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企業がSDGsに取り組むには、事業の成長に直結させることが鍵。#READYFORSDGsConfereceレポート

2019年7月29日、READYFORは法人と団体をマッチングする新事業「READYFOR SDGs」をスタートしました!

READYFOR SDGsは、持続可能な開発目標=SGDs達成に向けた取り組みをする企業のパートナーシップを推進し、「社会の共創」を作り出すものです。

READYFOR SDGsの発表に伴い、同日、「READYFOR SDGs Conference 〜SDGs時代の企業のあり方と社会との共創〜」を開催。

第三部では、「企業におけるSDGs取組の現場と展望」と題して、パネルディスカッションを行いました。スピーカーは、オムロン株式会社執行役員井垣勉氏と大和リース株式会社取締役常務執行役員森内潤一氏、モデレーターは、READYFOR代表取締役CEO米良はるかが務めました。今回は、そのレポートをお届けします。

企業理念に沿って経営戦略にSDGsを取り込む

米良はるか(以下、米良):今回のテーマは「企業におけるSDGs取組の現場と展望」ですが、企業としてSDGsをどのように経営に取り入れていけばいいのかわからない、と感じている方も多いのではないでしょうか。

この第三部では、SDGsを活用して経営戦略を実践していらっしゃるオムロン株式会社執行役員の井垣勉様と、大和リース株式会社取締役常務執行役員の森内潤一様にお話をうかがい、ここにいらしている会場のみなさまがすぐに実践に移せるヒントを得られる時間にしたいと思います。

まずはお二方の会社紹介と、SDGsを経営にどのように組み込んでいらっしゃるかをお話いただけますでしょうか。

井垣勉氏(以下、井垣):オムロン株式会社の井垣です。事業内容としては、ヘルスケアの商品を広く知っていただけているかと思いますが、実は収益の8割以上を工場の制御機器が占めています。

弊社は「われわれの働きで われわれの生活を向上し よりよい社会をつくりましょう」を企業理念に掲げ、独自の技術を活用したイノベーションを通じて社会的課題の解決に取り組んでいます。

井垣:弊社はその理念を起点に、事業戦略とサステイナビリティの取り組みを一体化させて2017年度から2020年度までの4か年の中期経営計画を立てており、ここにSDGsを組み込んでいます

世界的にはESG投資(環境・社会・ガバナンスの観点で評価が高い会社に投資すること)が広がっており、その中で弊社の取り組みが社会から評価されてESGやサステナビリティを指標とした国内外のインデックスに組み入れられました。実際に投資家との対話においても、SDGsへの貢献も含めた非財務情報の開示が最近強く求められるようになっていると感じています。

森内潤一氏(以下、森内):大和リース株式会社の森内潤一です。弊社を含む大和ハウスグループは「『公の精神』と未来へ」というフレーズを掲げ、役職員全員が創業者精神を継承しております。

大和リースはグループの中でも2番目に古い会社で、1959年に創業し、4つの事業を展開しています。公民連携事業のPPPやPFI、仮設住宅などを手がける規格建築事業、カーリースや介護ロボットなどのリースを手がけるリーシングソリューション事業、緑化商材や太陽光発電事業を手がける環境緑化事業、そして商業施設の開発・運営を手がける流通建築リース事業がございます。流通建築リース事業では、大和リースが地域のNPOと協働してNPO法人を設立し、まちスポの愛称で地域の課題解決に向けた取り組みをしており、商業施設の価値向上を推進しています。

森内:私たちも2030年までにSDGsを物差しにして事業に取り組むべく、「VISION2030」と掲げた事業計画に17のうち11の目標を取り入れました。SDGsを追求することが事業の成長につながると考えています。

トップマネジメントが率先してSDGsの導入することが鍵

米良:2社ともに経営戦略の中心にSDGsを置いていらっしゃいますが、どのように取り組んでいけばいいのか、誰が取りまとめていくのか、疑問に感じていらっしゃる方も多いと思います。SDGs導入の経緯をうかがいたいです。

井垣:弊社は国連がSDGsを掲げた2015年の段階から、SDGsを中期経営戦略に盛り込む形で導入を決めました。10年計画を3年、3年、4年で分割したものを中期経営計画としていまして、2017年からスタートした中期経営計画はその最後の4年に当たるものです。

これを検討するに当たって、2020年までの10年計画をどのように達成するのかだけでなく、2030年までの次の10年における成長のシナリオを見据える必要があります。それを踏まえていかに中期経営計画を設計していくかを考えた際に、2030年までの国際目標であるSDGsと紐づけてストーリーを描くことがステークホルダーにとってわかりやすいと考えたんです。

米良:すぐにSDGsを導入する判断になったのでしょうか?

