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長期化するコロナ禍、今社会に必要な支援とは? 4つの支援団体と考える。

昨年4月に立ち上がり、9ヶ月間で約2万人以上から8.7億円の支援を集めた「新型コロナウイルス感染症:拡大防止活動基金」(コロナ基金)

その助成報告および最新現場レポートと題して、1月8日、オンラインイベントを実施しました。

第1部ではコロナ基金有志の会・専門家チームの先生方より、ワクチンの安全性と有効性、自粛生活でのストレスとの付き合い方についてお話いただきました。

続く第2部では、コロナ基金から助成を受けた153団体の中から、4つの団体をゲストにお招きしました。モデレーターはREADYFOR CEO米良はるかが務めました。

コロナ禍、どのような支援が立ち上がったのでしょうか。そしてこれからどのような支援が社会で必要となってくるのでしょうか。

社会で暮らす人を守るために、行動を続ける支援現場の声をお届けします。

炊き出しを続け、住まいと仕事を失った人を支える、抱樸

はじめに、北九州市を中心に生活困窮者や社会から孤立状況にある人々へ支援を行う認定NPO法人抱樸(ほうぼく)の理事長・奥田知志さんより、炊き出しの現場からお話をうかがいました。

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奥田 知志さん(認定NPO法人抱樸理事長)
北九州市を中心に、生活困窮者や社会からの孤立状態にある人々の生活再建の支援を行う。雪の降る中、ホームレス状態にある人々に炊き出し等を行う支援現場からご参加いただいた。

奥田 知志さん(以下、奥田): 私たちが行っているのは、住まいと仕事を同時に失った方々に対して、即入居できる支援付き住宅の準備です。全国10都市・10団体に資金を振り分け、約130室のアパートを借り上げました。この資金には、コロナ基金からの助成に加え、私たちがREADYFORで行ったクラウドファンディングの支援金約1億円も含まれます。

支援付き住宅への資金提供を募ったクラウドファンディング。1万人以上から1億円以上の資金を集め、昨年7月に終了

現在、半数にあたる60室ほどが利用されています。支援の主な対象は、これまで会社の寮などに住み込みで働いていた方々です。仕事とセットになる住まいは、福利厚生の一環にあたります。そのため、雇用契約が切れた時点で住居から退去しなければいけません。

2020年10月時点で、前年同月に比べ非正規雇用の労働者が85万人減少しました。この数字には、多数の住み込み型就労をしていた人々が含まれています。

今、給付金や一時的な貸付金など国の支援制度がありますが、3月末ごろには終了する予定となっています。4月以降、さらに大勢の人々が困窮状態に陥るのではと非常に危惧しています。

私たちが行う炊き出しは、嵐でも雪でも中止にはなりません。なぜなら、ここにやってくる多くの方々は、経済的に困窮しているだけでなく社会的にも孤立したホームレス状態にあり、LINEや電話など通常の連絡手段ではつながれないケースもあるからです。そして、一番しんどいとき、苦しいときに、炊き出しに訪れる。その小さなつながりが、支援の土台となる信頼をつくります。

私たちはどんな状況でも活動をやめず、住まいと仕事を同時に失った方たちの受け皿となる体制を整えていきます。

母国に帰れなくなった外国人を支援する、多文化共生リソースセンター東海

次にお話をうかがったのは、特定非営利活動法人多文化共生リソースセンター東海の土井佳彦さんです。土井さんは、昨年3月下旬から4月にかけて、全世界的なロックダウンで飛行機の運休が相次ぐ中、母国へ帰れなくなった外国人の方々に対して支援を行ってきました。

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土井 佳彦さん(特定非営利活動法人多文化共生リソースセンター東海 代表理事)
愛知県名古屋市を中心に外国人との街づくりに取り組むNPO。コロナ禍で母国への帰国が困難となった外国人に対し、お寺をシェルターとして帰国までの生活支援を行う。

土井 佳彦さん(以下、土井さん): 私たちは、名古屋市にあるお寺をシェルターとして、コロナ禍で母国に帰れなくなった外国人の方々への生活支援を行ってきました。

先ほどの奥田さんの話にもあったように、仕事の契約が切れ会社の寮を追い出された方や、学校を卒業し学生寮を出なければいけなくなった留学生、観光で来日したものの帰国できなくなった外国人の方などが支援の対象です。

シェルターとして利用したのは、もともとは参拝者用につくられた宿泊施設です。助成をもとに必要な生活物資や食材、医薬品などを提供しました。私たちだけでなく、お寺の檀家さんや大学生のボランティア、民間NPOなど様々な人々の協力で支援が成り立っています。

