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クラウドファンディングで見えたサポーターとの絆。選手とともに闘うシンボルとなったギラヴァンツ北九州のビッグフラッグ

4ヵ月間に渡るリーグ公式戦の中断、無観客試合、人数制限。

2020年、4年ぶりにJ2復帰を果たしたギラヴァンツ北九州は、新型コロナウイルス感染症の拡大により厳しい状況に立たされました。その苦境を、クラブとサポーターがともに乗り越えるシンボルに、と制作されたのが、選手を応援する「ビッグフラッグ」です。

制作資金を募るため立ち上げたクラウドファンディングで、686人の支援者から集まった総額は1600万円以上。

プロジェクトを振り返り、「サポーターとの信頼関係を再確認できた」と語るギラヴァンツ北九州の事業本部副本部長・運営部長兼地域密着営業部長の北出尚大さんに、クラウドファンディングへの挑戦で得た気づきについてうかがいました。

聞き手:宇野大至( READYFOR スポーツ部門リードキュレーター)

みんなの応援をかたちにしたい。ビッグフラッグ制作の支援を募る

──今回のクラウドファンディングを立ち上げたきっかけはなんだったのでしょうか。

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(ギラヴァンツ北九州の北出尚大さん)

コロナ禍、「何かしらのかたちで選手の後押しができないか」と考えたのがはじまりです。

昨年は新型コロナウイルスの影響で2月の開幕戦以降、Jリーグが4ヵ月中断しました。もし再開できたとしても、無観客試合や人数制限のような、これまで経験したことのない“非常事態”が続くのではないか。試合会場で直接届けることができないみんなの応援の気持ちをかたちにしたいと、クラブ職員も在宅勤務となる中で企画を練りました。

ちょうどクラブがJリーグに加盟して10周年だったこともあり、節目となる年に、ビッグフラッグの制作費をクラウドファンディングで募ることにしました。

大半のJリーグクラブはビッグフラッグを応援席に掲げているのですが、ギランヴァンツ北九州は持っていなかったんですね。昨年2月の開幕戦で対戦相手のアビスパ福岡がビッグフラッグを2つ掲げていたこともあって、サポーターの間でも「つくりたい」という声が上がっていたんです。

──クラウドファンディングの達成を経て、完成したビッグフラッグの約2千席分のスタンドを覆う大きさは、圧巻ですね。

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クラブエンブレムに選手とサポーターの写真を1万枚使用し、モザイクアートを施しています。

試合の中断や外出自粛などコロナ禍、選手やサポーターがさまざまな想いを抱える中、クラブ主導で「みんなで一緒に乗り越える」というメッセージを打ち出せたのもよかったと思っています。

キュレーターは「想いの増幅装置」。開始41時間で決まったファーストゴール

──クラウドファンディングを実施するにあたってREADYFORを選んだのは、どのような理由からでしたか?

他のプラットフォームも検討した上で、プロジェクトを一番広く届けられると期待できたからです。ちょうど、鹿島アントラーズや浦和レッズがREADYFORでクラウドファンディングを公開したタイミングでした。Jリーグの先輩クラブが利用しているという点も、決断のポイントになりましたね。

──プロジェクトを進めていくにあたって、フルサポートプランでキュレーターがサポートさせていただきましたが、いかがでしたか?

丁寧なアドバイスをいただけて、終始安心感がありました。

たとえばリターンの設計では、こちらが想定していなかった高額枠を設けることを提案してくれました。結果的に、30万円と50万円の枠でお一人ずつ支援をいただいています。とにかくキュレーターさんには、わからないことをその都度質問して教えてもらっていましたね。

最初のヒアリングでは、私が一方的に取り留めなく想いを語ってしまったのですが……(笑)。その想いをしっかりプロジェクトページに落とし込んでいただき、ありがたかったです。

──僕たちキュレーターとしては、熱い想いをたくさん伝えてくださるのは大歓迎です。実行者さんの情熱を引き出し、整理してサポートする「想いの増幅装置」として動くのがキュレーターの役割ですからね。実行にあたっては、どんな点を意識されていましたか?