井垣:はい。創業時からのDNAとして事業を通じて社会的課題を解決して社会の発展に貢献することに注力してきました。その理念とSDGsが目指すものが合致していたので、社内からの抵抗もなく経営戦略に取り入れることがすぐに決まりました。

まずは、SDGsの17の目標の中から、オムロンの技術や商品・サービスを使って貢献できる領域を特定し、2030年を見据えた長期にわたるシナリオを描いています。その上で、現在の中期経営計画のゴールである2020年の段階で社会に対してどこまで価値を提供すべきなのか、バックキャストで設定したのが今回の中期経営計画です。

森内:誰が言い出すと一番速く物事が進むのかと言ったら、それはもちろん社長ですよね。SDGsと言っても、実はみなさんもすでに取り組んでいらっしゃることだと思います。事業を成長させて利益を出す、税金を払う、公共インフラを整備する。

弊社ではそのようなすでに取り組んでいることをどのような形で17の目標に結びつけ、事業にしていくのかが役員の間で課題に上がり、経営戦略への導入が決まりました。社会が変化したら、企業はステークホルダーに合わせて事業体を変える必要があると考えています。

米良:SDGsを達成するにあたって、短期のKPIや売り上げとは異なる長期の視点が必要になるかと思いますが、それぞれの取り組みをどのように評価されているのでしょうか。

井垣弊社はSDGsの推進に当たって、取締役会がオーナーシップを持っています。事業を推進する責任のある執行側が短期の業績達成だけを考えていないか、中長期の社会の視点で見たときに持続的な社会への価値提供とSDGsの達成に貢献する経営判断をしているか。これを監視・監督するのが、社会から選ばれた株主の代表で構成している取締役会の責任です。

具体的な進め方としては、今年度のサステイナビリティの取り組みの方針を取締役会が決めて執行側に伝え、執行側が事業と本社が取り組むべき課題を方針に従って実行します。そして、その実行状況を取締役会に報告する。その過程で、私たちがやっている取り組みは本当に社会にとって良いことなのか、頻繁にコミュニケーションしています。

SDGsの推進には、社外と社内両方のパートナーシップが重要

米良:今回のカンファレンスにおけるテーマの一つとして「パートナーシップ」を掲げていますが、パートナーと一緒に推進されていることはありますか?

井垣:我々の中期経営計画の事業とSDGsの達成も、外部とのパートナーシップを前提にしています。非常に大きな技術革新がおきている今、社会に対して持続的に価値を創出していくために、お客様や取引先の方、外部との連携を前提にした上で事業を推進することが必要です。

例えば京都府舞鶴市と提携して、弊社の事業を使って地方自治体が直面する課題をいかに解決できるかを検討しています。今後はこのモデルを横展開し、他の自治体ともパートナーシップを組んでソリューションを提供して、2030年に向けて一緒に課題を解決していく予定です。

米良:大和リース様も、地域を活性化するために尽力されていますよね。

森内:社会課題に対して弊社がご提供できる価値があったり解決するための事業にできたりする部分があれば、積極的に取り組んでいます。

弊社がNPOと協働で立ち上げたまちづくりスポットの話で言えば、地域や消費者と現地のNPOとの架け橋をつくるために設立しました。当然非営利なのですが、我々が関わることで商業施設を利用される方が増えて施設の価値が上がるのであれば、関わる意味があると思っています。

企業が一社で完結できる事業はもう存在しない。そこに関わる誰もが、その事業を推進する理由を見いだせることが重要ですね。

米良:SDGsを役員会や取締役会で推進すると決めても、事業に取り組むには社内からの理解も欠かせません。社内におけるパートナーシップ、社内においてSDGsの考え方を浸透させていくにはどうすれば良いとお考えでしょうか。

森内:例えば社員個人のボランティアであっても、会社として社会貢献になることにぜひ取り組んでほしいと考えていることを伝えるために、その成果を社内報やイントラネットで可視化しています。

成果の大きい小さいに関わらず、大和リースとして積極的にそのような取り組みを公表することで、社会課題の解決を目指す姿勢が会社の文化につながっていくのではないでしょうか。SDGsを掲げても、その実態をつくるのは現場の社員ですから。

