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コアなファンを見つけて口説き、ムーブメントの火種をつくる。ソーシャル領域のキュレーターの地道な戦術

READYFOR note

クラウドファンディングの実行者に伴走し、プロジェクトの立案から終了までをサポートするREADYFORの「キュレーター」。そのキュレーターの仕事の舞台裏に迫るインタビュー連載、第三弾に登場するのは、NPOやNGOといったソーシャル領域のプロジェクトに伴走する二之方 太喜さんです。

インターンからREADYFORに入社して2年半。彼がこれまでキュレーターとして手がけてきたプロジェクトは、180件以上にのぼります。

実行者の「やりたいことを実現したい」という想いを叶えるため、二之方さんが思考し実行したムーブメントの起こし方とは……?

キュレーターとして大切にしている姿勢や、プロジェクトごとの関わり方について話を伺いました。

熱いパッションを持った人と働きたい

――ニ之方さんは学生時代からREADYFORでインターンとして働き始めました。そのきっかけから教えていただけますか。

大学の先輩の知り合いにREADYFORで働いている方がいて、紹介されたのがはじまりです。大学時代、サッカーを通じてカンボジアに国際協力をする学生団体に所属していたんです。そこで、カンボジアでサッカーの試合をパブリックビューイングするという企画があり、その資金集めとしてクラウドファンディングを立ち上げました。

カンボジアの公共の場に大型スクリーンを設置し、みんなでサッカーの試合を観戦する試みですから、支援する日本の方たちには直接のメリットはないはずです。それでも、100万円以上の支援が集まりプロジェクトは成功。そのときの「クラウドファンディングって面白いな」という想いが、READYFORでのインターンにつながりました。

――インターンからそのままREADYFORに就職することを決めたのでしょうか?

実はインターンと並行して就職活動を行い、人材紹介企業からキャリアアドバイザーとして内定をいただいていたので、すごく悩んだんです。

僕は、何かに熱中し打ち込んでいる、パッションを持った人にすごく魅力を感じるんです。そういう人と一緒に働きたい。READYFORでインターンを経験してその想いを強くしました。

キャリアアドバイザーも、誰かの人生に向き合うことができる仕事ですが、内定先の人たちと話をするうちに、「その人がどうしたいかを考えるところからスタートする」と感じました。掘り下げていくと僕は、「こう社会を変えていきたい」「こういうことを実現したい」とすでに自分のやりたいことが決まっている人に寄り添いたいんだ、ということに気づいたんです。

やりたいことに対して熱意がある実行者さんをサポートできるキュレーターという仕事が、ぴったり重なると思い、READYFORに入社しました。インターンでともに働いた熱いパッションを持っているメンバーの存在も一つの大きな決め手になりました。

多くの人に届けるためのシンプルでわかりやすいページ設計

――ここからは具体的なプロジェクトを例に、キュレーターの仕事について聞かせてください。

はい。以前僕が担当した「JETBOOK作戦」というプロジェクトを例にお話しますね。児童養護施設にいる子どもたちに、支援者がこれまで出会った本の中で最高の一冊をメッセージと一緒に届けるというプロジェクトです。

このプロジェクトの実行者さんは、3,000万という目標金額に加え、1万人という支援者の数に強いこだわりを持っていました。ただ、「支援者1万人」は簡単に達成できるものではありません。たとえばサポーターが多いサッカーの大手クラブチームさんのクラウドファンディングでようやく届くか届かないかぐらいの高い目標です。

――そうしたハードルがある中、プロジェクトを成功に導くために、どんな戦略を立てて、実行していったのでしょう?

大きく2つ、①プロジェクトページの設計と、②スタートダッシュにこだわりました。

まず、プロジェクトページは、支援完了までの導線をできる限り簡潔に設計しました。より多くの人に支援してもらう必要があるので、途中で読むのをやめてしまう離脱を避けるために、わかりやすくシンプルにすることを重視したんです。

たとえば、通常支援する際に入力する住所などの項目はショートカットし、名前とメールアドレスだけで支援を完了できるように。また、JETBOOKは、子どもたちにどの本を送るかを選べるプロジェクトなのですが、支援の申し込み時に本を選ぶと、ステップが増えて離脱の可能性が高まると思っため、そうしたやり取りは支援完了後に、READYFOR上のメッセージ機能からアンケートフォームを送ることにしました。

支援のお礼となるリターンも複雑で選択肢が多いと、迷いが生じてしまうことがあるので、「あなたの人生で出会った最高の本を子どもたちに贈ることができる」という一択にして、支援金額に応じて届けられる子どもたちの人数が増えるというシンプルな設計にしました。

――なるほど!プロジェクトページの導線やリターンの設計という準備段階でも入念な計画が練られているのですね。

ムーブメントの火種は「初動」にある

――二つ目のスタートダッシュについてはどうでしょう?

