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READYFORの伴走型ロジックモデル支援が、ソーシャルスタートアップの成長を加速させる理由

READYFOR note

10年以上取引のない預⾦(休眠預⾦)を、社会課題の解決のために活⽤する制度「休眠預⾦等活⽤法」。READYFORは休眠預金を実行団体に分配する資金分配団体(FDO)として、社会課題解決に取り組む実行団体の公募審査や資金助成を行っています。

また、ソーシャルインパクトを最大化するため、分配先に選ばれた団体に対しては、ただ資金助成を行うだけでなく、事業運営のサポートや資金調達ノウハウの提供などの伴走支援を行ってきました。

そうした伴走支援をさらに強化するために、2022年1月から新たにスタートしたのが「ロジックモデル*支援」です。2021年に公募を行った「深刻化する『コロナ学習格差』緊急支援事業」の採択団体を対象に、ロジックモデルの作成・運用に習熟している認定NPO法人キッズドアと共同で支援を開始しました。

*ロジックモデルとは
事業が目指す成果(アウトカム)とそこに至るまでの道筋を因果関係で描くことができる設計図のこと。「自分たちの活動が提供している価値をいかに説明するか」のツールであり、「このような価値・成果を生み出すために、どのような活動を、どのようなプロセスで行うか」を考えるためのツールでもある。

出典:Impact Management Lab

今回のロジックモデル支援は、具体的にはどのような支援で、事業にどんな跳ね返りがあるのか。ロジックモデル支援の初号案件となったSilent Voice代表の尾中友哉さん、事業責任者の井戸上勝一さんにお話を伺いました。

コロナでさらに深刻化したろう・難聴児の学習環境改善のため、休眠預金に応募

──まずは、Silent Voiceの活動内容について教えてください。

尾中:Silent Voiceでは、聴覚障害者の強みを生かす社会の実現に向けて、企業向けのコミュニケーション研修や、雇用改善のコンサルティング、ろう・難聴児向けの総合学習塾などの事業を展開しています。

Silent Voiceを立ち上げたのは、耳が聞こえない両親とコミュニケーションを取ってきた自分の経験を活かして、聞こえる人と聞こえない人が相互に理解し合い、助け合う関係性を社会に広げていきたいと思ったからです。

Silent Voice 代表 尾中 友哉さん
平成元年生まれ、滋賀県出身。聴覚障害者の両親を持つ耳の聞こえる子供として、手話を第一言語に育つ。2014年にSilent Voiceを立ち上げ、教育・就労という二大テーマについて「ろう者・難聴者と社会の関係性を変える」ビジネスを創出しつつ、自治体の委員や企業のダイバーシティ事業部などに相談役として参画。また、社会起業家として、ニュース番組のコメンテーターやビジネスコンテストの審査員を務めるなど、幅広く活動を展開する。

──今回、休眠預金の助成対象事業に採択されたのは、ろう・難聴児向けの教育事業ですよね。Silent Voiceの教育事業について、もう少し詳しく教えていただけますか?

尾中:Silent Voiceの活動を進めるなかで、聴覚障害者が社会でつまづいてしまう原因は、耳が聞こえないこと以上に、幼少期にコミュニケーションの成功体験を積めていないことにあると気がつきました。

「先生の話す内容がわからず、教科書だけで勉強した」「学校に友達が一人もいなかった」──そんな声を何度も耳にするなかで、社会に出た後の支援だけでなく、教育段階からの支援が必要だと実感したんです。それで、教育分野への参入を決めました。

現在は、ろう・難聴児向けの総合学習塾「デフアカデミー」や、オンライン対話学習コミュニティ「サークルオー」などのサービスを提供しています。

ろう・難聴児向けの総合学習塾「デフアカデミー」の様子

──READYFORの休眠預金活用事業に応募されたのはどうしてだったのでしょう。

尾中:コロナの影響で聞こえない子どもたちが抱える課題がさらに深刻化したため、より速く広く、サービスを展開する必要性があったからです。課題が深刻化した例としては、マスクを着用する人が増え、会話の際に口元が読めなくなったことで、コミュニケーションが今まで以上に困難になってしまったことなどが挙げられます。

