二度目の資金調達。「資本主義では解決できない新たなお金の流れをつくる。」私たちが“無謀な挑戦”の先に描く未来
2011年3月29日、6件の実行者たちとともにスタートしたクラウドファンディングサービスREADYFOR。
サービススタートから10周年を迎えた今日、READYFORは、シリーズBラウンド約10億円の資金調達を発表した。
「寄付市場のデジタル化」を推進し、「より多くの想いとお金を、なめらかに信頼性高く流通させるプラットフォームへ」と進化していくためにーー。
CEO米良はるかが、これまでの10年間の歩みを振り返り、READYFORがこれから目指す世界を語る。
挑戦する人の第一歩に寄り添いたい。“無謀な挑戦”のはじまり
日本初のクラウドファンディングサービスとしてREADYFORが産声を上げたのは今から10年前。当時大学院生だった米良が、米国を中心に普及していたインターネットを介した資金調達の仕組み、クラウドファンディングを日本に持ち込もうと、挑戦の一歩を踏み出した。
「私自身もそうでしたが、『何かしたい』という想いを持っていたとしても、実際に一歩を踏み出すにはハードルがあります。情報がない、コネクションがない、お金がない。でも、やれない理由を並べてチャレンジができないのはすごくもったいないと思うんです。
クラウドファンディングを通してお金と応援してくれる人たちを集めることができれば、その想いをかたちにしていくお手伝いができる。あらゆる人に挑戦をしてもらう場をつくりたい。ただその想いだけで走り出しました」
2011年は、インターネットを介してお金を集めることも出すことも、キャッシュレスさえ概念として理解されなかった、そんな時代。
「すごく無謀な挑戦だったと思います」
全国で小さなワークショップを開いてクラウドファンディングの仕組みを語り、“やりたい”想いを持つ人を見つけてはともにプロジェクトを立ち上げる。不確かな未来に向かって地道に進んだ。
「実行者さんのプロジェクトを成功させるために、自分たちに何ができるのか。3ヶ月後にREADYFORが残っていられるかわからない状況で、毎日必死でした」
自分たちは何のために事業をやっているのか?成長の裏にあった迷いと葛藤
サービススタートから3年、2014年に会社を創業。プロジェクトに伴走するキュレーターを中心に、実行者一人ひとりの想いをかたちにするサポートに全力を尽くす日々。一人また一人と挑戦する人が増え、集まるお金も大きくなった。
2016年には、クラウドファンディングの認知が広がり市場が拡大していくとともに、READYFORの実行者数も支援総額もぐっと右肩上がりに。が、成長の裏で、迷いも生じていた。
「それまでは“ないものをつくろう"と、フロンティア精神で走ってきたけれど、他にもクラウドファンディングのプラットフォームが増えてきた。他にプレイヤーがいるのに、自分たちが人生をかけてやる意味はあるのかなって。なんのためにやっているのか、何を実現したいのか。『挑戦する人に寄り添う』という想いはブレずにありながらも、立ち返って考える必要がありました」
迷いの最中、転機が訪れたのは2017年。30歳を前にガン宣告を受けた米良は、READYFORを一度離れることを決断。そして、半年間の闘病生活の中で、組織のあり方、事業の方向性、自身の人生について思考を巡らせた。
「私個人としても20代はめちゃくちゃ走ってきて働き詰めだったから、これからどうしようって初めて立ち止まった。どう生きたら納得のいく人生になるか。強い組織ってなんだろう?事業でどんな価値が提供できる? 歴史や経営者の本から学び、解くべき課題とひたすら向き合いました」
その過程で米良は、人生をかけて、READYFORの仲間たちと実現したい未来を大きく描いた。
「それまでは私もわかりやすい数字のゲームにハマってしまっていたけれど、ダイナミックな目標を掲げたことで、目先の数字よりも遠い未来に目が向くようになった。
目指すべき未来があって、実現する手段として事業があって、一緒に向かう仲間がいて、彼らが力を発揮し続けられる基盤としての組織をつくる。その道筋が描けたことで、迷いが消えて、やるべきことが明確になりました」
(2017年12月 米良の闘病復帰をメンバー全員でお祝い)
もっともっと、必要なところに想いの乗ったお金を流すために。新たな決意
たしかな想いを持って復帰した米良。READYFORが目指す未来、ダイナミックな目標とは──
