ワクチンの安全性にストレス対処法。いつまで続くの? コロナ禍の不安と疑問に4人の専門家が答えます
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新型コロナウイルス感染症については、必ず1次情報として厚生労働省首相官邸のウェブサイトなど公的機関で発表されている発生状況やQ&A、相談窓口の情報もご確認ください。またコロナワクチンに関する情報は首相官邸のウェブサイトをご確認ください。※非常時のため、すべての関連記事に本注意書きを一時的に出しています。
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ワクチンの安全性にストレス対処法。いつまで続くの? コロナ禍の不安と疑問に4人の専門家が答えます

新型コロナウイルス感染症は、いまだ人々の生活や心に恐れや不安といった影を落としています。

この長期的な闘いを支えるべく、READYFORは公益財団法人東京コミュニティー財団と協同で、2020年4月に「新型コロナウイルス感染症:拡大防止活動基金」(コロナ基金)を設立。広く寄付を募ってきました(12月31日をもって終了)。

そして1月8日、約9ヶ月間走り続けたコロナ基金の助成報告もかねて、オンラインイベントを実施。第1部では、「どこまで続く新型コロナ、ワクチン?社会的影響は?」と題し、コロナ基金有志の会・専門家チームより4名の先生をお招きしました。

ワクチンの安全性と有効性はどうなの?
ストレスをどう対処したらいい?
「コロナの収束」とは、どのような状態を指すのか。

私たちが抱く不安や疑問に、医療や看護、災害支援の現場を知る専門家が答えます。

ワクチンの安全性と有効性は実際どうなの?

イベント開催前に参加者の方から寄せられた質問は約120通。その中で特に目立ったのが、ワクチンに対する疑問でした。ワクチンの有効性と安全性、そして、医療現場にいる先生方自身も打ちたいと思うか、という問いです。

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佐々木 淳先生(医療法人社団悠翔会理事長 医師)
筑波大学卒業後、三井記念病院に勤務。その後東京大学医学部附属病院消化器内科などを経て、2006年にMRCビルクリニックを設立。2008年、首都圏で在宅医療専門クリニックを展開する、医療法人社団悠翔会の理事長に就任。コロナ禍で在宅療養支援を継続している。

佐々木淳先生(以下、佐々木): ワクチンの有効性について、臨床試験では約95%の感染を防ぐという結果が出ています。この「感染を防ぐ」が、感染自体を予防するのか、もしくは感染しても重症化しないようになるのか、現段階でははっきりとわかっていません。しかし私は、少なくともワクチン接種で新型コロナの死亡率を大きく下げられるのでは、と期待しています。

安全性については、アメリカですでに200万人弱の接種が進んでいますが、重篤なアナフィラキシーショックの報告は20人に満たない状況です。これは、季節性インフルエンザなどのワクチンと比較して危険とは言えず、打つデメリットがメリットを明らかに上回るとも思えません。

ワクチンを打てる段階になれば、患者さんにおすすめする前に、私自身も打ちたいと思っています。

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モデレーター左下:市川 衛さん(READYFOR 室長/医療の「翻訳家」/広島大学医学部客員准教授)
東京大学医学部卒業後、医療・福祉・健康分野をメインに世界各地で取材を行う。16年スタンフォード大学客員研究員。

市川衛さん(以下、市川): ポルトガルでは接種後に亡くなった方がいたという報道もあり、打ちたいけれど心配だという声も寄せられましたが、小坂先生は感染症の専門家として安全性についてどのようにお考えですか?

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小坂 健先生(東北大学教授東北大学大学院歯学研究科国際歯科保健学分野 教授・医師 Wellbeing Community Designer)
東京大学大学院医学系研究科修了、国立感染症研究所・主任研究官、ハーバード大学公衆衛生大学院客員研究員(タケミフェロー)の後、厚生労働省老健局老人保健課・課長補佐を経て、現在は厚生労働省クラスター対策班の一員としてCOVID-19対策に関わる。