オンライン対話学習コミュニティ「サークルオー」の様子

そもそも聞こえない子どもへの教育事業は、事業として成り立ちづらい現状があります。なぜなら、聞こえない子どもの割合はおよそ1000人に1人と、マーケットサイズとしては小さいからです。また、僕たちは「耳が聞こえない子どもの家庭が、他の家庭より多く教育費がかかってしまうのは避けたい」という思いから、期間限定で授業料を無料にするなど、家庭への負担が少ない形での事業運営を行っています。そのため、資金調達は常に大きな課題なんです。

そんな中で、これまでクラウドファンディングなどでお世話になってきたREADYFORさんから休眠預金活用事業の公募のお知らせをいただき、応募することにしました。

一度は挫折したロジックモデル作成。伴走型支援だからこそ、再チャレンジを決意

──応募の結果、見事採択され、ロジックモデル支援を受けていただくことになりました。ロジックモデルのことは、もともとご存知でしたか?

尾中:はい。事業のソーシャルインパクトを評価・可視化する手法として、ロジックモデルの重要性は強く感じていました。株式会社と違って事業収益が少ないNPOでは、外部から資金を調達する必要があるため、対外的に事業のインパクトを可視化することが必須だからです。

そのため以前、自分たちでロジックモデルをつくろうとしたこともあります。でもその際は、大学の講義を受講したうえで作成に臨んだものの、議論が迷走してしまい、完成まで辿り着くことができなかったんです。

──そうだったんですね…!みなさんでロジックモデルを作成した際は、どのような点に難しさがあったのでしょう。

尾中:自分たちの活動を評価するための指標づくりに、とても苦労しました。例えば、僕たちは「子どもたちの心の変化」を大切にしているのですが、その変化率をどう計測し、評価すればいいのかが分からなかったんです。

心の変化をお小遣いの使い道の変化で評価してはどうか、という案も出ました。でも、本当に一つ一つの家庭にお願いしてお小遣いの記録を取ってもらうのか?と考えると、現実的ではなかったですし、それで心の変化が正しく測れるのか?ということにも疑問が残りましたね。

──数値化しづらい価値と向き合っていると尚更、そうした指標づくりは難しいですよね。一度難しさを実感したにもかかわらず、今回改めてロジックモデルを作ろうと思われたのはどうしてだったんですか?

尾中:ロジックモデルに詳しい方々に伴走していただくことで、今度はちゃんと完成まで辿り着けるんじゃないかと思ったんです。

また、休眠預金という非常に意義深いお金を分配いただくうえでは、それがどう使われたのか、どんなインパクトをもたらしたのかをクリアに表現する義務があるなと思い、今度こそやるしかないなと思いましたね。

──レクチャーだけで終わり、ではなく、完成まで講師が伴走してくれるのはたしかに心強いですよね。

尾中:加えて、ロジックモデルを通じて明確な目標を設定することで、メンバーのモチベーション向上につながるのでは、という期待もありました。明確な目標や指標がない状態では、自分たちの活動に対する評価も「なんとなくやってよかったよね」と、ぼんやりしてしまいます。一方でロジックモデルを作成すれば、「あの結果を出そう」という目標意識を持てますし、目標としていた結果を出すことができれば、みんなで思い切り喜び合うことができます。

そうした意味でロジックモデルは、社外に対するアプローチに有効であるだけでなく、社内にもポジティブな影響を与えるものだと思いますね。

Silent Voiceのメンバーのみなさん

ロジックモデル作成から活用方法まで。PDCAサイクル一周の伴走支援

──具体的にどんな支援を受けたのか、教えていただけますか?

