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意思ある消費者とマーケットを育む。ナガオカケンメイがクラウドファンディングを続ける理由

意思ある消費者と一緒に、マーケットをつくりたい。

その思いで立ち上げたクラウドファンディングのプロジェクトを、2回とも達成した人がいます。「D&DEPARTMENT PROJECT(ディアンドデパートメントプロジェクト)」のナガオカケンメイさんです。

ナガオカさんは1回目に雑誌の製作サポート、2回目にラジオの運営資金のために、READYFORを使ってクラウドファンディングにチャレンジ。合わせて1,000万円を超える支援が集まりました。

1回目を経て、2回目は自分らしくクラウドファンディングに臨めた、と話すナガオカさん。その横でナガオカさんの頭のなかをひもといて達成をサポートしたのが、READYFORで「キュレーター」を務める廣安ゆきみです。

クラウドファンディングによって、物事を始める資金だけでなく何を得られるのか。二人の対談から考えてみましょう。

消費者への問いかけを込めたクラウドファンディング

ナガオカケンメイさんが2000年に立ち上げた「D&DEPARTMENT PROJECT」は、「ロングライフデザイン」をテーマにした活動体です。

2000年の立ち上げと同時に路面店をオープンし、47都道府県のガイドブック、デザイン研究所、デザイン道の駅など、手段を増やしながら「ロングライフデザイン」を広める試みを続けています。

ナガオカさんの考える「ロングライフデザイン」とは、生産から消費まで物の背景を含めて、長く使っていける物のあり方のこと。しかしその考え方を届けるのは、容易ではありません。模索の過程で「相性がいいのではないか」とナガオカさんが考えたのが、クラウドファンディングでした。

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左:ナガオカケンメイさん、右:廣安ゆきみ

廣安ゆきみ(以下、廣安):クラウドファンディングには、実際に挑戦される前から興味を持っていらしたんですよね。

ナガオカケンメイさん(以下、ナガオカ):僕たちがテーマに掲げた「長く続いているその土地の素晴らしいこと」は、意思ある人の支援がなければ成り立たない。クラウドファンディングは、その人たちと一緒にマーケットをつくることと相性がいいのではないか、と考えたのがきっかけです。

廣安:ナガオカさんとは、READYFORもお手伝いしていたイベントでナガオカさんに登壇していただいたとき、初めてお会いしました。打ち上げで「やりたいことがある」とご相談いただいたのが印象に残っています。

ナガオカ:よく覚えているねえ。READYFORでは、シンプルにやりたいことをやるためのプロジェクトを立ち上げられるところがいいな、と思ったんです。

廣安:READYFORは、リターンでもらえる物そのものではなく、プロジェクトの実行者さんが思い描く世界の実現を支援したい方が多いプラットフォームだと思います。

ナガオカさんの場合、1回目のプロジェクトには消費の価値観への問いかけが込められていたので、READYFORに合っていると感じました。

クラウドファンディングの「お願い」にためらいはなかった

ナガオカさんにとって初めてのクラウドファンディングは、ロングライフデザインの考え方を掘り下げる雑誌『d news』の製作サポートを募集したプロジェクトでした。

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廣安:「プロジェクト期間中、毎日30人の知り合いに支援をお願いする」と宣言し、実行されていたのが印象的でした。

ナガオカ:最初は長文でメッセージを送っていたのだけれど、友だちにかしこまって「よろしくお願いいたします」なんて送るのは自分らしくないなと思って。途中からは、いつもどおり「よろしくね」とメッセージするようにしました。

廣安:ナガオカさんが毎日個別メッセージを送っていたとは、意外だと思う人もいるかもしれません。お願いしづらいと感じたり面倒だと思ったり、マイナスの感情はありませんでしたか?

ナガオカ:ちっとも。自分が取り組んでいることを改まって個人的に伝える機会も、なかなかないじゃないですか。ご無沙汰している方々にご挨拶できる、いい口実になりました。近況報告代わりに「実は最近、こんなことをやっていて」とメッセージできるので、一石二鳥だなと。

廣安:ああ、そのとおりですね。でも実行者さんのなかには、支援の呼びかけにためらいがある方もいらっしゃるかもしれません。

ナガオカ:だって、間違ったことをやっているつもりはないですから。クラウドファンディングは、僕が社会に対して「こうあったほうがいいよね」と思うことを提示するものだと思っています。だから、自分が実現したい世界を堂々と伝えて、嫌われたらそれはそれで仕方ない。

廣安:そう思えるようになったきっかけはありますか。

ナガオカ:クラウドファンディングではありませんが、僕も以前悔しい思いをしました。僕たちの店舗にピアノを置きたくて、「使っていないピアノをください」とSNSで呼びかけたんです。そしたら「ナガオカケンメイは自分でピアノも買えずに、他人にもらうのか」と批判されて。

落ち込みましたが、蓋を開けたら7台集まった。使われていないピアノを余らせていて、うちの店舗で使ってくれたらいいなと思う人が、実際にいる。同じ価値観を持つ人と一緒に、僕たちの思うマーケットを成立させていきたいな、と背中を押してもらいました。

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廣安:そうだったのですね。ナガオカさんのお願いメッセージの反響も大きく、3ヶ月間で315名から約686万円の支援が集まりました。

