、クラウドファンディング。READYFORのキュレーター・廣安が加わり、打ち合わせを重ねて2020年2月の公開に至りました。

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アートとビジネスの境界を越え、関わり続ける作品に

イベントの後半では、金氏さんのアート作品を前田珈琲のお店で実現する、いわば「アートとビジネスの越境」についても話題が広がりました。これまで複数の企業と制作の仕事をしてきた金氏さんは、このようなコラボレーションについて、アーティストの目線で語りました。

金氏「前田珈琲のようにアートと異なるジャンルとコラボレーションできると、アーティストだけでは届けられない人に作品を届ける機会になります。一人の制作では挑戦できない作品制作ができる。それがおもしろい」

とはいえジャンルをまたぐ難しさもありそうですが、どうすればアートとビジネスが関わる可能性を広げていけるのでしょうか。

金氏「例えばアーティストが制作した作品を企業が受け取って、そのまま展示する方法もあります。でも僕は、アートとビジネスがそれぞれ別個に完結するよりも、まじわりながら一緒に作品をつくる関係性でいるほうが、もっと新しくておもしろいものが生まれるんじゃないかなと思うんです。

企業がアーティストの創作を理解し、アーティストは企業の理念を理解し、両者の接点と落とし所を一緒に探る。そういうつくり方ができると、単発のプロジェクトで終わらずに、作品を観に来た人も関われるさまざまなアクティビティに広がっていくと思います」

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【tower(KITCHEN)プロジェクトメンバー(撮影:鈴木秀法)】

家成「その点、前田さんは金氏さんや僕と一緒に楽しんでくださるんです。『どう発展していくかはわからないけれど、自由にやってください』と、僕らが制作しやすいようにアイデアを受け入れてくれる。

だから僕らも前田さんが描いているビジョンの理解を深め、空間に置き換えるための創作を自由に考えられる。一店舗の営業に関わるプロジェクトなのに自由にさせてくれる、前田さんの度量に助けられています」

前田「本当にどうなるかわからないですけれどね(笑)。でも関わる人みんなで一緒にお店をつくっていきたい思いをお二人と共有できているので、心配していないんです」

これまでのtowerシリーズは、制作を終えた後に穴を増やしたり、穴から出すものを変えたりと、金氏さんのアイデアに合わせてその姿を変えてきました。明倫店のキッチンとなるtowerも、一度制作したら終わりではなく、前田珈琲と金氏さん・家成さんで一緒に更新していきたいのだとか。

なぜなら、毎日入れ替わり立ち替わり、さまざまな人が訪れて同じ空間を形成していくお店づくりに終わりはありません。towerも前田珈琲に訪れる人と関わり、生きもののように姿を変えながら、ここに集う人たちと一緒に明倫店の新たな景色を描いていくのです。

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【模型の奥に見える木のハコが、tower(KITCHEN)(撮影:鈴木秀法)】

クラウドファンディングを、まだ見ぬ挑戦を形にする一歩目に

今回のイベントは、来てくださった方がその場で支援してくださったり、会場からの質問によって作品のアイデアが広がったり。挑戦する人と応援したい人をつなぐきっかけをつくる場となりました。

しかしイベント後、コロナウイルスの感染はますます拡大。このクラウドファンディングも苦戦しているのが現状です。

一方で、こんなときだからこそアートの力を信じて支援してくださる方々もいらっしゃいます。そんな方々の思いを胸に、READYFORもこの挑戦を実現すべく最終日まで駆け抜けていくので、応援どうぞよろしくお願いいたします。

そしてこのプロジェクトのように、誰も見たことがない挑戦をしたいと思っているみなさん。READYFORがお力になれそうであれば、どうぞお気軽にご連絡ください。その挑戦の先にある未知の景色を一緒に描いていけたら嬉しいです。

text by 菊池百合子 edit by 徳瑠里香

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