「資本主義では解決できない新たなお金の流れをつくっていきたい。そのために社会を持続可能にする資金調達の仕組みを目指す。クラウドファンディングはそのための手段の一つであって、もっともっと、課題を解決するサービスやプロダクトを開発していこう」
2018年、創業以来初めてとなるVCからの資金調達を実施。組織づくりを強化し、コーポレートアイデンティティも刷新。READYFORの第二章が幕を開けた。
「私たちの想いは10年前のサービス開始当初から今もずっと大きくは変わりません。READYFORはこれまで、2万件近くのプロジェクトに対して約200億円のお金を流してきました。それでも、まだまだ足りない。何千億、何兆円と、本当に必要なところに想いの乗ったお金を流してくために、自分たちに何ができるのか? 問い続け、解決する事業や仕組みを生み出し続ける組織でありたい」
鍵となるのはテクノロジーの力とパートナーシップ。
「資本主義ではお金が流れにくいところに新たに大きなお金を流していくためには、テクノロジーの力でクラウドファンディングの仕組みを発展させ、新たな事業を開発していく必要があります。
また、一社だけでは難しいので、企業をはじめパートナーシップを結んでともに取り組んでいくことが重要だと考えています。もっともっと社会全体で、想いを持った人たちを支えるインフラをつくっていきたいんです」
READYFORは近年、オンライン従業員寄付・ポイント寄付などで企業の寄付活動をサポートし、社会全体で実行者を支援するネットワークを構築。
2020年には、「新型コロナウイルス感染症:拡大防止活動基金(以下、コロナ基金)」を運営し、国内購入型・寄付型クラウドファンディング史上最高金額となる8.7億円の寄付を集めた。
「取り組み自体は、うまくいったものもそうでないものも、そこから軌道修正をしていったものもあります。大きな理想を掲げるだけで事業がスケールできてないと、自分たちを信じてくれている人たちの期待を裏切ることになってしまう。目指す未来と自分たちの成長速度をどう照らし合わせてどう結果を出していくか。まだまだだと悔しい思いもしながら、進んでいる最中です」
寄付市場をデジタル化し、社会を持続可能にする資金調達の仕組みを。
そして2021年、二度目の資金調達を実施。サービス開始10年の節目に描くのは「寄付市場のデジタル化」を進め、想いの乗ったお金の流れを増やすこと。
「READYFORが提供しているのは、お金を集めて支援者と関係性を築いていく資金調達の手段です。新型コロナウイルスの影響もあって、資金調達の需要が増える中、金融機関がすぐに貸し出しができないケースでも、READYFORを通じてお金を流すことができる。
返済しなくていいお金、そして支援者一人ひとりの想いを乗せて託すお金は、ともに持続可能な社会をつくっていくことが求められるこれからの時代にフィットしていると感じています。資金調達分野でのクラウドファンディングのパイオニアとして寄付市場を広げていきたいです。
また、コロナ基金では、何かしたいと思っている方々からたくさんの寄付をいただき、その時々の必要性に応じて医療従事医者やNPOへの助成を行うことができました。今後も、社会課題に取り組むソーシャルセクターと、お金を出したい、応援したいと思っている人を媒介する役割を果たしていきたいと思っています」
READYFORでは今後、実行者に向けて、継続的に活動を続けるための資金調達の基盤をつくり、支援者に向けては、応援したいという想いを適切なかたちで届けていくサポート体制を強化していく。
「投資や融資と違って、お金が返ってこないクラウドファンディングや基金においては、『透明性』が何より大事だと考えています。自分が投じたお金が社会の中でどう生かされているのか。その先のお金の流れを知ることで、支援をしてよかった、また支援をしよう、と思えますよね。
支援者と実行者をマッチングして、資金調達における透明性の高いお金の流れを生み出していく。寄付市場をデジタル化することで、マッチングコスト・管理コストも下がり、想いを届けること、想いに応えることが、より加速して広がっていくと思っています。
たとえば、実行者は様々な手続きや管理の手間が省けることで自身の活動に集中できる時間が増えたり。支援者は応援したい人や団体を見つけやすくなったり。デジタル化することで、想いの乗った寄付というお金がより循環していくと思うんです。
これまで培ってきた知見やつながり、そしてテクノロジーの力を駆使して、社会を持続可能にする資金流通の仕組みをつくる。これが、私たちがこの先に挑戦したいことです」
「資本主義では解決できない新たなお金の流れ」とは?
