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継続寄付=継続告知。広報ツールとして継続寄付を活用する、ハナコプロジェクト

「私たちは継続寄付を、優れた広報ツールとして活用しているんです」

そう語るのは、保護された飼い主のいない犬と猫の医療費支援活動を行う、一般社団法人ハナコプロジェクトの代表理事・山田あかねさん。

飼い主のいない犬や猫の殺処分数は現在、年間2万匹以上にものぼります(環境省「犬・猫の引取り及び負傷動物等の収容並びに処分の状況」より)。そんな現状に対し、山田さんは2021年8月に俳優の石田ゆり子さんと共同でハナコプロジェクトを立ち上げ、2022年5月にクラウドファンディングを実施。

その後2022年11月より継続寄付のマンスリーサポーター制度を導入しました。

今回は、継続寄付の導入に踏み切った経緯や、READYFORを利用する理由、継続寄付が持つ可能性について、山田さんから詳しくお話を伺います。

シェルターがつくれないなら、自分たちにできることを

──初めに、ハナコプロジェクト(以下、ハナプロ)が立ち上がった経緯を教えていただけますか。

一般社団法人ハナコプロジェクト代表理事山田あかねさん

山田: 私は約10年間にわたり、作家や映画監督、TVディレクターとして、犬と猫の命をテーマに取材を重ねてきました。動物愛護センターや保護団体を取材していると、どうしても現場を手伝いたくなってくるんです。自分の目の前で、動物たちが死んでいくわけですから。

「取材するだけでいいのか?」「実際に何かやれないだろうか?」という思いが強くなる一方で、取材をしているからこそ、実際にシェルターを運営することがどれほど大変なのかもわかっていて。だからこそ、安易に手を出してはいけないとも思い、長い間葛藤していたんです。

──そんな折に、俳優の石田ゆり子さんとの出会いがあったんですね。

山田: 私が監督を務めた映画『犬に名前をつける日』をゆり子さんが観てくださったのをきっかけにご縁ができ、彼女も動物に対して強い思いを持っていることを知りました。それから、多頭飼育崩壊についてのドキュメンタリー番組のナレーションをお願いするなどして交流を深めるなかで、飼い主のいない犬や猫に対する問題意識を深く共有するようになったんです。

でも、ゆり子さんは俳優という本業があるし、私も今の仕事を続けたいので、シェルターを建てて運営するのはどうしても難しくて。何か別の方法で、自分たちにできることはないかと話していました。

──その末に、「保護された犬や猫に対する医療費を支援する」という選択にたどり着いたと。

ハナコプロジェクトのしくみ

山田: 参考にしたのは、取材で訪れたイギリスの仕組みです。イギリスではほとんどの動物病院で、飼い主のいない動物は、割引価格あるいは無料で医療を受けられます。そしてその仕組みはすべて、寄付によって支えられているんです。そのシステムを真似できないかという話になったのですが、仕組みづくりにかかる資金が大きな課題でした。

そんな時にゆり子さんが、一緒に暮らす動物たちとの日々を描いたエッセイ本『ハニオ日記』を出版し、印税のすべてを保護犬・保護猫のために寄付すると宣言してくれて。結果的にハニオ日記はベストセラーとなり、その印税を元手に、ハナプロが始動することになったんです。

イギリスの保護施設にて

1万2,000人から8,000万円が集まったクラウドファンディング

──その後ハナプロでは、READYFORで単発のクラウドファンディングを実施されています。クラウドファンディングに挑戦しようと思ったのはどうしてだったんですか?

山田: ゆり子さんの印税という資金源は得たものの、彼女のお金だけに頼って事業を運営していくのは申し訳ないし、サステナブルでもないので、もっと広く寄付を募ろうと考えていました。そこで、お金を集めやすく、プロジェクトを広く知ってもらうきっかけにもなるクラウドファンディングを実施することにしたんです。

かつて映画制作の際にもクラウドファンディングで資金を集めた経験があるのですが、その際に支援者の方々が、ただお金を提供してくださるだけでなく、非常に温かい言葉をくださったのがとても印象的で。そうした応援が大きな力になったので、今回もクラウドファンディングをするのがいいのではないかと思いましたね。

──そしてクラウドファンディングのスタートから1日で、1000万円が集まりました……!

