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支援してくれる人と継続的な関係を育む。コミュニティの基盤となる「READYFOR 継続寄付」の可能性

「持続可能な組織体制をきずくためにも、支援をいただく方と継続的に関係を育んでいきたい」

そんな声にお応えすべく、2021年11月、READYFORは、「READYFOR 継続寄付」β版をリリースしました。NPO・医療機関などの社会的活動団体が、継続的に毎月寄付を募り、負担なく支援者情報を管理できるサービスです。

目的に合わせて、募集期間を区切らずにいつでも新しい継続寄付者を集める「常設 継続寄付」と、期間を決めて月額の継続寄付者を募る「マンスリーサポーターキャンペーン」のふたつのやり方から選択いただけます。

従来のクラウドファンディングに加えて、継続寄付機能をリリースすることで、「団体の資金調達を総合的にサポートするファンドレイジングサービス」へと進化していきたい。私たちREADYFORはそう考えています。

「継続寄付」は資金調達の手法として、どのような意義と可能性をもたらすのか。サービスリリースと同時に「READYFOR 継続寄付」の活用を始めた、一般社団法人 日本ラクロス協会理事の安西渉さんと、READYFOR CEO米良はるかが語り合いました。

社会的活動団体に伴走し、資金調達の選択肢をさらに広げていきたい


── まず、「READYFOR 継続寄付」サービスがスタートした背景から聞かせてください。

米良: これまでREADYFORが手がけてきたクラウドファンディングは、その仕組み上、募集の期間を区切ってお金を集める、いわば“単発型のプロジェクト”でした。終わりがあることがひとつの刺激となって注目が集まり、よりインパクトのある目標金額を達成できる利点がありました。

しかし以前から、NPO・医療機関などの社会的活動団体からは、一回で大きなお金を集めるのとは別に、毎月継続的に支援をいただけるような仕組みがほしいという声もいただいていたんです。

一方、READYFORは4年程前に資金調達を行い、エンジニアチームを拡大。現在は、CTOの町野をはじめ優秀なエンジニアやプロダクトを開発する人材が揃っています。つまり、継続的な寄付を管理していくツールをご提供できる体制が整いつつある。このタイミングで、社会的活動団体に深く伴走する際のファンドレイジングの選択肢をさらに広げていきたいと、「READYFOR 継続寄付」サービスをスタートさせました。

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(READYFOR CEO 米良はるか)

── 日本ラクロス協会さんは「READYFOR 継続寄付」の第一号としてマンスリーサポーターの獲得という新しい挑戦への一歩をふみだされています。どのような経緯で始められたのでしょうか。

安西: 日本ラクロス協会は2020年4月、READYFORでクラウドファンディングに初挑戦しました。公開3日目にして、当初の想定を大きく超える1000万円以上の支援が集まり、クラウドファンディングに大きな手応えを感じました。

何に対する手応えかというと、それだけ大きなお金が集まったこともそうですが、“ラクロスコミュニティの結束がより強まった”と感じられる体験ができたことに対してです。

担当してくれたREADYFORキュレーターの宇野さんはクラウドファンディングを「善意の可視化」だと言っていました。「クラウドファンディングはお金を集める装置ではなく、人の善意を見えるようにする装置だと思ってください」と。その言葉に、とても納得したんです。

ただ一方で、単発でクラウドファンディングを繰り返していくのは難しいとも感じて。善意の可視化であるがゆえに、失敗が許されないと思ったからです。もしも熟考することなくプロジェクトを始めて、未達成に終わってしまったら。私たち自身にエネルギーがなかったと、ラクロスコミュニティ全体が思ってしまうのではないかと危惧しました。

また、スポーツ協会には入会登録し会費を払うことで支援する「賛助会員」と呼ばれる制度があります。以前からこの賛助会員のような長期的な支援をいただけるコミュニティをつくりたいとも考えました。

しかし、スポーツ協会の賛助会員は都度払いのケースが多く、定期的に支援を集めるサービスを使っている例を知りませんでした。「継続的な支援が得られる良いシステムを、誰か知りませんか?」と呼びかけたところ、SNSでつながっていたREADYFORの方が「実は、継続寄付のシステムをつくろうとしているんです」と声をかけてくださったんです。

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(ラクロス協会理事 安西渉さん)

マイナースポーツで、継続寄付によるコミュニティづくりを推進する先駆者に

── 日本ラクロス協会さんが「READYFOR 継続寄付」に挑戦する意義については、どのように捉えていますか。

米良: 2020年に日本ラクロス協会さんがクラウドファンディングに挑戦して、継続寄付の基盤ができていたことがまず大きいと考えています。支援者は730名を超え、日本ラクロスを応援したいと思う方々が、確かに存在している。