小坂建先生(以下、小坂): 新しい仕組みのワクチンですから、心配されるのも無理はありません。ただ現状わかっている限りでは安全性は高いと思っています。

子宮頸がんワクチン*もそうでしたが、ワクチンの副反応と接種後の病気や後遺症、死亡の因果関係をきっちり分けるのは難しい問題です。日本では年間100万人以上の方があらゆる死因で亡くなっています。高齢者を中心にワクチン接種が進むと、たまたま同時期に心筋梗塞や脳卒中になったなど「打ってなくても(別の原因で)亡くなったケース」を、メディアが「すべてワクチンの後遺症」として取り上げる可能性を心配しています。

*子宮頸癌を予防するHPVワクチンは、2013年に接種した人たちに副反応が出たのではないかと報じられたことをきっかけに厚生労働省が積極的勧奨を差し控えたため、接種する人が激減。その後、科学的な検証がなされて安全性が確認された後も、厚生労働省の積極的推奨は差し控えられまま、接種率低迷が続いています。

新型コロナウイルス感染症を「指定感染症」と認定し続ける必要性は?

次に目立った医療に関する質問は、新型コロナウイルスが認定されている「指定感染症」についてです。指定感染症とは、感染症法が定める八つのカテゴリーの一つで、国民を脅かす恐れのある新しい感染症が出現したときに政令で指定されます。

指定感染症になっているがゆえに、入院や追跡措置が必須となり、病院や保健所の医療リソースに負担をかけているのではないか、という質問が上がりました。

この点について、佐々木先生と小坂先生は、コミュニティ全体で感染者を減らさなければいけない状況であり、そのためには指定感染症であることが有効であると、医療現場からの目線で語りました。

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佐々木: 私は指定感染症から外さないほうがいいと思っています。

新型コロナはインフルエンザほど死者が多くないと言われますが、たとえば80歳以上の患者さんや基礎疾患を持つ方など、特定の人にとっては死亡率の高い病気です。リスクの低い人が、軽症や無症状だから大丈夫だろうと行動して感染が拡大すると、亡くなる方が増えます。そのため、やはりコミュニティ全体で感染者を減らしていかなければいけません。

もし指定感染症を外してしまったら、追跡調査や検査、入院や宿泊施設での療養などの費用に自己負担が発生してしまう。そうなると、早期発見がますます難しくなると懸念されます。

小坂: 私もまったく同じ意見です。現状で指定感染症から外す必要があるとは言えません。

医療費の問題のほか、感染率の高さや治療薬がないことから隔離が必要であったり、後遺症や死亡率など解明されていない実態があったり、新型コロナウイルスは人類がまだわかっていない部分があるわけです。しばらくは指定感染症を外さない、現状維持がいいと思っています。

コロナ禍でのストレスとの付き合い方

また、たくさんの質問が寄せられたのは、長期化するコロナ禍での生活上の注意についてです。特に多かったのが、ストレスへの対処方法。SNSやテレビを通じて、意見の分断、ぶつかり合っている様子を見ていると心が塞ぐといった声が聞かれました。

コロナ禍、不安を増長させない過ごし方について、被災地でのストレスコーピングに取り組んでいる原田奈穂子先生と、医療と介護の現場に携わる堀田聰子先生にお話いただきました。

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原田 奈穂子先生(宮崎大学医学部看護学科統合臨床看護科学講座精神看護学領域 教授 看護師・保健師)
William F. Conell School of Nurisng, Boston College doctoral course 修了。災害時のこころのケア(精神保健および心理社会的支援)の専門家。日本災害医学会評議員、宮崎県災害派遣精神医療チーム隊員、日本災害派遣医療チーム隊員。

原田奈穂子先生(以下、原田): 四六時中テレビを観たり、SNSでニュースを追いかけたり、そうした行動は安心するためにやっているつもりでも、逆に不安が増長してしまいます。

できるだけ専門家の方々やWHOの声明など、信頼の置ける情報リソースを決めてそれだけを追うこと、発言元がわからないような意見には慎重になって距離を置くこと。自分の心を守る行動を選択することが大事だと思います。

先が見えない中でのストレスに対しては、今できていることを再確認する習慣をおすすめしたいです。手洗いやマスク着用など基本の感染対策について、自分や周りにいる大切な人と確認し合う。ちゃんと対処することができているのであれば、お互いに感謝するなどポジティブなフィードバックを送り合う。そうした些細なことが、きっと心を落ち着かせてくれるはずです。

市川: 堀田先生からも、医療や介護の現場で、どんなストレス対処がなされているのか、教えていただけませんか?