支援を受けながら生活していた外国人の方々は、お寺の歩道の整備や修繕を行い、互いに助け合う様子が見られました。

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日本の仕事で身に着けた技術を利用して、境内に東屋を建てている様子

昨年の春からこれまで、合計140名の方がシェルターを利用し、約130名の方が無事に帰国しました。しかし、まだまだ母国に帰れない方がおり、新しく入居する方もいます。少しでも安全に過ごして帰国できるよう、支援を続けています。

最後に、支援を受けた方から届いたメッセージを紹介させていただきます。

「私は新型コロナウイルスの流行により、仕事も収入もなくなり、住む場所さえもなくなりました。幸運なことにみなさんから支援をいただいて、食事と安全な生活を手にすることができました。外国で生活しているのに、私たちのことを気にかけてくださる人がいて、とても嬉しかったです。私たちは日本人、日本社会から見捨てられていないことを実感しました。心から感謝します。今は早く帰国できる日を待っていますが、コロナ落ち着いたら、また日本に来たいです。皆様のご健康をお祈りします」

心の悩みを抱える人を支える「ゲートキーパー」への支援を行う、Light Ring.

次にご登壇いただいたのは、特定非営利活動法人Light Ring.の代表理事である石井綾華さんです。Light Ring.は、主に心の悩みを抱える人を支える、家族・友人・恋人といった近しい立場の人々に対して、必要とされるセルフケアやコミュニケーションのサポートを行っています。

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石井 綾華さん(特定非営利活動法人Light Ring.代表理事)
メンタルヘルスの社会課題解決のため、こころの病の一次予防に取り組む。具体的には、悩んでいる人を「支える人」へ、セルフケア、サポートスキル、コミュニティによるサポートを提供。

石井 綾華さん(以下、石井さん): あらためまして、コロナ基金にご支援いただいたみなさま、本当にありがとうございました。

私たちNPO法人Light Ring.は、10年間にわたり約1万4000名の、「死にたい」という身近な人を支える「ゲートキーパー」と呼ばれる方々への支援を行ってきました。

ゲートキーパーとは、自殺の危険を示すサインに気づき、適切な対応(悩んでいる人に気づき、声をかけ、話を聞いて、必要な支援につなげ、見守る)を図ることができる人のことを指します。
ゲートキーパー|自殺対策|厚生労働省

これまでは行政事業として教育機関に出向き、若者のためのゲートキーパー育成活動に取り組んできましたが、コロナ禍で実施が難しくなり、助成を活用しオンラインに切り替えました。

活動内容は、大きくわけて2つです。ひとつは、身近な人の悩みや無気力感、「死にたい」といった声を受け止める支え手への精神的負荷を減少させる取り組みです。認知行動療法をベースにセルフケアの方法を学ぶことで、ゲートキーパーが自分の感情をコントロールできるようにするための支援になります。

もうひとつは、ケーススタディーを通じた「支え方」に関する座談会です。身近な人から悩みを打ち明けられたとき、自分の発言や接し方は正しいのか、迷いながら相談に乗った経験を多くの方がお持ちです。

過去の経験を振り返りながら、他の方と体験を共有し合い、より良い支え方を考えていくケースカンファレンスを行いました。全6回、合計66名の方に全国各地からオンラインでご参加いただきました。

現在、新型コロナウイルス第3波により、社会で人には言えない悩みを抱える方がより増えるのではないかと懸念しています。

特に20代や19歳以下の未成年は、他の年代と比べ前年比の増加幅が著しい状況です。警察庁の自殺統計(速報値)による2020年1月~11月の自殺者数の速報値では、女性の自殺者増が顕著な上に、小中高生の自殺者数は同様の統計のある1980年以降で最多の440人であることが明らかになりました。

心の悩みを抱える人を、支える立場にある方への支援は、なかなか公的なサポートを得るのが難しい現状にあります。私たちは、今後もオンラインでゲートキーパーの育成事業に注力し、相談窓口を開設するなど、苦しんでいる方々を支える活動を続けていきたいと思います。

新型コロナウイルス感染からヘルパー(介護職)を守り、在宅療養者の在宅生活継続をサポートする会

最後にお話をうかがったのは、京都市を中心に活動を行う「新型コロナウイルス感染からヘルパー(介護職)を守り、在宅療養者の在宅生活継続をサポートする会」の代表、小林舞見さんです。

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小林 舞見さん(新型コロナウイルス感染からヘルパー(介護職)を守り、在宅療養者の在宅生活継続をサポートする会)
京都市北区を中心に、高齢者の自宅を訪問するヘルパーたちへコロナ感染対策のための技能・知識研修や支援を実施する。