井戸上:支援は全10回で、主に今回、READYFORさんとコンソーシアムを組んで支援にあたってくださったキッズドアの担当者の方から指導を受けました。

「ロジックモデル作成」では、自分たちが目指すアウトカムと、そこに至るためのプロセス、そしてアウトカムの達成度を測る評価軸を決めました。続いて、その評価軸に必要な情報をどう集め、どう管理し、どう使うかを、「調査票・調査計画作成」で話し合いましたね。

「データフロー等の作成」では、集めて整理した情報を、事業の広報、資金調達、事業改善など、どういう目的で使うかを設計しました。そして最後に「調査結果の検討」で、実際にキッズドアで活用している成果報告書のフォーマットを共有いただきながら、集めた情報をどのように外に出していくかを話し合いました。

──ロジックモデルをつくるだけではなく、その活用方法まで一緒に設計していくんですね…!以前みなさんだけでロジックモデルを作成した際との違いは、どんなところに感じましたか?

Silent Voice 事業責任者井戸上 勝一さん
1996年生まれ、奈良県出身。聴覚障害者の両親の元で手話と共に育つ。大学卒業後、株式会社LITALICOに勤務。家族の死と向き合う中で、限られた人生を何に使うかを考え、2020年にSilent Voiceに入社。現在は、オンライン教育事業の事業責任者を担い、法人の資金調達にも従事。

井戸上:前回と同様、自分たちの活動を評価する軸をつくるのに苦労したのですが、その際キッズドアの担当者の方から「現時点での決めを持つことがすごく大事だ」と繰り返し言っていただいたんです。どんな評価軸にするか悩み続けるよりも、ひとまず決めて、そこに対する行動計画を立ててしまった方が、最終的なアウトプットも磨かれるから、と。実際にロジックモデルを何度もつくり、検証された経験がある方からそう背中を押していただいたことで、評価軸もそうですが、よりインパクトのある事業作りにつながったと思います。

また、READYFORとキッズドアという、第三者の客観的な視点から意見をもらえたのも有難かったですね。各回の議論にチームの一員としてご参加いただき、僕らだけでは思いつかないような視点から問いを立てていただいて、すごく学びが多かったです。

──一歩下がってサポートする、というよりも、いちメンバーとして一緒にロジックモデルをつくり上げるというスタンスの支援だったということでしょうか。

井戸上:一部の業務を切り出してお願いする業務委託のような関係性ではなく、同じものを目指して走る仲間という印象がありましたね。一緒にいいものをつくろう!と本気で取り組んでくださることがとても嬉しかったですし、それがいいアウトプットをつくり切ろうというモチベーションにもつながりました。

「なんとなくいい活動してる」が具体化され、社内外で活動の説得力が向上

──実際にロジックモデルをつくってみて、日々の仕事にはどのような影響がありましたか?

尾中:ロジックモデル支援で設定したアウトカムを目標に据え、支援で整理した達成のためのアクションを日々実施しているので、僕らの活動の基準になっていると言えると思います。また、目標に対してなぜこの手段を取っているかがロジカルに整理されたことで、チームで動きやすくなったと感じますね。

完成したSilent Voiceの教育事業のロジックモデル図

──今後は、ロジックモデルをどのように活用していきたいとお考えでしょう。

尾中:ロジックモデルを元にした振り返りは、絶対にやりたいですね。これまでは振り返りすらも曖昧にしてきてしまいましたが、ロジックモデルができたことで、アクションや成果の振り返りもしやすくなったと思うんです。

──最後に、今回のロジックモデル支援をどのような団体におすすめしたいか、教えてください。

井戸上:「なんとなくいい活動をしてるよね」で終わってしまう、僕らのbeforeの状態に近いNPO団体ですね。活動意義をより可視化して伝えていきたい団体には、間違いなく示唆をもらえる支援だと思います。

尾中:初めてロジックモデルの作成に取り組む団体にもおすすめです。自分たちは初めて通る道を、何回も通ってる方々と一緒にできる心強さは計り知れないと思います。

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ロジックモデル支援は、ロジックモデルの作成からその活用方法の検討まで伴走することにより、ソーシャルスタートアップの成長を加速させる支援です。

引き続き、休眠預金の活用とともにロジックモデル支援を行い、ソーシャルセクター全体の成長に寄与していきます。

休眠預金等活用事業の最新情報は、こちらからご覧ください。

text by 高野優海 edit by 徳 瑠里香



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