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堀田 聰子先生(慶應義塾大学大学院健康マネジメント研究科教授)
京都大学法学部卒業後、東京大学社会科学研究所特任准教授等を経て現職。学生時代から自立生活を送る障害者の介助等に携わり、人と地域がもともと持つ力の回復・再生の手がかりを探りながら対話と活動、調査研究を続ける。

堀田聰子先生(以下、堀田): 感染症には3つの顔があると言われています。一つは疾病、もう一つは確立した治療がないなど見通しのなさからくる不安、そしてその不安から生まれる嫌悪や差別です。

原田先生がおっしゃるように、テレビをはじめメディアを通じてたくさんの情報に触れることは時に不要に不安をかきたてます。ヘルパーとしてそんな様子がみえるお宅に伺うときには、テレビを消しませんかとお話しします。

日常的に誰もがやりたいことを制限される状況が長く続いています。ぜひ、改めてご自身に「お疲れさま」と言ってあげてください。自分を労わることは、ケアの専門職でもやっているストレスとうまく付き合う方法のひとつです。テレビを消して、美味しいお茶でも淹れて、今自分が何を感じているのか見つめてみて、「よくやっているね」と自分で自分を認めてあげるのがいいと思います。

2回目の緊急非常事態宣言。これ以上、何をすればいいの?

イベント当日は、2回目の緊急非常事態宣言が1都3県に発令された翌日ということもあり、緊急非常事態宣言で果たしてコロナが収束するのかと、心配する声も聞かれました。

小坂: 非常に大事な宣言だと思います。ただ、インパクトが弱く、すぐさまみなさんが行動を変えられるようなメッセージとして届かなかったとも思います。

とはいえ、もちろん収束に向けた効果はあります。海外の知見によれば、実効再生産数*の低下には、飲食店の制限で1割ほど、教育機関の閉鎖や10人以上の集会制限で3割ほどの効果があると言われています。いま緊急非常事態宣言を受けて、飲食店の規制だけでなく企業や大学が対策を講じています。いろんな取り組みが行われれば、コロナ収束への相乗的な効果は十分に期待できます。

*実効再生産数とは、すでに感染が広がっている状況において、1人の感染者が次に平均で何人にうつすかを示す指標。

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佐々木: 高齢者や持病のある方の療養を行う私たちにとって、患者さんを感染から守ることはとても重要な仕事です。第三波では濃厚接触者が患者さんの中に出てきたこともあり、このタイミングで、緊急非常事態宣言が出されたのはありがたかったです。

ただ、非常事態宣言に込められたメッセージがきちんと伝わらないと、多くの人がライフスタイルを変えるのは難しいと思います。夜、お店が閉まっているからといって、複数人で集まって家で飲んでいてはコロナ収束への効果がなくなってしまう。感染を広げないよう、私たちがとるべき行動について伝えていくことが求められていると感じています。

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(イベント中に参加者から寄せられた質問)

市川: インフルエンザが消滅するくらい自粛と感染対策を頑張っている。これ以上何をすればいいの? この質問にはどのように答えますか?

小坂: それこそ9割の人は、大変な自粛生活を続けていると思います。そうした方は、これ以上何かしようとはせず、ぜひそのまま続けていただけましたら。

ただ、十分気をつけている人が、手の打ちようがないと無力感を抱くのも無理はありません。「自分が感染しない」という意識だけでは、自粛生活を続けられなくなると思うんです。「コミュニティで人に移さない」など他者の関係に想いを馳せていかないと、継続するのは厳しくなっていくと思います。

長引くほど、「自粛で〇〇をするな」という否定の側面から捉えるだけではなく、逆に「自粛だからこそできること」を探していく考えも必要になってくるのではないでしょうか。

心を守るためにできること

最後に、コロナの収束とはどのような状態を指すのか、そしてまだ続くであろう自粛の状況下で、心を落ち着かせるためにできることについて、4名の先生方からそれぞれお話いただきました。

