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個人の想いへの“共感”から、社会に対する切実な“祈り”をかたちに。コロナ以降のクラウドファンディング論

更新され続けるさまざまな数字と情報では、捉えきれない“わからなさ”が社会を覆った2020年。

混沌とする世の中で、SNSを機軸に広がった社会運動に呼応するように、コロナ禍のクラウドファンディングも、ある種の明確な訴えを携えて私たちの社会に、登場し続けました。

2020年、REDYFORのクラウドファンディングプロジェクトは歴代最高の支援者数・支援総額を更新。コロナ禍の社会において、この結果はどのような意味をもたらすのでしょうか。

そして、私たちが投じた“意思あるお金”は、2021年、社会を変えていく追い風となりえるのでしょうか。

text by  小谷なみ(キュレーター)

はじめに、自己紹介

クラウドファンディングサービスREADYFORでプロジェクトの伴走支援をするキュレーターをしています。

キュレーターは、実行者さんの資金調達の全体の設計を練りながらプロジェクトに合わせた、クラウドファンディングのストーリー編集・リターン設計、広報戦略などを一緒に作り上げる役割を担います。

READYFORに参画して以来、ひたすらに向き合ってきたプロジェクトは累計数百。クラウドファンディングのあれこれに関して365日考えています。

“共感”から、“祈り”へ

2020年1月。まだコロナが現れる前にクラウドファンディングを考察したnoteにて、“「共感」でお金を集める時代は終わった? ”という問いが掲げられました。大きな反響とともに、“共感”について捉え直すことが大きな命題となってから1年...…。

コロナ禍のクラウドファンディングで語られたのは、これまでの“共感“という、柔らかく温かみのある言葉では不足する、もっと切実な“訴え“や”叫び“に近い主張、あるいは“祈り“に近い言葉の数々。

誰かが発した社会に対する小さな“祈り”が可視化され、ひとり、またひとりと、ただただその祈りが通じてほしいと無数に集まる支援。それは、これまでのクラウドファンディングの主軸であった、顔のわかる個人の夢や想いに“共感”し、その後押しをしていた機能を確実に塗り替えていくものでした。

アクションを加速させたハッシュタグ

2020年、クラウドファンディングに現れる小さな祈りの先には、資金が集まれば確実に手に入る“社会に対するアクション“がありました。何を願ったらよいのか、何に想いを寄せたらよいのかすらもわからない不安な状況の中で、その確実さは、祈りの漠然さと相反して、私たちが社会に対する歩みを止めずにいられた、ある種の拠り所だったのかもしれません。

そんな、“社会に対するアクション“を加速させた要因の一つに、SNS上で機能するハッシュタグの存在があります。

背景として捉えておくべきは、昨年大きなうねりとなった #BlackLivesMatter や#MeeTooほか、2020年以前から海外を中心にハッシュタグにより広がり強まっていたSNS上での社会運動の存在です。これまで発されることなのなかった声なき声がSNS上で可視化されることでより広がりをもたらし、人々を動かしていきました。

コロナ禍で掲げられたハッシュタグも、なんとなくそう思う、なんとなく良い、という“共感“の範囲を超えて、確かにそうだ、しかるべき、というより強い“訴え“の軸に到達しながら“同意“するたくさんの人々のアクションを後押ししていたように思います。

同じように、コロナ禍の日本のクラウドファンディングでも、ハッシュタグを効果的に活用したプロジェクトがSNSで広がりを見せました。

社会運動としてすでに確立されている、署名、デモなどに加わり、一人ひとり、そして束としての意思表示を社会の中で可視化し、小さな声なき声からも派生する大きなうねりを“資金”というかたちに集積していったのです。

同時に、クラウドファンディングで集まった資金は、署名やデモよりもダイレクトに、訴えに対する具体策を自分たち自身で前進させることを可能にします。

2020年、ハッシュタグを活用したクラウドファンディングのプロジェクト(抜粋)

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#裁判で真実を

#明日をつなぐ #コロナ基金  

#家から支えよう

#まもろう富山

#ありがとう志村けんさん

祈りはやがて、意思表示に変わっていく

そんな明確な意思表示に呼応し、コロナ禍のクラウドファンディングには、一プロジェクトにつき1000名、多いものでは1万人を超える支援者が集まりました。一人あたりの支援額は1000円から数千万円。これまでは、このような規模の人数を募るプロジェクトは起きえなかったことです。

お金という限りある資源を、何に投じるのか。私たちはその選択と決定を繰り返して日常を過ごしています。今手に入る“もの“ではなく、祈りからはじまる社会への“意思表示“にお金を投じる、新しい選択肢が生まれたコロナ禍。

伴って、すぐに対価や結果を得られないからこそ、大事なのは投じたあとのお金のゆくえです。

クラウドファンディングでは、支援する側とされる側、必ず双方向性と情報開示が発生します。一定の透明性が担保されている状況から、主体的に課題に関わっていくこと、より深く知っていくことが必要。無数の祈りの視線が、資金とともに社会を前に動かすことにつながるはずです。

おわりに、分断なき支援の先に

コロナ禍で投じられた多くの支援は、特定の誰かに共感し、支援するためのお金ではなく、不特定多数の、私たちの自身にいずれ巡り巡ってくるような社会に対する支援のお金。支援する、されるの関係ではなく、コロナがもたらした全員が当事者という状況に、「自分も大変な状況だけれども支援をする」といった支援理由が多数寄せられました。

わからなさに溢れる社会の中で、社会に対する祈りが自分だけでなく、誰かもそう思っているという承認を得ながら、やがて明確な意思表示となり支援が集まる。個人的で新しい“日常の選択“の集積としてクラウドファンディングの結果が反映され、また日常が更新されていく...…。それぞれの小さな選択、意思を積み重ねていくことは、新しい社会をつくっていくことに繋がるかもしれません。

クラウドファンディングを通じて意思表示する、一人ひとりの選択が、大きな社会の選択として、そして、私たちが投じる“意思あるお金”が、2021年の社会を変えていく追い風となることを願って....…。

これからも新しいプロジェクトの誕生に全力で寄り添っていきたいと思います。

小谷なみ
READYFOR キュレーター事業部マネージャー /リードキュレーター ( 准認定ファンドレイザー )
WEB/編集ディレクターを経てREADYFORに参画。READYFOR アート部門立ち上げ、社会的養護の子どもたちへの支援に特化した「こどもギフト」の立ち上げ、プログラムオフィサーを務める。ソーシャルプロジェクトの企画、大型資金調達プロジェクトのキュレーターを務める。2020年 担当「新型コロナウイルス感染症拡大防止基金(国内CF最高額)」「NPO法人抱樸 クラウドファンディング(第11回日本ファンドレイジング 新型コロナウイルス支援特別賞 受賞)」など


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