同時に、そうした支援者に情報を届けられる。支援者はREADYFORに名前も住所もクレジットカード情報も登録していますから、毎月支援したいと思ったらワンクリックでできる環境があるんですね。

安西: 今後、スポーツ業界の資金調達を取り巻く環境は、かなり変わっていくだろうとみています。昔はスポーツはかなり特別な存在だったのですが、今は「さまざまな趣味や娯楽の中の一つ」という位置づけに変化しています。スポーツのライバルが、スポーツじゃなくなる時代になると思います。「企業がスポーツを支えてくれるはず」という風潮も、どんどんなくなっていくでしょう。スポーツ業界も、考え方を変えていく必要があると考えています。

特に、マイナースポーツではさらに事態は深刻です。だからこそメジャースポーツと同じ土俵で、マスに向けて宣伝していくのではなく、ラクロスならではの“質的な価値”を高める考え方を選びました。

私たちにとっての質的な価値が何かというと、“先進的”であることだと考えています。「日本ラクロス協会って、いつもおもしろいことをやっているよね」「他の競技がやっていないことに挑戦しているね」と思ってもらいたい。

この継続寄付の仕組みも、私たちが先陣を切って始め、試行錯誤や失敗も積み重ねて、ちゃんと成果を出し、先駆者になりたいと考えているんです。そしてそこで得た経験は包み隠さずお伝えしたい。

米良: 日本ラクロス協会さんの今回の挑戦が、マイナースポーツの資金調達の新たな成功モデルになることを期待しています。

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継続寄付の仕組みづくりは、支援者と共に“未来”をつくっていくこと

── マンスリーサポーターを募るにあたり、どのようなことを大切にされていますか。

安西: 私たちは、今回の継続寄付プロジェクトを「Japan Lacrosse Founders」と名づけています。「困っているから助けてください」ではなく、日本ラクロスの未来を見据え、「共同創設者になりませんか」と呼びかけているんです。

支援者との関係を、お金を払っていただく対価として何らかの物品を渡すという“取引”にしてしまうと、継続寄付は成立しない。これからの日本ラクロスを一緒につくる機会を手に入れられるといった“未来志向型”にすることが、とても大事だと思うんです。

一方で、「日本ラクロスを発展させよう」というスローガンだけでは、支援してくださる方の心を動かせないだろうとも感じていて。ちょっと言葉が大きすぎますよね。

マンスリーサポーターになってくださる方の動機は、もっと身近でバラエティに富んでいるはずなんです。「日本代表選手にがんばってほしい」とか、「子どもたちがラクロスを楽しめる場所を増やしたい」とか、「ラクロスがテレビに取りあげられるようになればいいのに」とか、「愛着のある地区を応援したい」とか。

だから今回は、さまざまな切り口のモチベーションに応えていけるように、支援金の使用用途を複数用意し、支援者に選んでいただく形式にしました。支援用途は一つだけ選択可能なのですが、驚くことにすべてのプランに、ほぼ同数の申し込みがあったんです。支援してくださる動機は、それだけ多様なのだと、あらためて感じました。

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(資金の使途が選べる4つのコース)

米良: この点もREADYFORのプラットフォームを使っていただくからこその意味があると感じます。どのような方が、何の用途を希望し、いくら支援してくださったかなどのデータを一元管理して見える化することによって、支援者の熱量の高さや心の動きが見えてくるわけですよね。

データやコメントを見ながら仮説検証して、プランを考えたり、新たな商品を開発したりすることができる。その結果、より良いお金の循環が生まれ、結果的に効率よくトップラインを上げていくことにもつながっていくはずです。支援してくださる方々にとっての“より良い体験”をどうつくっていくのかに向き合っていくことが、財政基盤づくりに直結します。

しかも、それはファンコミュニケーションの一環でもありますよね。関わってくださる方の「ラクロスが好き」という気持ちや、「ラクロスコミュニティの一員でいたい」という想いを継続的に育んでもらうためのコミュニケーション策をいかに打っていくか、ということですから。

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コミュニティに価値が生まれ、想いの乗ったお金が循環していく

── READYFORの継続寄付を中心に、協会側にとっても支援者側にとっても、想いの乗ったお金とともに、より良いコミュニケーションの循環が生まれるイメージですよね。