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小坂: 新型コロナとはまだまだ長い付き合いが必要だと思っています。

ただ、いまインフルエンザで人が亡くなっても世間はそれほど心配しないですよね。同じように、新型コロナは存在しているけれど、メディアに取り上げられなくなり、みんなが話題にしなくなる状態が収束ではないでしょうか。その点では、ワクチンは大きな転機になると考えています。

一方で、こういう大変な状況の中にも、社会変革のチャンスがあります。今回のイベントのように、全国に散らばる先生方とオンラインで話せるのはコロナによって進んだ変化です。コロナは人と人とのコミュニケーションを分断します。だからこそ、どうやって人とつながっていくのかを考え、自分たちにできる行動を続ける必要があると思います。

佐々木: 小坂先生の言うように、新型コロナはいずれワクチンや治療薬の登場で危険性が下がり、それにより「新型」と呼ばれなくなり、社会的になんとなく許容されうる状況になるのではないかと思います。

人との接触、つながりによって感染するのが新型コロナの特徴です。だからこそ、我々は新しいコミュニケーションのかたちを考えていかなければいけません。感染症が減るだけではなく、収束に向かう期間で感染症に適合するように社会が変わっていく。変革のスイッチになるだろうと感じています。

堀田: クラスタ―が医学的には収束した介護事業所の後方支援をさせて頂いていると、さまざまな意味での「分断」に長く苦しんでおられるところがあります。誰もがいま、ここに、こうしていいと思える、そんな日がやってきたら収束といえるのかもしれません。

今だからこそ、電話でおしゃべりしたり手紙を書いたり、これまでとは違うコミュニケーションをとってみるのもいいと思います。仲間たちと、ケアの仕事をする私からあなたへ、手紙を届ける「ケアレター」というプロジェクトを始めています。気持ちを言葉にしてそっとおろすことは、時に心に落ち着きを与えてくれます。その言葉が、誰かの励みや「手当」、希望につながればと願っています。

原田: 収束をどう捉えるかについては、災害からのリカバリーと非常に似ています。1年で次のステップに進める方もいれば、5年10年とかかる方もいる。医療的に感染拡大が落ち着くことに加え、一人ひとりが心の安らかさやゆとりを取り戻して初めて、収束と言えるのではないかと思います。

心の安定については、堀田先生のおっしゃるように、私も大学の同級生と10年ぶりに連絡をとりました。電話や手紙で、細くなっていたつながりを太くする試みも、今後大切になっていくかと思います。

いま、いつまでコロナ禍が続くのか、誰もわからない状況にいます。そんな日々の中、個人がどうよりよく生きるのか、何が幸せかを考えることが大切です。

最後に、緊急時の心の安定のためには、衣食住の生活基盤の安定が欠かせません。だからこそ、コロナ基金に続き、新しく発足した「新型コロナウイルス感染症:いのちとこころを守るSOS基金」(コロナSOS基金)では、衣食住の維持が難しい方へのサポートを行っていきます。

経済悪化や社会的孤立に苦しむ人を支える人を、支えるために

1月6日、困窮家庭の支援や医療従事者のメンタルケアを行う団体への助成を目的とした「新型コロナウイルス感染症:いのちとこころを守るSOS基金」(コロナSOS基金)が始動しました。

長期化する新型コロナの対応で、資金難に陥っている支援団体は少なくありません。主な助成先と想定しているのは、医療・介護従事者の精神的ケアや子育て支援などを行う団体、そして経済的・社会的事情により困窮する人々への住まい・食事などを支援する取り組みです。

クラウドファンディング開始から約1ヶ月、2,500万円を超える支援が集まっていますが、READYFORが348団体に実施した調査によると、今後不足するであろう資金の総額は27億円。まだまだたくさんの方の協力が必要です。

新型コロナウイルスに苦しめられているのは、感染した人々だけではありません。最前線で命を守る医療・介護従事者や、経済的・社会的弱者。多くの人の「普通の日々」をあっという間に壊してしまうのが、長期化するコロナ禍の怖さです。

みなさまのご支援を、どうかよろしくお願いします。


text by サトウカエデ edit by 徳 瑠里香


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