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貧困やDVの悲しい負の連鎖を、あたたかい支援の連鎖へ。 READYFOR継続寄付「オリーブの家 おやこ基金」が生む好循環

「継続寄付は、NPO法人の利用者と支援者をつなぎ、社会に良い循環を生み出す基盤になる」

そう語るのは、20年にわたり貧困やDV被害の悩みを抱える母子に向き合いつづけてきた、認定NPO法人オリーブの家の理事長、山本康世さん。

2021年11月、オリーブの家ではREADYFOR継続寄付を活用し、DV被害等に悩む貧困女性を支える「オリーブの家おやこ基金」を立ち上げました。

山本さんにとって、「オリーブの家おやこ基金」に寄付するマンスリーサポーターとはどのような存在なのでしょうか。継続寄付の手応えや可能性について、じっくりとお話をうかがいました。

「足音が怖くて、夜眠れない」
DVや虐待被害で苦しむ母子を救いたい

―― 認定NPO法人オリーブの家を運営されている山本さんとREADYFORは、5年来の長いお付き合いなんですよね。

そうなんです。READYFORさんには、NPO法人の設立前からお世話になっています。きっかけは2016年に挑戦した、初めてのクラウドファンディング。自宅を改装してDV・虐待による貧困母子の心のケアと自立を支援する部屋をつくりたいと寄付を募ったのが始まりでした。それから「オリーブの家」を立ち上げ、活動の広がりと共に、以降計3回のクラウドファンディングを行っています。

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(オリーブの家 山本康世さん)

―― あらためて「オリーブの家」の活動内容について教えていただけますか。

私たちが支援しているのは、経済的に困窮している母子家庭や、DV・虐待、ハラスメントなどの被害を受けている女性と子どもです。たとえばパートナーによるDVが怖くて、たった1時間でさえぐっすりと眠れない女性や子どもがいます。最近ではコロナ禍の影響で居場所を失った若い女性や、家族からの虐待を受けている高齢の方からの相談も増えています。

岡山県津山市に拠点があり、保護シェルターでの一時保護や、専門家による心のケア・相談カウンセリングが主な活動内容です。私自身、「オリーブの家」を設立する前から心理カウンセラーとして活動しており、貧困やDVなど女性の悩みに向き合いつづけて20年になります。

2017年に、ひと部屋から始まった「母子のための保護シェルター」。クラウドファンディングでの力強いご支援や、県外の民間団体の協力を得て、現在は15〜16室を常時稼働できる状態にあります。特徴は「親子で入居できる」「期限を設けずに長期入居できる」こと。緊急の一時的な避難だけでは根本的な問題の解決につながらないと考えているので、「どうぞ親子で、安心して長期滞在してください」とお伝えしています。

ただ、コロナ禍で相談件数が倍増し、保護シェルターは常に埋まっている状況です。それでもSOSを伝えてくださった方を、一人も取りこぼしたくない。部屋が埋まっているからといってお断りしたくないんです。

頼ってこられる方というのは行政に相談しても、たらい回しにされたり、本当に行く場所がなくて切羽詰まった状況にいる方々。全国のさまざまな施設にかけあって相談したり、それでも足りないときは、私やスタッフの自宅を開放したりして、保護する道を模索しています。

社会的にも精神的にも「自立」できる支援を

―― オリーブの家では、母子の心のケアや相談カウンセリングにも力を注がれているそうですね。

私たちは“DVや虐待、心理的ケアの専門家になろう”という志を持って活動しています。

最も重要なテーマだと捉えているのが、保護した女性の「自立」です。経済的にも、社会的にも、精神的にも自立ができるようにサポートしたうえで巣立っていただく。たとえば利用者さんにマインドコントロールを防ぐための知識をつけてもらったり、離婚にまつわる問題などがあれば間に入って対処したり、シェルターを出たあとの支援先とおつなぎしたり。

オリーブの家は、一度出たあとでまた戻ってこられる方がいないんですよ。これも、長期滞在が可能だからこそ出来る支援だと思っています。

―― 保護するだけではなく、自立のためのプログラムやセーフティーネットづくりまで支援されているんですね。

まだ完璧ではありませんが、お一人おひとり本当に状況が異なりますから、それぞれに合った支援を心がけています。ただ、オリーブの家としてもデータや経験が蓄積され、複雑な問題にも対処できるようになってきました。

利用者さんには「いまはとてもつらいけれど、これを乗りこえたら、それが一つのケーススタディになって、あなたと同じような思いをしている人の役に立つから」とお伝えするんです。自分のつらい経験が、誰かを救うことになると。こうお話すると、利用者さんも力がわいてくるようで、どんどんたくましく、前向きになっていかれるんですよ。

毎月1000円から寄付できる「オリーブの家おやこ基金」

―― 過去4回、クラウドファンディングを実施して、どんな手応えや可能性を感じていらっしゃいますか。

初めてクラウドファンディングに挑戦したときは、見ず知らずの私たちのことを支援してくださる方が、こんなにもいるんだと驚きました。

支援者さんから寄せられたコメントを読むと、過去に自分やきょうだい、友だちがDVや虐待にあっていたという内容がとても多いんです。「子どものころ、オリーブの家のような場所があれば行きたかった」とか、「過去にDVにあっていたけれど、今はもう大丈夫だから、今度は私がつらい思いをしている人の助けになりたい」とか。当時、出会っていたのなら助けてあげたかったな、と思う方がたくさん。