米良: クラウドファンディングの実行者さんが、再度、資金調達の必要性が出てきた際に、「2度、3度と支援を呼びかけるのは申し訳ない」とおっしゃることがあります。ただ反対に支援してくださる方に話を聞くと、「きちんとコミュニケーションがとれていれば違和感はない。むしろ、もっと貢献したい」という声があがるんですね。

いちばんもったいないのは、プロジェクトの終了後に支援してくださった方を放置してしまうこと。プロジェクトが終わってもコミュニケーションをとりつづけ、支援した結果やプロセスを見せていくことが大切です。

支援してもらったからこそ活動の幅が広ったり、前に進んだりしていることがきちんと伝われば、再び寄付の必要性が出てきたときにも、「また応援しよう」と思ってもらえます。支援者と一緒に育っていく実行者の姿勢が大切で、それをまさに体現しているのが、今回の継続寄付でもあるんですよね。

安西: そうですね。スポーツ協会を運営していて、時代と共に、協会とチーム、サポーターのあり方や関係性が少しずつ変化していると感じます。昔は、協会が用意したサービスをエンターテイメントとして提供し、それにサポーターがお金を払う構図が一般的でした。

しかし今、協会が用意すべきだと僕らが考えているのは、あくまでプラットフォーム。その場に、いかにチームやサポーターに加わってもらって、楽しんでもらうか。この考え方は、今回の継続寄付プロジェクトにも通じています。

私自身、READYFORがミッションとして掲げている「想いの乗ったお金の流れを増やす」という考え方が、すごく好きなんです。

お金は大事ですし、私たちが活動をしていくうえで欠かせないものなんですが、お金集めを目的にしてしまうと、なにか、いろいろなものが歪んでしまう気がしていて。大切なのは、お金自体には意味を持たせないことなのかなと。お金はあくまで手段であり、そこに想いが乗っていることに価値があるんだと、私自身も捉えています。

米良: コロナ禍になり、実は、READYFORを通じた支援金額は増えています。消費の仕方を含めて、お金に対する価値観もまた変わってきている。今はその潮目にあるのかなと見ています。

これまでは終身雇用で、ある程度決められたコミュニティの中で、自分の生活を豊かにするための消費が行われてきました。しかし所属するコミュニティも多様になり、「自分が大事にしている領域で挑戦している人を応援したい」「社会をより良くするためにお金を使いたい」と考える人が増えています。この流れは今後も続いていくでしょうし、自分自身の人生を豊かにしてくれるサードプレイスをつくってくれるコミュニティに価値が生まれ、お金が循環していくのだろうと感じています。

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── 最後に、マイナースポーツをはじめ、継続寄付プロジェクトに興味を持っている団体・組織へのメッセージをお願いします。

安西: クラウドファンディングでも継続寄付でも、自分たちのことをよく知ることが大切だと考えています。たとえば、自分たちのファンコミュニティがどうなっているのか。どのような方々が支援してくださる可能性があるのか。そして、その方たちは何を望んでいるのか。

その答えはいつも、協会や団体と、その延長線上にある“外側”、つまり共感を寄せ応援してくれる“コミュ二ティの中”にあります。コミュニティの声に耳を傾けながら、しっかりとコミュニケーションをとり、自分たちを知る努力を積み重ねていくことが大事だと考えています。

私たちも、今まさに試行錯誤中です。前回のクラウドファンディングとは違い、ラクロスの未来を一緒に描いていくことを志向していますから、支援の緊急性はありません。支援してくださる方々の声や反応を見ながら、よりたくさんの方たちと一緒にラクロスの未来を創っていけるよう、さまざまな切り口で、いろいろなアプローチの仕方を試していくつもりです。長期的な視野を持って、継続的にコミュニティとのコミュニケーションをとっていけたら考えています。

※写真提供:日本ラクロス協会  text by 猪俣奈央子 edit by 徳瑠里香 
安西渉
一般社団法人日本ラクロス協会理事 兼 CSO(最高戦略責任者)
1979年生まれ。東京大学文学部思想文化学科卒業。東京大学入学後ラクロスを始め、大学卒業後はクラブチームで12年間プレーし、現在は大学チームのコーチも務める。2018年6月に理事に就任し、2020年3月からCSO。
米良はるか
READYFOR株式会社 代表取締役CEO
1987年生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業。2011年に日本初・国内最大級のクラウドファンディングサービス「READYFOR」の立ち上げを行い、2014年より株式会社化、代表取締役 CEOに就任。World Economic Forumグローバルシェイパーズ2011に選出、日本人史上最年少でダボス会議に参加。現在は首相官邸「人生100年時代構想会議」「未来投資会議」の議員や内閣官房「歴史的資源を活用した観光まちづくり推進室」専門家を務める。

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