山田: こんなにご支援いただけるとは思っていなかったので、本当に驚きました。プロジェクトの告知も、最低限しか行っていなかったので。

俳優であるゆり子さんと共にやるプロジェクトですから、メディアで大々的に宣伝すれば人やお金も集まるだろうけれど、そうしたやり方は、私もゆり子さんも控えたかった。本当に共感して、応援したいと思ってくれる人たちに着実にプロジェクトの情報を届けたいと思っていました。

そのためメンバーのSNSなど、最低限のチャネルだけで告知を行ったのですが、ゆり子さんはフォロワー数が多いので、想像以上の反響があって。最終的には、1万2,000人もの方から8,000万円を超える支援が集まりました。本当に有難かったですが、同時に集まったお金に対する大きな責任感も感じましたね。

──大きな金額ですよね。山田さんは以前にもクラウドファンディングのご経験があったとのことですが、今回改めて感じた可能性みたいなものもあったんでしょうか。

山田: 支援してくださった方の中には、「動物保護に対して支援をするのは今回が初めて」という方も多かったんです。クラウドファンディングは、今まではそうした課題に興味がなかった人たちにまで、課題の存在やそれに対する取り組みについての情報を届けられるツールなのだなと、その時に実感しましたね。

──集まったお金はどのように活用されたんでしょう。

山田: 想像以上の額が集まったので、一つの病院に対する支援額と、提携する病院の数の両方を、当初の予定よりも増やすことができました。当初は毎月5万円を10ヶ所の病院にお渡しする予定でしたが、支援額を毎月10万円に増額し、新規協力病院も、クラウドファンディング終了後から半年で1~2軒のペースで増やすことができています。これにより、助けられる犬と猫の数も倍以上に増えました。

保護された犬と猫

継続寄付は優れた広報ツールであり、活動の励み

──一方で、そうして病院に対して毎月支援を行う場合、資金も継続的に集める必要がありますよね。継続寄付をスタートしたのも、そうした背景からでしょうか。

山田: そうですね。ゆり子さんは、今後もハニオ日記の印税は全てハナプロに入れると言ってくれていますが、やはり彼女だけに頼るわけにはいかないので。また、実はクラウドファンディングのサポーターの方から「継続寄付もやってほしい」という声を多数いただいていたんです。それもあって、継続寄付の募集に踏み切りました。

──継続寄付を始めるにあたって、以前のクラウドファンディングからアップデートしたことはありますか?

山田: 継続寄付では、支援のリターンをメールマガジンにしました。クラウドファンディングの際は、シールやサイン本など形あるものを主たるリターンにしていたのですが、支援してくださった方の数が多い分、住所の入力ミスなどの理由で、届かない方がどうしても1~2%ほど出てきてしまったんです。

私としては、支援してくださった方には必ずリターンを届けたいと思っていたので、今回はより確実にお届けできるものとして、メールマガジンをリターンにしました。また、ハナプロのスタッフは私も含めてメディア系の仕事をしている人が多いので、サポーターの方に価値あるリターンを届けるためにも、自分たちの得意分野を生かせるものにしようという話もありました。

メルマガでは、協力病院やハナプロを利用した保護犬猫の取材記事をお届けするほか、ゆり子さんのエッセイの掲載や、ハナプロのサポーター同士が繋がるような仕掛けも検討中です。ただ感謝を伝えるだけではなく、本当に読み応えのあるものを届けようということで、現在鋭意制作しています。

──リターンをしっかり価値あるものにすることは、サポーターへの感謝を伝えることはもちろん、広く寄付に興味を持ってもらうきっかけにもなりますよね。まだ始まったばかりではありますが、継続寄付の価値はどんなところに感じられていますか。