ナガオカ:このときのことをすごく覚えているんですよ。支援者の方へのお礼パーティーで、「僕は次に何をしたらいいですか」と聞かれたんです。今後も僕たちに関わりたいと思ってくれているんだ、と驚きました。

廣安:当事者意識を持っている支援者さんが多いですし、実行者さんが活動を継続するためには資金が必要です。私たちとしても、達成後も実行者と支援者をつなげられる仕組みを考えていきたいと思っています。

「D&DEPARTMENT PROJECT」では1回目のクラウドファンディングの後、雑誌『d news』から勉強会やツアーを開催する「ロングライフデザインの会」を発足されましたよね。実行者と支援者をつなぎ続ける取り組みとしておもしろいな、と思いました。

ナガオカ:僕たちも手探りで進めているので、支援者の方をロングライフデザインの会にうまく接続できている、とは言いきれません。ただ、クラウドファンディングを通じて僕たちの考え方に価値を感じる方が315人もいる、と知れたことが原動力になっているのは確かです。

廣安:活動の支えになっているとは、嬉しいです。

ナガオカ:僕たちの会社に合う方法だな、と実感しましたもん。例えば、「D&DEPARTMENT」の店舗。これだけ路面店の状況が厳しくなっているなかで、「こういう消費の場所がないよりは、あったほうがおもしろいね」と思う人がいなければ、存続自体が難しいんです。

でもクラウドファンディングであれば、「こういう消費のあり方が必要だ」と思う意識のある生活者と出会える。ここに希望を感じています。

その価値観を受け継いでいく価値があるのか

1回目のプロジェクトを終えてから約1年。ナガオカさんが、雑誌の次にプロジェクトを立ち上げたのはラジオでした。

ナガオカさんがFM京都で3年半にわたって続けてきたレギュラー番組「d&radio」。京都の老舗企業の社長や職人をゲストに招き、まさに「ロングライフデザイン」をたくさん持っている京都を掘り下げてきました。

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この「d&radio」が2019年度で打ち切りとなるかもしれない、と告げられたナガオカさん。時代に合わせたアプローチを考えないとラジオ自体が消えてしまうのではないか、と危機感を抱き、クラウドファンディングに挑戦します。

ナガオカ:2回目は、僕たちのやりたい方向性を廣安さんがすでに理解してくださっているので、すぐに「やりましょう」と話が進んでいきましたね。

廣安:深夜にメッセージいただいてその後すぐお会いして、どたばたでしたが(笑)、やりたいことを思いついたときにご連絡いただけるのは嬉しいです。

1回目と2回目ではナガオカさんの取り組み方が違うように感じたのですが、実際どうですか?

ナガオカ:2回目のほうが、結果をみなさんに委ねた感覚が強かったです。だから1回目と違って、あまり僕から個人に対して支援を呼びかけませんでした。

廣安:それにはどんな理由がありますか?

ナガオカ:僕の番組が続くか否かではなく、「ラジオって必要? 必要じゃない?」と広く社会に対して呼びかけたからです。

「D&DEPARTMENT」の店舗と一緒で、売上が下がったら必要とされなくなったということ。このプロジェクトに対しても、これが達成される社会であったらいいなと思いながら、達成されなければ仕方ないと考えていました。

廣安:でも私は、毎朝「達成する」と自分に言い聞かせてから出勤していましたよ(笑)。

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店舗を自分ごとにしてもらい、仲間を増やしていく

2回目のプロジェクトは、目標金額の300万円に対して、立ち上げから1ヶ月で96名の支援者から約408万円が集まりました。これはナガオカさんの問いかけに対して「ラジオが必要だ」と思う人が表明した意思でもあります。

廣安:この達成によって、これまでとは異なる雑誌やラジオのつくり方が可能なんだと実感しました。

ナガオカ:「d&radio」を放送しているラジオ局でも、これまでとは全く違うラジオの続け方に驚きの声があがっていました。僕たちのやりたいことをクラウドファンディングと組み合わせて、これからもさまざまな挑戦をしていけると思います。

例えば新店舗を出すときに、店舗を出す地域の方々に支援をお願いする。「そういうお店がこの地域に必要だ」と意思表明する行為なので、店舗が自分ごとになりますよね。だからリノベーションやお掃除をできるリターンを用意するのも、おもしろいかもしれない。

僕たちはこれからも、「こういう街をつくりましょう」と旗を掲げ、「関わりたい」と思っている人たちと一緒にロングライフデザインらしいマーケットをつくっていきたいですね。

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ナガオカケンメイ
デザイン活動家。2000年にロングライフデザインをテーマとした「D&DEPARTMENT PROJECT」をスタート。47都道府県に1か所ずつ拠点をつくりながら、物販・飲食・出版・観光などを通して、47の「個性」と「息の長い、その土地らしいデザイン」を見直し、全国に向けて紹介する活動を行う。
廣安ゆきみ(ひろやすゆきみ)
READYFOR アート部門 リードキュレーター。出版社勤務を経て、現職に。2018年 アート部門を立ち上げ、現在は主に芸術・文化に関わるクラウドファンディングプロジェクトを担当している。@mo_algae_ / Facebook
text by 菊池百合子 photo by 戸谷信博 edit by 徳瑠里香
ありがとう!
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「誰もがやりたいことを実現できる世の中をつくる」ことをビジョンに掲げるREADYFORのメディアです。READYFORに関わる人たちの「想い」を届けていきます。 http://corp.readyfor.jp/

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