そもそもREADYFORが目指す「資本主義では解決できない新たなお金の流れ」とはどういうことなのか。
米良は、研究者の山口周さんが『ビジネスの未来 エコノミーにヒューマニティを通り戻す』の中で述べている「経済合理性限界曲線」をもって説明する。
「この図を見たいろんな方から、READYFORがやっているのはこういうことだよねって言われて、すごく腑に落ちました。横軸の『問題の普遍性』は高ければ高いほど、需要が高く市場が大きい。縦軸の『問題の難易度』は高ければ高いほど、解決するのにコストがかかる。今の資本主義で解決できるのは、市場が大きく解決コストが低い、この経済合理性限界曲線の下の部分です。
READYFORがやっているのは、経済合理性だけでは測れない、この曲線の外側にあるものの資金調達の課題を解決していくこと。たとえば、希少疾患の新薬の研究開発は、目に見える需要が少ないからビジネスの世界ではお金が集まりにくく、実現可能性が低くなってしまう。でも研究が進めば、助かる人がいるし、他の疾患にも効果があって市場が開けていくかもしれない。
これまでは国の助成金や交付金によって賄うことができていたけれど、困難な時代となっていろんな領域にお金が必要になる中、カバーしきれないこともある。資本主義の仕組みの中では解決できず、国もカバーすることができない、でも社会にとって必要な取り組み。そこにクラウドファンディングの仕組みをベースに、READYFORはお金を新たに流していきたいと思っているんです」
実際にREADYFORでは、この曲線の外側にある、研究や医療の分野、アート・文化・芸術領域、ソーシャルセクターにおける資金調達も数多く行われている。
一社の枠を超えて、同じ未来を描く仲間とともに。“無謀な挑戦”はつづく
資本主義では解決できないところへ、想いの乗ったお金の流れを増やす。
「10年前にサービスを始めたときと同様、“無謀な挑戦”だと思っています。でも、私は仲間と無謀なことに挑んでいくことが好き(笑)。
SDGsをはじめ社会の持続可能性が問われる時代。目指す未来は、一人では描けないし、一社では実現できない。だからこそ、経営陣とメンバー、実行者さんと支援者さん、投資家、企業や自治体、ソーシャルセクターのみなさんと手を取り合っていきたい。そしてもっともっと、仲間が必要です。
一度きりの自分の人生。私自身も迷い立ち止まった経験があるから、何をすべきかを定めるのは難しいと思います。それでも、自分のために、誰かのために、社会や未来のために、何かしたいと思う人がいれば、何かしらのかたちで仲間になってもらえたら嬉しいです。
それは、READYFORでメンバーとして働くことかもしれないし、実行者としてプロジェクトを立ち上げることかもしれないし、支援者としてプロジェクトを応援することかもしれない。勤める企業で従業員寄付を募集したり、支援したりすることかもしれない。
私たちはこれからも、何かしたいと思った人が一歩を踏み出せるきっかけや入り口をたくさんつくっておきたいと思っています。一緒に未来をつくっていきましょう」
たった一人の想いを起点に始まった"無謀な挑戦"。それから10年。メンバーをはじめ多くの人の想いが重なり、未来は少しずつ変わってきているのかもしれない。それでもまだまだ道の途中。
10年先を見据えた、READYFORの“無謀な挑戦”はこれからもつづいていく。
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text by 徳 瑠里香