山田:継続寄付を行うことはすなわち、継続して告知をすることでもあるので、広報としての価値が大いにあると思っています。ホームページは基本的にサービスを利用しようとする人たちの多くがアクセスするものですが、継続寄付のページは、READYFORのプラットフォーム上での回遊や、SNSなどでの支援の呼びかけなどを通じて、プロジェクトとは直接関係のない人にまで情報が届きやすいと思うんです。

そして多くの支援が集まった場合はニュースにもなるので、それを機にさらに情報が広がることも期待できます。そうした意味で、継続寄付は優れた広報ツールだと言えると思いますね。

もちろん、活動の励みになるのも大きな価値だと感じています。毎月これだけの人たちが応援してくださっているのだから、もっと頑張ろうという気持ちになりますね。

──ちなみに今回、継続寄付でもREADYFORを使おうと思ってくださったのは、どうしてだったんでしょう。

山田: クラウドファンディングの際に私たちのプロジェクトを担当してくれたキュレーター、杉本さんがとても良かったからです。事務局メンバーとも話し合ったのですが、それぞれ忙しくて思うように動けないときもあるので、「頼りになる人がいるところでやっていこう」という話になり、引き続きREADYFORを使わせてもらうことになりました。

杉本さんにはわがままもたくさん聞いていただいて、いい信頼関係を構築できたと感じています。「こんなことになってしまったけど、どうしよう!」と真夜中に連絡をしたり、「すみません、杉本さんこれできますか?」と無茶なことをお願いしてこともあったのですが、色々な面で力になっていただき、本当に助かりました。

実は自分たちで寄付システムを構築する案も出ていたのですが、構築には結構な額がかかることが分かったんです。そのため、READYFOR継続寄付という既にあるシステムを使わせてもらった方が経済的だから、という理由もありましたね。

──手厚いサポートとコストパフォーマンスが魅力だったんですね。

山田: 機能面での使いやすさも魅力だと思います。今回リターンにしているメルマガも、READYFORの「新着情報の限定公開機能」を活用することにしていて。写真も入れられるし、使い勝手がいいんです。

私たちは前回のクラウドファンディングでも、リターンとしてメルマガの配信を行ったのですが、その際は外部のメール会社と契約して配信を行いました。しかしそこでも、やはり「届かない問題」が発生してしまったんです。

一方、READYFORの新着情報は、サポーターの方にページにアクセスいただいて読んでもらうものなので、全員に確実に届けることができる。「届かない問題」の解決は悲願だったので、本当に嬉しいですね。というわけで、これからも機能の充実、よろしくお願いします(笑)。

実行者も支援者も、無理ない範囲でできることを一つずつ

──最後に、支援してくださる方に伝えたいメッセージがあればお願いします。

山田: 一番お伝えしたいのは、「ご支援は、無理のない範囲でしていただければいい」ということです。私たち自身も、自分たちが潰れてしまうことのないように、無理をせずにできる範囲を着実にやっていくことを大切にしています。そのためサポーターの皆さんも、今余裕がないようであれば、本当にお気持ちだけで十分なんです。

私たちがリターンでお送りするメルマガのタイトルは、「ハナプロ通信 one by one」です。one by oneはゆり子さんの命名で、一つずつ、ていねいに進めていこうという思いが 込められています。話題性やインパクトを目標に据えるのではなく、自分たちができることを一つずつやる。スピードはゆっくりかもしれませんが、温かく見守っていただけると嬉しいです。

山田あかねさん
東京生まれ。作家、映画監督、TVディレクター、脚本家として多くの作品を制作。主な作品に、映画『すべては海になる』、小説『ベイビーシャワー』など。2011年より、犬と猫の命をテーマにした作品制作をスタートし、映画『犬に名前をつける日』を監督。多頭飼育崩壊を描いた『ザ・ノンフィクション 犬と猫の向こう側』で放送文化基金優秀賞、獣医師太田快作さんを描いた『ザ・ノンフィクション 花子と先生の18年』でNYフェスティバル2021銅賞を受賞。

text by 高野優海 edit by 徳 瑠里香

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