クラウドファンディングによって、これまで語られてこなかった体験や声が届きはじめた。私たちと同じように「DVや虐待、貧困の問題を止めたい!」と考えている人たちとつながれた、と感じました。

「保護シェルターの立ち上げを計画しています」と声をかけてくださる方や、「こんなふうにSNSを使うといいですよ」と知識を教えてくださる方もいて。単純にお金を得るだけではなく、仲間を増やしていける、支援の輪を広げていけるのがクラウドファンディングなのだと感じました。

―― 今回、READYFOR継続寄付を活用し、マンスリーサポーター制度である「オリーブの家おやこ基金」を立ち上げられました。継続寄付を始めようと思われたのはなぜでしょう。

もともと継続寄付はやってみたいと思っていたんです。というのも、支援者さんのほうから、そういう声をいただいていて。「毎月コンスタントに寄付をしたい」「勝手に引き落としてもらえると、手間が省ける」と。

もちろん、私たちとしても毎月の運営費として使わせていただけるのが本当にありがたいんです。助成金などは、使用用途の幅が狭いんですね。ただ日々運営をしていると、突発的にお金が必要になる場面があります。赤ちゃんが入居してミルクが必要になったり、妊婦さんの医療費を援助したり、子どもが学校で必要なものが出てきたり。そういった急な支出にも柔軟に対応できるのは、本当に助かります。

また、継続寄付には“先を見通せる”利点もありますよね。たとえばアパートメント型の保護シェルターでは、家賃などの固定費が発生します。とくに東京で民間の保護シェルターが少ないのは家賃の高さが影響していると思っています。ただ、継続寄付で先の見通しがつけば固定費を払っていける見込みが立ちますし、計画も立てやすくなるはずです。

私たちNPO法人にとって、継続寄付は心強い味方であり、運営になくてはならない仕組みだと考えています。今回、より長く支援してくださるマンスリーサポーターを集める継続寄付をはじめられたのも、過去4回のクラウドファンディングを通して支援者と広く、深くつながったからこそ。クラウドファンディングで支援の輪を広げ、それから継続寄付に挑戦する。この流れがとてもよかったと感じています。


―― 継続寄付を募り、管理するツールとしてREADYFORを選ばれた理由があれば、教えてください。

これまでクラウドファンディングを実行し、目標を達成できたのはREADYFORのキュレーターの方々が伴走支援してくださったからこそ。パソコンの使い方からデータの見方まで本当に細かくサポートしてもらいました。

また、過去のクラウドファンディングで支援してくださった方々に、マンスリーサポータ―制度の告知ができるのは大きなメリットでした。とくにREADYFORはNPO法人の活動や社会問題の解決に関心の高い方が集まっているプラットフォームだとも感じています。

そしてなによりすばらしいのは、支援してくださった方のコメントが読めること。お一人おひとりのコメントを大事に読んでいます。その言葉に、私もスタッフも日々励まされているんです。利用者の方にも、「READYFORというシステムがあってね……」と説明し、画面を見せながら支援金額を報告し、寄せられたコメントも見せています。

すると、みなさん本当に驚かれるんです。「縁もゆかりもない私たちを応援してくれる人がこんなにいるの?」って。

支援者さんからの声を読むと、利用者さんも「自立できるように頑張らなきゃ」とおっしゃるんですよね。そうしてお母さんが元気になっていくと、お子さんもみるみる明るくなっていくんですよ。READYFORさんは、私たち「NPO法人と支援者」をつないでくださっていますが、私たちもまた「支援者さんと利用者さんをつなぐ架け橋になりたい」と思っています。

つらく悲しい連鎖を、あたたかい支援の連鎖に変えていく

―― 継続寄付でもマンスリーサポーターキャンペーンを実施され、目標人数を見事達成されていますが、募集にあたり、心がけていることはありますか。

私たちの活動は、その特性上、現場をお見せできません。ですからせめて、活動の内容を具体的にお伝えしたり、できる範囲で情報を公開したりしています。

募集ページでは、DV被害を受けた女性や子どもたちのエピソードを載せているのですが、実は、これらはすべて、利用者さん自ら「協力したい」と申し出てくださったもの。「私たちにできることをしたいから」と取材に応じてくださったり、手元の写真を提供してくださったり。保護シェルターを出た方も「きっと同じようなつらい目にあっている人たちがいる」と情報発信に協力してくれます。

―― 支援をされた方々の「あの頃の自分を救いたい」「今もなお苦しんでいる人を助けたい」という想いが利用者さんに届いて、そこからまた前向きな、良い循環が生まれているように感じます。

まさに、支援の好循環が生まれています。DVや虐待、貧困は悪い連鎖ばかり思い浮かびますが、良い連鎖に変えていくこともできる。以前、パワハラを受けたことがある女性が「DVやハラスメントを止めるために誰かを支援することで、昔の自分も救われている感じがする」とおっしゃっていたんです。

想像を絶するほどの苦しみを抱えている人が、今もどこかにいます。その方々たちを保護して、望んでいることをできるだけ叶えて、社会的・精神的な自立を支援していくのが私たちの役割です。

利用者さんに「支えてくれている人がこんなにいるよ」「理解してくれる人がいるよ」と伝えることで「自分だけじゃない」「一人じゃない」と思ってもらえたら。そして元気になって、今度は支える側になってもらえたら、うれしいですよね。そして、この好循環を支える基盤になるのが、継続寄付であり、マンスリーサポーター「オリーブの家おやこ基金」なのだと思っています。

text by 猪俣奈央子 edit by 徳瑠里香