どのプロジェクトもそうなのですが、「クラウドファンディングやってます」というだけでは、話題にはなりません。プロジェクトの内容はもちろん、支援者数や達成率といった反響の大きさなど、“動き”が目に見えてはじめて、SNSでの拡散やウェブメディアでの記事化、テレビ取材の申し込みなど、波及するようにムーブメントが起こっていきます。

そうしたムーブメントの火種は、プロジェクト公開直後、とりわけ最初の5日の動きにあると思っています。

今回のプロジェクトでは、いいスタートダッシュが切れるように、発信して広く知ってもらうための3つの「地上戦」を実施しました。

一つ目は、プロジェクトの公開前に、ソーシャルグッド界隈で活動している影響力のある方々に、TwitterのDMやリプライで個別にプロジェクトの案内を送ること。

二つ目は、公開直後に実行者さん自身のTwitterのフォロワーさんに、個別のDMを送ること。実行者さんは、以前から小規模で同じ「JETBOOK作戦」を企画されていました。活動のつながりで当時2,000人ほどのフォロワーさんがいたため、その方たち全員にDMを送っていただいたんです。

三つ目は、Twitter上で「#私の最高の人生の一冊」を教えてください、とプロジェクトに関連したハッシュタグを用意し、時間を決めて支援者さんや関係者の方々にリツイートを行ってもらうことです。

――なんと。Twitterのフォロワー2,000人以上に個別でDMを送るだけでも、骨が折れることだと思います。

そうですね。やはり実行者さんの強い想いがあってこそ、できることだと思います。僕らキュレーターは戦略を立てて提案をしますが、やるかどうか、できるかどうかは実行者さんの熱意と行動力によるところが大きいんです。

JETBOOK作戦を立ち上げた実行者さんご自身も、児童養護施設で育った方。1万人という数字にこだわったのは、児童養護施設で暮らす子どもたちがいるということを、もっと多くの人に知ってもらいたいという強い想いがあったからなんですね。

このプロジェクトを支援する人の数だけ、応援する人がいるんだ、と児童養護施設で暮らす子どもたちに伝えたいと、プロジェクトページでも思いの丈を綴ってくださいました。

――すばらしいですね。実際のプロジェクトへの反応はいかがでしたか?

実行者さんの熱意と行動力の甲斐あって、スタートから支援数がぐんと伸びました。READYFORのトップページにある「注目のプロジェクト」にも入ったため、多くの人の目に留まり支援につながりました。実行者さんへの取材も殺到し、Yahoo!のトップページに記事が掲載されたり、3回ほどNHKの番組内で放映されたりもしました。

実行者さんが個別にメッセージを送ることを出発点に、SNSでの拡散、マスメディアへの掲載と、大きくムーブメントが広がっていったと思います。

プロジェクトを通して、児童養護施設で暮らす社会的養護が必要な子どもたちの存在をより多くの人に伝えることもできた、と感じています。結果的に、プロジェクトが終了したいまでも、ソーシャルグッド界隈で「あのプロジェクトはよかったね」と話題になるような一つの成功事例になりました。

どんな人から誰に届けるのか。「人」を軸に考える

――多種多様なプロジェクトがある中で、キュレーターとしてどんな戦略を立てるかは、プロジェクトごとに変わってくるのでしょうか?

そうですね。実行者さんによって実現したいことも大事にしたいこともさまざまです。ご自身で文章を考えて発信したいという方もいれば、SNSでの発信に慣れていない方、手を動かす時間をつくるのが難しい方もいます。なので、プロジェクトの内容や実行者さんの状況によって、どんな戦略で動くのかを見極め、判断しています。

たとえば僕が担当した「地震の被害を受けた白石城を復旧するプロジェクト」では、実行者さんがお城の復旧作業を進めている状況で、多忙を極めていました。その最中にクラウドファンディングを立ち上げたため、できる限り実行者さんの負担を軽減すると同時に、一刻も早く復旧ができるようにスピードを重視しました。

――具体的には、どんなことをしたのでしょう?