小林 舞見さん(以下、小林): 私たちは、京都市北区の大宮・紫竹(しちく)・待鳳(たいほう)の3学区で活動するヘルパーに対して新型コロナウイルス感染対策支援を実施してきました。この地域では、合計303名のヘルパーが約1万人の高齢者の在宅医療介護サービスを支えています。

コロナ禍の状況把握のため、ヘルパーへ聞き取り調査を実施したところ、「必要なPPE(ガウン、フェイスシールド、ゴーグル等)を持っていない」「正しいガウンの着脱や後始末といった感染予防の知識・技術がない」といった問題が明らかになりました。

ヘルパーが新型コロナウイルスに感染し在宅訪問ができなくなれば、高齢者や障がい者の生活が立ち行かなくなります。私たちはこの問題を地域課題として位置付け、「指針を届ける」「知識・技術を届ける」「必要な防護具を届ける」という3つの柱をつくり、助成をもとに支援活動を行いました。

まず、現場が混乱せずに対応できるよう新型コロナに対応する業務フローや冊子を作成しました。次に、150人のヘルパーを対象にオンラインでの勉強会を開催。そして、ガウン等の器具が揃ったハイリスクセットを、地域で活動する303名のヘルパーに届けました。

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ガウンやゴーグルなど、現場で必要な防護具一式をセットにして配布した

ヘルパーを感染から守ることは、在宅療養者の生活を支えることになります。前線で活動するヘルパーへの支援を通じて、コロナ禍の介護現場を今後も支えていきたいと思います。

長期化するコロナ禍、社会にはどんな支援が必要とされるのか

新型コロナウイルス感染症が流行し始めてから約1年。コロナ禍が長期化することで今後、支援の現場にどのような影響が出てくると予想されるのでしょうか。それぞれの支援団体から聞かれたのは、社会が支援を必要とする度合いは深刻になり、より多くのサポートが求められるという声でした。

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奥田:  支援の現場では、日本の社会に「ストック」がなくなっていることを実感しています。仕事を失う、住まいを失う、何かあった瞬間、すぐに生活が成り立たなくなる。これまでギリギリの状態で暮らしてきた人々に、コロナの大きなしわ寄せがきている。社会格差や貧困が明らかに広がっていて、一層深刻になるのではと懸念しています。

こうした構造はリーマンショック以前から存在していました。それが、コロナ禍でより顕著になっています。逆に言えば今、本来あるべき社会を考えるチャンスでもあります。困窮する人への支援を付け焼刃的に実践するのではなく、一人ひとりが望む社会の姿を考えていければ、日本社会が大きく転換するのではという希望を持っています。

土井: 緊急非常事態宣言を受けて、コロナの影響は国境を超えて発生しています。今後、国内の感染が拡大すると、帰国困難に陥る外国人が増えるのではと懸念しています。ベトナムを例にとっても、大使館への帰国申請数が2万を超えると聞いています。

今回、コロナ基金より4ヶ月分の助成をいただきましたが、それでも足りず、追加で半年から1年ほどの長い支援が必要になることを覚悟しています。全国各地で支援活動を行えるよう、ネットワークを広げていきたいです。

石井: 貧困や虐待、性暴力といった悩みを抱える身近な人を支えている方が増えている印象です。私たちは、より専門性の高い団体との横の連携を広げ、専門家のサポートへつながりやすい支援体制をつくっていきたいと考えています。

小林: もし、このまま新型コロナの市中感染が拡大すれば、ヘルパーの事業所が機能しなくなる可能性があります。一つの事業所がダメになると、多くの方の生活が立ち行かなくなります。医師や看護師、地域の方々みんなで支え合いながらの取り組みが必要になってくるのだと思います。

支援する人を支える、コロナSOS基金

新型コロナウイルスの感染が拡大し長期化するほど、社会不安や困窮状況も広がっていきます。

READYFORが348の支援団体に実施した調査によると、今後不足するであろう活動資金の総額は27億円。

コロナ基金の意思を引継ぎ、新たに始動した「新型コロナウイルス感染症:いのちとこころを守るSOS基金」(コロナSOS基金)は、まだまだ必要となる困窮家庭の支援や医療従事者のメンタルケアを行う団体への助成を目的としています。

READYFORでは、社会で取り残される人が一人でも減る状況をつくっていきたいと考えています。一人ができる支援は小さくても、「誰かを助けたい」という気持ちが集まれば、大きな力になります。

ぜひ、みなさまのご支援をお願いします。


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