井垣社内へのPRは重要ですよね。弊社ではトップマネジメントが社員とコミュニケーションをとる際に、経営計画だけでなく社会的な観点からはその事業にどのような意義があるのか、SDGsの達成に少しでも近づくのか、問いかけるようにしています。

森内さんがおっしゃったように、社員が腹落ちして自分ごととして取り組めないと、SDGsを掲げたところで絵に描いた餅になってしまいます。社員が最も重要なステークホルダーだと考えて、その上でコミュニケーションを検討しています

SDGsをきっかけに、企業理念ともう一度向き合う

米良:最後に、お二方から会場のみなさまにメッセージをお願いします。

井垣:私たち企業が目指すことは、いかに持続的に企業価値を向上していくか。SDGsは企業にとってリスク要因にも事業成長のための機会にもなり得る、重要な位置付けになっています。一つの部署だけでなく、全社の経営のレベルでコミットして取り組む姿勢が問われているのではないでしょうか。

森内:実は4年前に米良さんに「何かご一緒できないでしょうか」とご挨拶させていただき、今回「READYFOR SDGs」のスタートのタイミングで参画させていただけることを大変嬉しく思っています。第一回の参画で終わらせずに次のステップにつないで、私たちもクラウドファンディングによる事業展開やSDGsを通じた社会貢献していけることが楽しみです。

米良:今回印象的だったのは、お二方ともにスライドの最初に企業理念が入っていたことです。どの企業も理念を掲げ、その理念を信じる人が新しい価値を生んできた歴史があります。一方でここ最近は行き過ぎた資本主義によって、短期的な利益を少し目指しすぎた側面もあるのではないでしょうか。

その中で今こうしてSDGsが出てきたことをきっかけに、もともとあった企業理念を思い出して、事業を通じて社会に貢献していく時代になってきたのではないかと考えています。つまり、SDGsの内容はほとんどの企業さんにとってもしかしたら当たり前のことかもしれませんが、もともと大切にしていたことをあらためて見直して、SDGsへの貢献に向かってよりよい社会をつくっていきましょう。井垣様、森内様、ありがとうございました。

■登壇者プロフィール

井垣勉氏 オムロン株式会社 執行役員
オムロンのグローバルインベスター&ブランドコミュニケーション本部長として、世界117ヶ国で事業を展開するグループ150社のコミュニケーション活動を統括する。インベスターリレーション、シェアホルダーリレーション、パブリックリレーション、インターナルコミュニケーション、デジタルコミュニケーション、マーケティングコミュニケーション、ブランド戦略などの領域に責任を持つ。2017年4月から現職。早稲田大学商学部卒業。HFLP C(一橋大学財務リーダーシップ・プログラムC)修了。
森内潤一氏 大和リース株式会社 取締役 常務執行役員
1961年滋賀県大津市生まれ。1985年大和リース工商リース(株)(現大和リース㈱)店舗建築リース本部(現流通建築リース事業部)入社。2011年1月流通建築リース事業部長・4月執行役員就任。2013年取締役上席執行役員就任。2014年取締役常務執行役員就任。東日本大震災をきっかけに地域にもっと必要とされる施設を目指し、2012 年に飛騨高山で認定NPO法人ムラのミライと協働でNPO法人まちづくりスポット(通称まちスポ)を立ち上げ、共同代表理事就任。現在、全国各地の自社商業施設とまちスポを通じて、社会をとりまく様々な課題の解決と地域コミュニティの活性化に取り組む。
米良はるか READYFOR株式会社 代表取締役CEO
1987年生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業。2011年に日本初・国内最大級のクラウドファンディングサービス「Readyfor」の立ち上げを行い、2014年より株式会社化、代表取締役に就任。World Economic Forumグローバルシェイパーズ2011に選出、日本人史上最年少でダボス会議に参加。現在は首相官邸「人生100年時代構想会議」の議員や内閣官房「歴史的資源を活用した観光まちづくり推進室」専門家を務める。

私たちは、7月29日に発表したREADYFOR SDGs を通じて、企業、自治体、大学、個人・団体、様々なステークホルダーを結びつける架け橋の一つになれたらと思っています。一企業として、持続可能な社会の実現、SDGs達成に貢献できるように全力で取組んでいきます。

興味のある企業様はぜひREADYFORにお声がけください。団体・個人の方はぜひエントリーをお願いします。

また、READYFOR SDGsに関する記事も掲載中です。ぜひご覧ください。

text by 菊池百合子