まずは、プロジェクトページの文章作成は基本的に僕のほうで行い、実行者さんは確認するという流れにしました。リターンの設計は、相談をいただいた際にお城のグッズなど先方がお持ちの物をリスト化していただいていたので、それをもとにこちらで設定しました。

震災後直後の緊急支援の意味合いが強かったため、相談を受けてから4日後にプロジェクトを公開したんです。通常であれば、準備に平均で1ヶ月はかかります。当時、地震でお城にヒビが入ったという実行者さんのツイートがバズっていたので、熱が冷めないうちにクラウドファンディングを始動させようと必死でしたね。

――プロジェクト公開後、達成に向けてはどんな戦略で動いたのでしょう?

よりコアなファン層に、プロジェクトを知ってもらうこと意識しました。調べていくと、白石城はNHKの大河ドラマに出ていたり、有名な武将が関わっていたり、Twitterでbotを作るようなコアなファンがいらっしゃることがわかりました。Twitterでお城に関連するつぶやきをしているアカウントをリストアップし、実行者さんに個別にDMを送ってもらうようお願いをしたんですね。あとはプロジェクトのハッシュタグを決めて、関心を持った人や支援した人が情報を拡散しやすいようにしました。

――そのプロジェクトをどんな層に届け支援してもらうかによって、とる手段は変わってくるんですね。

はい。たとえば、実行者さんのお人柄やつながり支援が集まっていくような場合は、プロジェクトのページを実行者さんの想いを押し出した構成にして、広げ方もFacebookの友人一人ひとりにメッセージを送るかお電話しましょうと提案します。プロジェクトの内容や実行者さんによってさまざまですね。

実行者さんの実現したいことや想いに対して、最適なサポートの仕方をその都度設計するようにしています。

そのプロジェクトを実行するのはどんな人で、支援をしてくれるのはどんな人なのか。常に「人」ありきで考えるようにしていますね。

同じ船にのるプロジェクトメンバーのひとりとして

――最後の質問です。二之方さんにとって「READYFORのキュレーター」とは?

実行者さんのこうしたいという想いを、クラウドファンディングを通じてどうやったら実現できるかを考える仕事、ですかね。実行者さんにとって、クラウドファンディングは手段であって、目的はその先にあります。キュレーターとして僕も、実行者さんが向かっていく、クラウドファンディングの先を見据えていたんです。

どの実行者さんも、クラウドファンディングが成功するかどうか、やりたいことが実現できるのか、不安を抱えています。ときには無謀だと言われることがあるでしょう。だからこそ、近くで伴走する僕はキュレーターとして、実行者さんの想いを誰より肯定し、「できる前提」で関わっていたいんです。

実行者さんの不安を払拭し、プロジェクトを達成に導くために、必要な情報や戦略を打ち出していくキュレーターには、先回りして考える力は欠かせません。

クラウドファンディングはこうやって達成するもの、といった固定観念は持たないようにしていますが、ときには過去の成功例をもとに、「このプロジェクトであればこうしていくべきです」と、実行者さんを引っ張る力も必要です。

担当者とお客さんという関係性では、実行者さんに「こうしてください」とお願いする際にも遠慮がでてしまいます。そうではなく、キュレーターは「同じ船に乗るプロジェクトメンバー」です。プロジェクトの一員として、目標達成に必要なことを提案し続ける。実行者さんの想いを全肯定して、今後もパッションを持った「人」に伴走していきたいです。

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ニ之方 太喜 TAIKII NINOKATA
READYFORキュレーター / キュレーター事業部 /キュレーター / 准認定ファンドレイザー
法政大学/経営学部卒業。学生時代に、実行者としてクラウドファンディングに挑戦したことをきっかけに2016年にインターン生としてREADYFORにジョインし、2019年新卒で入社。NPO・NGOのプロジェクトを中心に地域活性や緊急災害支援、国際協力など幅広いジャンルのプロジェクトを担当。180件を超えるプロジェクトを担当し、調達金額は4.5億円超。


「クラウドファンディングムーブメントの裏側」の連載はこちら。

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text by サトウカエデ edit by 徳瑠里香

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