一つは、情報リリースのタイミングと届け方です。有観客となった7月15日の京都サンガ戦で、17時の開場時間に合わせて会場の大型モニターに映し出して情報を開示。あわせてTwitterなどでも発信し、より多くのサポーターの目に触れるよう工夫しました。

もう一つは、支援者へのコメント返信です。なるべく紋切型にならないよう、サポーターの顔を思い浮かべながら、一人ひとりお返事をしました。

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(応援コメント欄での返信の一部)

──686件の応援コメントすべてに丁寧に返信されていますよね。クラブの誠実さが伝わってきます。

クラブ職員の一人が「自分も関わりたい」と名乗り出てくれました。お一人お一人への返信は相当大変だったと思いますが、その想いがこれだけ多くのご支援をいただけた要因の一つなのだと思っています。

正直、どれだけ支援が集まるのか不安で仕方なかったです。公開後も何度もページを確認してしまいました。開始41時間でビッグフラッグの制作費となるファーストゴールに到達し、小さな積み重ねがつながったと感じました。

クラウドファンディングを通じて見えたサポーターとの絆

──公開直後から良い反応を得られた一方で、苦労した点はありますか?

リターンの設計ですかね。支援のお礼にお渡しするエコバックなどのグッズは、まずは予算と品質のバランスを考え、複数の見積もりを検討して制作。返礼品として何を受け取ると喜んでいただけるかという点も意識して取り組みました。

──はじめてのクラウドファンディングを終えて、どのような気づきがあったのでしょうか。

サポーターとクラブの絆を、再確認する機会になったと思います。終わったあとも、試合会場でサポーターの方々から「クラブを応援する企画をありがとう」と言っていただきました。

公開前はファーストゴールの250万円でさえ集まるのか心配でした。公開して、あれよあれよと支援人数が増え、1000万円を超えたときは社長の玉井と喜びを分かち合いました。社長もプロジェクトページをチェックしてくれていて、この企画を広げるためにさまざまなサポートをしてくれました。

これだけの支援を得られたのは、サポーターとの信頼関係があってこそだと思います。Jリーグが中断したあとすぐ、早い段階から行動を起こせたこと点も、サポーターから支持を得られた一因だと感じます。

我々クラブの売上の約半分が入場料・物販収入です。それらが途絶えてしまったコロナ禍、経済基盤が揺らぐ中で多くの方から支援をいただき、職員一同、サポーターの大切さをあらためて実感しました。

──サポーターの想いが乗ったお金が集まったんですね。

ファン・サポーター、クラブを応援してくださるみなさまの応援、そしてREADYFORのキュレータさんの伴走のおかげで大成功となりました。本当に感謝しています。

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サポーターと協働してつくり上げるプロジェクト

──今後またクラウドファンディングに挑戦してみたいと思われますか?

新たな企画や事業で大きな資金が必要なときに、利用できたらと考えています。今回1600万円の支援をいただき、クラウドファンディングの可能性を実感しました。

サポーターから支援を募る以上、少額のクラウドファンディングを頻発したくはありません。クラブとして、一人ひとりの想いを大切に向き合わなければいけないと思っています。

クラウドファンディングは、みなさんからの支援が集まり、想いが”かたち”となって、クラブに残せるものがいいですね。今回制作したビッグフラッグも、サポーターが応援するためのアイテム。サポーターと協働できる大きな事業を行うときに、またクラウドファンディングに挑戦したいと思います。

──想いをかたちにするお金や応援してくれる人を集める一つの手段として、クラウドファンディングを選んでいただける、ということですね。

はい。ギラヴァンツ北九州は今、「With!! KITAKYUSHU ~SDGsプロジェクト2021」という取り組みを進めています。第一弾としては、不要になったサッカー用品を集め世界の子どもたちへプレゼントします。

今後は、農業を通じたアカデミー選手と子どもたちのふれあい体験など、社会教育的な取り組みも予定しています。ホームタウンに根差すクラブとして、地域社会への貢献を意識し、盛り上げていきたいですね。

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ギランヴァンツ北九州
福岡県北九州市をホームタウンとする日本プロサッカーリーグ(Jリーグ)に加盟するプロサッカークラブ。北九州市周辺の6市11町と、地域の活性化等を目的とした「フレンドリータウン協定」を結ぶ。「ギラヴァンツ」(Giravanz)はイタリア語で『ひまわり(北九州市の市花)』の”Girasole"と、『前進する』という意味の "Avanzare"を組み合わせた造語。

ギラヴァンツ北九州のクラウドファンディングをはじめ、READYFORではスポーツ専門チームのサポートのもと、スポーツ分野を応援するプロジェクトを数多く立ち上げています。

もしREADYFORで何かできることがあるか検討されている方がいらしたら、ぜひお気軽にご連絡ください。READYFORだからこそできるお手伝いを実現できたら嬉しいです。

プロジェクトを実行してみたいという方は、気軽にREADYFORの窓口までご相談ください。

あるいは、スポーツ関連のプロジェクトの専任担当者まで直接ご連絡ください。

READYFOR キュレーター事業部 スポーツ部門リードキュレーター
宇野大至宛/taishi.uno@readyfor.jp
text by サトウカエデ edit by 徳 瑠里香

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